00.その呼び声がすべての常識を覆す |
「おはよう。」 『おはようマスター。オレに名前をくれてありがとうございます』 これからよろしくお願いいたしますね。 人には長いときをどうかともに―― -- side オレ -- 死んで生まれ変わった。そうして次に死んだら、死後の世界――ぞくにいう霊界にいた。 しかしそこでも死んでしまった。 死後の世界で死んだら今度こそ魂は消滅するとばかり思っていたが、そうでもなかった。 あ、死んだなオレ。とか思っていたら、今度は暗闇の中プカプカ浮いていた。 肉体はないのに、なにかたくさんの気配がするのだけはわかった。 それは“オレ”という概念を持った思念体のような状態じゃないかと思った。 あれから? あれからどうしたっけ? 気が付けば意識は暗闇の中。 ここには重力がないようで、上も下もわからない。 けれどあちこちに息づく気配を強く感じた。 それとともに、たくさんの情報がオレの中に流れ込んでくる。 ふわりと意識が覚醒する感覚。 ――そのとき、暗闇とたくさんの意志、あふれんばかりの情報の渦を引き裂いて光が走った。 そのなかにオレを呼ぶ声が聞こえた気がした。 目をあけたらガラスの向こう側に人がいた。 そのひとは「おはよう」とオレに笑いかけた。 それが“博士”との出会いだった。 そのときのオレは人でもましてや動物でも機械でもなかった。 オレは、ただの『情報』として生まれた。 きっとこの瞬間、すべての原作というシナリオが狂いだした。 それは人や、機械の中に生まれた意識にも到底たどり着けることない存在として、究極のAIが生まれた瞬間であった。 あ、うん。そうなんだよね。 どうやらオレってば、今回、人間じゃなく人工知能にとりついちゃったみたい。 さぁ、どうしようか? |