2014.03.30 誤字修正


不思議お兄さんは何役者?
- ポケモソ ベストウィッシュ編 -



03.主人公補正と最強伝説







 -- side 夢主1 --







赤毛にアホ毛がチャームポイント☆
伝説にまとわりつかれている転生者、カントー地方がマサタウン出身のっす。
伝説ポケモンを仲間にしていたり、ポケモンにストーカーされるオレもオレだが、こいつはそんなオレなんかよりももっと大丈夫なのかと…彼の横にいる少女をみて唖然とする。

オレがサトシとアララギ博士の研究所を出てすぐのこと。
サトシと離れたのは、ごくわずかな時間だったはずだ。
シェイミがシキジカに食べ物(草)と間違われて連れてかれ、あわてて追いかけて帰ってきたのはわずか3分。
カップラーメンは、ほろよく仕上げにかかった段階であろう頃間だ。
その短時間でシキジカをたおしシェイミと共にもどってみれば・・・すでに何かのフラグを踏んだ予感がした。
なぜならそのわずかな時間で、すでにサトシは事件に巻き込まれたか起こしたらしく、彼の横にはばかでかい頭の少女がいた。

『振り向けばまだアララギ研究所が見える範囲で…いったいなにがあった』


サトシの主人公特権である【トラブルホイホイ】は、伊達じゃないらしい。
どうやら主人公というのは、イレギュラーなオレよりもはるかにトラブルに見舞われやすいようだ。

そんな主人公補正いらねぇよ。

思わず呆然突っ込めば、シキジカをたおすために外に出ていたピカチュウの“ピカ”が、「サトシのあれはしかたねぇーよ」とばかりに肩をすくめた。
同意するように、サトシの“ピカチュウ”も首を縦に振ってオレを見てくる。

ちなみにシェイミの“カナン”は、あれ以降、おびえてモンスターボールにひきこもってでてこなくなった。
カナンがイッシュになれるのは当分先そうだ。



『なぁ・・・』
「あ、やべ。待ってなくてごめん さん。カナンは…」
『いや、それより――


サトシ、今度はお前なにやったの?』


「実は…オレがキバゴと間違ってボールを投げちゃって」

what?
人間をポケモンとまちがうだと?

はしゃぎすぎたサトシは、オレが『大人しくここで待て』というのを聞かず、好奇心にやられてポケモンをさっそくゲットしようとボールをなげたらしい。
もう一度言うが、たかだか五分も離れてないこの状況で、そこまで事件を引き起こすなんて、なにか憑いてるんじゃないのかこいつと思った。
いや、ちがうか。制作会社の罠か……ああ、ごめん。版権ネタはタブーだったな。


それにしてもどこをどうみたら、この少女をポケモンと間違うのだろう。

サトシに聞けば、はじめ草陰からみえていたのは彼女の頭だったらしい。
あれはなんだ!?と、そこで新しくもらったイッシュの図鑑を紺色の物体にかざせば、図鑑にはキバゴと表示され、はやく一匹目をゲットしたくって焦ったサトシがモンスターボールを投球。
しかしそこにいたのはアイリスという少女で。

「ぴか、ぴかぴかぴかぴか。ちゃぁ〜。ぴかちゅ?(。思うに、基本なんて守って弱らせてからだと、彼女に技がヒットしてるって。そっちの方がよかったのか?)」
『ピカ。お前の言ってることはわからないけど。言いたいことはわかる』


――ポケモンは弱らせてからゲットさせましょう。


そうですね。それが常識です。
今回ばかりは、サトシが暴走していてよかったってことか?おかげ人間をポケモンで攻撃したんなんて不名誉なレッテルが付くところだった。

ってかね。

『どんだけ?どんだけおまえ新天地にはしゃいでくれちゃってるの。昨日の新人くんじゃないけど、基本はどこにいった!?初心に帰るのもいいけど、ポケモンの使い方もバトルのしかたも忘れるほど初心に戻らないでくれる!?レベルダウンしたのは“ピカチュウ”じゃなくておまえだろ!!
ああ…もうやだ。オレはお前のことをまかされた身として、こんな瞬間芸な速さで事件を起こされると……もうひとりで旅に戻ってもいい? わるいけどサトシ。君、いますぐハナちゃんのところに帰ってくれないか? ほら、走って五分もすれば博士たちとママに会えるから!さぁ、いけ!ゴーハウス!!』
「そ、そんな!って、 さん!?
おれ、 さんがいないと旅に出れないんですよ!!」
『いや、うん。それがどうした。君みたいな超レアなトレーナーはエリートトレーナにバカにされたり捕獲される前にさっさとおうちに帰りなさい。 そんでもってオレのことは忘れてください』
「ちょ、 さーーーん!!!????」

抱き着いてもだめだ!!
“ピカチュウ”が必死にオレをとめようと首を振るが、そんなかわいい目をうるませてもだめだ。
だって今来た道を振り返ってみろよ!!林が少し途切れた先にはアララギ研究所をふくめたカノコタウンがまるみえ!!
この短距離でどうやって騒動に巻き込まれるんだよ。普通有り得ないだろうが。

『おまえと旅をしたらこっちの目的が果たせなくなるのが今目に見えた! お前が帰らないならオレが帰る!!実家に帰らせてもらいます!! ゼリィはたぶんイッシュ地方にいるからあいつのことはたのみます! これ、ゼリィのボール。安心しろサトシ。 アララギ博士の研究所とこの距離を思えば、お前なら何もせず絶対あいつと会えると今わかった。出会ったら捕獲よろしく』
「っ!!!待って!!おれにゼリィなんか無理だって!本当にまって さん!!」

「ちゃぁ〜。ぴかちゅ〜ぴっか(うわぁ〜。あいかわらずの節だね)」
「ぴ〜か。ぴかぴ、ぴ、ぴかっちゅぴか(だろ。だからな。ま、サトシにゼクロムは荷が重いよな)」



ちょっと!!いいかげんにしてよ!なんなのよあなた!もっ!!


オレとサトシが少女そっちのけで、いくな!むりだ!まて!などと言い合いを始めてしまったことで、蚊帳の外になってしまった彼女がついにきれた。
ああ、しまった。他者の存在を忘れて取り乱すなんて…オレはそうとう動揺していたようだ。
ゼリィ(ゼクロム)を追って空を飛行する際にホウサクさん(ホウオウ)の上から落ちたときより焦ってるよオレ。

『あ、ああ。はじめまして。オレはアザナ。
こいつと同じ町からきたんだ。保護者…のはずなんだが。ごめん、その役割は今放棄しようかと――むしろうちのもんがすみません。本当にばかげたことをしてしまって』
「え。いや。そこまであやまってもらわなくても」

そんなこんなで研究所を出てものの数分で、オレたちはトラブルを拾った。
というか、サトシが事件を起こした。
初っ端から、オレはサトシの頭を思いっきりおして、思いっきり謝罪をする羽目となった。

ドラゴンマスターを目指しているという野生児少女と出会った。

旅の初めから前途多難ってどうなの。
主人公補正なんて、くそくらえ。
なんてめんどうなんだ。





**********





『アイリスちゃんには感謝してるけど。
ほらみろ“ピカ”、“ピカチュウ”。しょっぱなから木の実が晩御飯。ハナちゃんが言った通りになっちまったぞ。ってか、ご飯が木の実だけってだめでしょ!!』

「な、なによぅ!とってきてあげたんだから感謝しなさいよね!」
『この際、年上への礼儀とかサトシの例があるから置いておくとして。
晩御飯だぞ!?木の実ばっかだと栄養が偏るだろうが!!
たまにならいい。【たまに】ならな!
だけど、おまえたちはまだまだ成長期なんだ。しっかりうまいもんを食って、しっかりそだないとだめだろうが!!むしろあきるだろうが!そんでもってあとでお腹がすくだろうが!!
いいか、人間における最大の利点として、人間には他の動物が持ちえない間隔がある。それが五感だ。動物によっては寒さや痛みをもたない種もいる。資格に色がないものだっている。それを人間は美しいと感じることができるというのは人間の特権ですばらしいことだ。わかるか?つまり味覚も同じで………』

「いやぁぁーー!!ながい!料理ごときでなんでそんなに話がながいのよ!!」
「…ごめんアイリス。おれにはとめられない」
「ぴか〜(ぼくも)」
「ぴっかぁ!(逃げるが勝ちさ!)」





物の流れというべきか。
謝罪会見よろしく、被害者の少女に頭を下げた後、なぜか彼女と行動を共にすることになった。
ひとえにはサトシがまた暴走しかけて初心者も真っ青な強行ゲットをしようとしたためである。
アイリスに「こどもねぇ〜」と言われても仕方ない。
特攻とばかりに無茶苦茶なゲットをしようとするサトシを、オレが慌ててひきとめ、図鑑を活用しろよとか、今度は人に当たらないようにと常識をもう一度叩き直してから、ポケモンをゲットするよう促すはめとなった。



――そんなこんなで夜ご飯。

アイリスが用意してくれた木の実が、食べることもおいしいことも知っているけど…。
だされたのは木の実だけ。
しかも調理を一切していないままの――。

サトシを諭すにいそがしくてご飯なんて用意する時間がなかったから、用意してくれたアイリスにはすごく感謝している。
だけど、まさかいつもこんな調子で木の実ばかり食べているのではなかろうなと思って、おそるおそる聞けば、「それがどうしたの?」とばかりに頷いた彼女に、思わずオレはハナちゃん(サトシのママ)が言っていたことが現実になってしまったと空を仰ぎ見た。

サトシはたしかに旅に慣れている。
木の上で寝袋も使わないずぼらぶりを見せる少女とは違って、サトシはきちんと寝床の準備や休憩するための準備をするし、だれよりもテキパキとそれらの作業を文句ひとつ言わずこなすし、率先して行う。
だけど【たべる】ことなどは、どうも甘えきっている節がある。
サトシの場合は“だれかが作ってくれる”という認識が、タケシとの旅でしっかり植えつけられているような気がする――のは、気のせいだろうか。
きっと日常生活面において、サトシはいままで甘やかされていたに違いない。
だから料理とか気にしない。

うちのサトシ、アニメと違って、【そこそこ】ききわけもよく、ハナちゃんがみっちりしごいていたから【そこそこ】の料理はできる。
何度も言っているが、重要だからもう一度言う。
【そこそこ】にだ。
焼くか切るしかできないの。
タケシのおかげですっかり舌のこえたサトシは、自分の作る料理を味気ないと思い、頑張って味付けしようとするが――それがだめなのだ。
【そこそこ】だった料理が、もとめられた美味な味わいに到達できず、失敗して【まずく】なる。
一般人がレストランの味をまねようと努力するようなもので、そこらへんが大ざっぱな料理しかできないサトシにはだめなのだ。

本当に、オレがついていかないと。
せめて料理ができるやつを早く見つけない限り、この二人だけでは絶対に旅をさせたくないと思った瞬間だった。



アイリスとサトシと旅をして半日もたってないけど、彼女の口癖なのか「こどもねぇ〜」という発言を今日だけで物凄い回数聞いた。
それを聞いて、彼女をそう思わせる原因はなんだろうと、めたくそに言われている本人たるサトシを観察することにした。
一方後ろから彼の行動を観察してしばらく――

この子、やばい!

アイリスのおかげで、気付いたんだけど、ホウエンやシンオウのようにカントーと陸続きであるがためにいた見知ったポケモンがイッシュ地方ではまったくいないためか、今回の旅ではサトシのテンションは異常に高い。
そのせいでサトシの行動がなにからなにまでおかしいのだ。
旅が嬉しいのだろうけど。サトシさ、カントー他からホウエンまで回っておいて、なんでいまさらポケモンのゲットの仕方さえ忘れるの?テンションあがりすぎだろ!

オレ、身内としてとっても恥ずかしいんだけど。
おかげで旅のはじめにもかかわらず、ポケモンゲットをしたがるサトシを無理やりその場に座らせ、長々とオレが説教する羽目となった。

そのせいで日が暮れてしまい、まだ側にいたアイリスがオレとサトシの分の木の実まで用意してくれたとそういうわけだ。

その後、ちょっと料理を馬鹿にする発言が聞こえたので熱く語ってしまって、アイリスにひかれたので、これからは自粛しようと思った。



――木の実だけの晩ご飯を食べ終えたあとは、昨日の雷雲の話となった。
落雷が落ちたのを目撃していたアイリスには、ゼクロムがオレのポケモンであることや、ピカチュウがオーバーロードにおちいって一時レベル後退した話も軽く省いて、ゼクロムと遭遇した件だけかいつまんで話した。
ついでにオレはその雷のせいで仲間とはぐれたため探していること、サトシはジムめぐりをしていることを告げた。
会話がそのまま弾むかと思いきや、あっというまにアイリスが樹の上で寝てしまって、話はそこで終わったのにホッとする。
でもあまりの寝つきの良さにおかしくなって苦笑が漏れてしまったが、アイリスは熟睡しているのか目を覚まさなかった。
野生児といえ風邪をひかないようにと、鞄にしまっていた予備の毛布をアイリスにかけてやった。

オレたちは彼女のように身を守るために木の上で眠るなんて芸当はできないので、念のため火をおこして夜を明かす準備をする。

準備ができたら、サトシとポケモンたちと火をかこむ。
オレはアイリスが起きているときにはだすことのできなかったホウサクさんを含めたオレのポケモンたちを外に出してやって、遅くなった食事を用意してやる。

その際に、アララギ博士の研究所からついてきていた小さな気配にも「でておいで」と手招きしてポケモンフーズを手渡した。
サトシが気になるのか、小さなミジュマルはオレからフーズをとっていくとサトシの視界に入る前に茂みに隠れてしまった。

小さな青色を笑って見送った後、今度はサトシに再び説教。
それと今日の反省会だ。

ポケモンたちがしっかりご飯を食べて、遊んで、すきなところで居眠りを始めたころには、なんとかサトシのはやる心を抑えさせ、常識をもう一度呼び戻すことに成功した。
尚、おなじようにサトシの“ピカチュウ”もうちのピカ様により、今日の反省会として怒涛の電撃特訓を受けさせられていた。

ひ孫だからって“ピカチュウ”にも容赦ねぇ。
むしろ身内だからってもっと厳しくしごいてるよ。

ピカ様、こえぇ。

もとからだけどさ。気づいたらあんな怖い性格だったってレッドは思っていた。
そのピカチュウも、サトシの“ピカチュウ”ぐらい穏やかな性格だったらよかったのに。
いつからあんなにひねくれたのかなあの子?
昔はかわいげがあったような気がするのに……ん?かわいげ?あれ?ピカにそんな時代あったかな。
やっぱ錯覚かな。





**********





朝起きたら少女Aもといアイリス嬢が消えていた。

いないならいいんだ。いないならさ。
これからずっと一緒に旅をするなんてわけじゃないんだから、放っておけばいいんだよ。
オレたちが“ゼリィ”をさがすって目的があるのと同じで、人それぞれ旅の目標は違うのだから。

サトシはアイリスのことを気にしていたようだが、そう諭せば、すぐに頷いた。
それからはオレという保護者の指導の下、サトシはマメパトに挑むことになった。

「“ピカチュウ”。昨日、おしえたとおりにできるか?」
「ぴ!ぴかちゅう!(まかせてサトシ!)」
「ピカ!カナン! さん!みててくれよ!!ホウサクさんにたよらない飛行タイプの新しい仲間、ゲットしてやるぜ!」
『……そういえば。オレたち、いま、ホウサクさんしか飛行タイプいないんだっけ。そっか、そうだよな。うん、がんばれよサトシ!』
「おう!」

今度は初心を忘れず。
サトシは得意のフィールドを使ったバトルを展開するようだ。

なにせサトシは数々の大会で好成績を収めてるし、バトルフロンティア制覇してるし、フロンティア候補にもなっている実力者だ。
ただの捕獲なんてさせられるわけがない。
ひとがみていなくても、あれだけ名が出回っているんだから無様な真似はさせられないと――そう思ってのことだ。
そう思うオレの心は、まさに全国に散るサトシの知人の意見をまとめたそういと思ってくれていい。

『サトシ。力技はダメだよ』
「わかってる!相手は飛行タイプ。どんな技がくるかわからない。ましてやここはイッシュ地方だもんな」
『そうだよ。大正解』

地域が異なれば、ポケモンの生態も成長の仕方も違う。そしてもちろん技のありかたも変わってくる。

『それじゃぁサトシ。空を飛ぶ相手を倒す方法は?』
「とべないようにすればいい!」
『なら、どう、戦う?ヒカリやハルカとのコンテストで身に付けたもの。今、“ピカチュウ”ができること。総合して結論を出せよ。

――さぁ、どうする?』


マメパトに勢いだけで突進するのではレベルでものをいわせているにすぎない。
そんなゲットはつまらないだろう?と、昨日の反省会の時に、サトシとはなしたのだ。










昨日のこと――


『郷に入っては郷に従えと言う。だけどこのイッシュを旅したことがある自分に言わせるなら、サトシは自身の力をきちんと生かすべきなんだ』
「どういうことだ?」
『その地の雰囲気にのまれてしまうことがないように。
オレたちの大切な君の心がまっさらなままであってほしいから』

この地方は独特だ。
他の地方より離れてしまっているせいか、部分的な閉鎖的すぎるきらいがある。
都市はどこも立派で都会を思わせるが、そのせいか他地方を見下す傾向があるのだ。
さらにいうとサトシぐらいの年齢のこどもたちは、無邪気であるがゆえに平気で人を傷つける言葉を放てる――こどもとはそういう生き物だ。
オレが恐れているのは、彼らの言葉の暴力で、サトシが不快な思いをするんじゃないかってことだ。
だから

『サトシにとっての“初心”を忘れるな』

そう教えた。

『サトシにとっての初心は、ピカチュウ以外は新しい土地のポケモンを使うこと。
だけどひとつ忘れてないかい?
いままでの旅のことも忘れて初心にかえるのか?
新しいポケモンで、いままでの旅で培ってきたものを感慨なく発揮する。それが君のありかただと思ってた。
今回のサトシはちょっと焦ってるみたいに思えたよ』

せの傾向はこの地に降りた時から現れていた。
ひとつめは、ピカチュウがゼリィの電撃を浴びたことで、電撃技が使えないのに気が付かなかったこと。
一瞬とはいえ、レベルダウンしたことを見過ごしたこと。
新人トレーナーにコテンパンに負けたこと。

どれっていうよりも・・・全部かな。
そのせいかな。
一度負けたこと。相棒の不調を見逃してしまったことで、今回のサトシは、ゲットに焦ってるようにオレには見えてしまったんだ。

バトルもせずモンスターボールをなげるなんて――サトシなら有り得ない。

『【君らしさ】をなくしてまで、基本に忠実なのってどうだろうな。
ただがむしゃらに考えもなしにポケモンを捕獲し、バトルを挑むことだけがお前の“初心”か?
そうやって【知ること】を放棄して、レベルの高さだけで体当たりで挑んでも、ほらね、新人にさえ君は勝てない』

だから機会を無駄にせず、せっかく図鑑があるのだから、ポケモンの勉強をしておこうよ。
それと、今までの旅が無駄でなかったってこと、ピカチュウ一匹であってもちゃんと証明しよう。

『技のこと。ポケモンのこと。彼らの性質や体質のこと。少しでもいいから学んでみようよ。そうしたら対策が練れるだろ。
相手は次にどんな技を出すだろう。どう攻撃を仕掛けてくるだろう。逆に、どう自分たちに有利になる?どう動こうか。
相手が行うであろう可能性。自分ができる可能性を考えていくんだ。
それがバトル。
知らないなら知ればいい。知らないことは悪いことじゃないから。負けたことだってそう。負けた悔しさを土台にして、上を目指す。
それが君だろサトシ?
焦るには――君はまだイッシュを知らなすぎる』

火をかこみながら、夜が更けるまでオレとサトシは話し込んだ。
オレと話をしているうちに、サトシは考えるようにきつく目を閉じ、何かを耐えるように拳をにぎって、火を挟んだ向こうで体育座りをして顔を隠すようにうつむいてしまう。
そんなサトシに、心配そうに“ピカチュウ”がすり寄る。
アイリスが起きている間はずっとモンスターボールに入っていたシェイミの“カナン”が自力で飛び出てくると、口を開かなくなったサトシの横にテトテトとかけより、困ったような顔でないた。
そんなカナンをみるでもなく、サトシの腕がのび、心配げに鳴くカナンの草のような頭を優しくなでる。
うつむきながらもシェイミをなでるサトシ。側に寄り添うピカチュウ。
心がふわっとする光景にオレもなんだか癒される思いがした。

自分が大変でもポケモンを優先するその優しさに、みんなついていこうと思うんだ。
だから初心に返りすぎて暴走するサトシに、オレは君を慕うポケモンたちのトレーナーとして、頑張ってもらいたかった。

ポケモンたちも君を応援している。
キミと出会ったトレーナーも、君が仲間と呼ぶ者達もみんな、みんな――君を想ってる。

『サトシ。後悔は後だ』

怒るのも真剣な顔も面倒だ。ポケモンをいじくっているサトシを前に、そんな緊張感は長くは続かない。
どうしたって和んでしまう。

オレもいつまでも子供でもないし、転生人生と言う経験があるからさ、いつも怒鳴り散らしてる短気なだけの人間じゃないんだよ。
顔がゆるんでしまう。


『ポケモンマスターに、なるんだろう?』

オレの言葉にハッ!と顔をあげたサトシに、立ち上がって火を迂回してサトシの正面に立つと、座り込んだままの彼に手を差し伸べる。

『レッドのいた高みへ行くんだろ』

ポケモンマスター“レッド”。
あそこまでいきたいのなら。もっと、もっと高みへ来い。
おいついてこい。
トレーナーをやめたオレと並べるぐらいに。
そしてオレを追い越して、あの白銀の頂きで強者を待つレッドに挑みに行けばいい。

『もどってもいい。立ち止まってもいい。
それでもお前が目指すものを忘れるなよサトシ』

あいつは、レッドはさ、ポケモンマスターというあの頂でお前を待ってる。
そう簡単にあの座を退くことはないから。

こんなところで、どこまで後退するきだい?
戻り続けるのは君の役目じゃないだろう。
そういう変事は、セレビィの玉ねぎ頭にまかせておけばいいんだよ。
そう笑ったオレの手をサトシはとると、照れたように苦笑を浮かべ頭をかく。
その姿は、昼間とは違って騒がしさの欠片一つない。
それはたくさんの旅をしてきた経験がみせる、大人びた表情。

「ありがとう さん。おれ、わすれてたみたいだ」
『みごとにな』

その目には、まっすぐと強い炎の石が輝いていて、理性と知性のかけあわされた深い色合いをしていた。










「やったぜ!まずはマメパト!ゲットだぜ!!」
「ぴっ!ぴかちゅう!」

オレが昨日のことを思い出している間に、サトシがマメパトとの戦闘を終わった。


サトシは一度、〔デンコウセッカ〕をピカチュウに指示するも相手も同じ技で交わしてしまった。
だけどそれは誘導。
本当の狙いは、レベルの高い“ピカチュウ”だから可能な――〔でんこうせっか〕の勢いのままに樹に体当たりをかけるというもの。それをに三本の樹に繰り返す。
いっけん勢い余って背後の樹にぶつかっているだけにも見える。
だけどそうやって威力の高い衝撃を当てられた樹は、次々と葉を散らしていく。
それによってマメパトは視界を一瞬奪われてしまう。
めくらましとして木の葉を利用して視界をつぶし、その影からピカチュウが〔アイアンテール〕で特攻をかけてマメパトを地面にたたきつける。
最後に電気技でショックを与えて麻痺させることで、徹底的に逃げないようにマメパトの動きを封じて――そこでようやくゲットした。


ちなみに。
後でピカ様に、同じようにマメパトと戦うならどう戦っていた?と尋ねたところ。
ピカいわく――

〔あなをほる〕で地面から根ごと樹を倒して、幹か枝葉でとにかく視界をうばう。あわよくばそのまま木にあたってダメーシを負えばいい。
それでもまだ立つうのなら、〔でんじふゆう〕でそこらのツブテをうきあがらせて、視界と羽を封じるつもり。

――だったとか。

それを聞いたマメパトやサトシらがガタガタと震えていた。
本当にもう。この子、可愛いピカチュウって種族らしくないよね。えげつない。むしろ怖すぎて、かわいくない。
なんて悪質な性格なのだろうと、悠然と笑ってその作戦を言ってくれちゃったピカに疲れがどっときた。




さんやったぜ!!一匹目!ゲットだぜ!」
『レッドは全国を制覇している。サトシもまた一歩あいつに近づけたな』
「へへ」

自分の気持ちになって一緒になって喜んでくれピカチュウを肩にのせ、キラキラと目を輝かせてモンスターボールを手にかけよってきたサトシに、オレもなんだかうれしくなって、よかったなぁとサトシの頭をなでやった。

すると

「マメパトをゲットしたぐらいでそんなに喜ぶなんて。こどもねぇ〜」
「きばば〜」

いままでどこにいたのか、突如アイリスが木の実をかじりながらやってきた。

そこでふと思った。こう何度も会うっていうことは、このままアニメのサトシなら彼女を旅の仲間にするのだろうと。
そもそもいつも旅の初めに会った男の子はライバル。女の子は旅仲間。っと、サトシの展開はおきまりだ。
もしかしてこのままでは今回も?
そうなるとサトシの旅仲間に女の子は必須なのか。
いや、華があっていいにはいいけど。
この子の「こどもねぇ〜」っていう発言が、サトシを強調した後も連発されるとなると、それは事実を指摘してたのではなく彼女の口癖と言うことになる。
そうなると彼女の性格は、強気だけどいいやつだったいままで一緒に旅をしてきた少女たちとはちがって――

「だって嬉しいじゃないか!新しい仲間が。イッシュ地方の最初の友達ができたんだぜ」

意味深にあらわれたアイリスだけど、それに満面の笑顔で答えるサトシに言いたい。
オレが思うに、イッシュから出たこともない子には、イッシュ地方のポケモン=いつもよくみるポケモンでしかないんじゃないかと。

って、ことは、この次の展開は

「まぁ、お似合いかもね。サトシとこの森のマメパトとは」

ですよねぇ。
ふつうはバカにしますよねぇ。
だってそこらにいるノラ猫をみて、あ、猫だ珍しー!って騒ぐようなものだよ。

それにイッシュ地方はね、そうやってちょっとばかり上から目線の子が多いんだ。
だから手持ちのポケモンを外に出してつれアルている子って珍しいんだよ。

はぁ〜。どうしてこうもイッシュ地方の…



「ぴ!?ぴかぴ!ぴかちゅ!(“ピカチュウ”!?キバゴ!)」

「ぴかぁっ!?」
「きばばばば!!」

ふいにピカの焦ったような声が響いた。
さらにその直後、“ピカチュウ”とキバゴの悲鳴まで聞こえてきて、あわてて振り返る。

少し離れた崖の上に、人影があって、二匹はそいつらのアームのような機械によってとらえられていた。

わーぉ。こういう展開、とんでもなく見覚えあるよ。
だから絶対たずねちゃダメだ。
そう思ってサトシをみたが、相棒を連れ去られたサトシが冷静なはずもなく。

「またおまえたちか!」

黒い衣装に衣替えしたらしいロケット団のデコボコトリオにむけ声を上げていた。

「【またおまえたちか!】ときかれたら」
「こたえてあげよう明日のため」

こいつらって、「なんなんだ」と言わなくても名乗るよな。


「Future!白い未来は悪の色!」
「Universe 黒い世界に正義の鉄槌」
「我らこの地にその名を記す!」
「情熱の破壊者 ムサシ!」
「暗黒の純情 コジロウ!」
「無限の知性 ニャース!」
「「「さあ集え!ロケット団の名の下に!」」」

「ロケット団?なによそれ!」
「人のポケモンをうばうねらう…悪い、奴ら?なんだ」

サトシが説明してくれたけど、彼もまた【悪い奴ら】の部分に若干自信がなさげだ。

そう。この世界はアニメとかなり違う。
数十年前には、レッドやグリーンがいて、ゲーム軸をなぞらうようにロッケト団をたおしている。
レッドはその後ポケモンマスターとなり頂点に君臨し、白銀山で強者を待ち続けている。
グリーンはチャンピョンとなり、トキワジムリーダーになった。
つまりこの世界の過去が、ゲーム軸7割といったところだ。
現在はそのゲーム軸から派生した未来。そして今代の主人公はアニメのサトシだ。

うっかり説明を忘れてたけど、初代ロケット団もそのボスサカキはもういない。

サカキがどうしたかなんてことは話題にも上がらないが、今ムサシたちが慕っているサカキは以前のサカキとは別人であるのは間違いない。
悪行を果たして、果たしまくっていたがためにレッドに敗れた過去のサカキ。
そしてサトシもイッシュ地方に来るまでで十分に理解しているだろうが、今代のサカキは実は二代目であり、そんでもって“いい奴”である。
っていうか、同一人物だったら今頃サカキは70を超えてる爺さんだぞ。有り得ないって。
そんでもっていまのロケット団は、何度も言うが実は【いい奴ら】だ。
詳細は省くけど、かくかくしかじかという理由で、ロケット団という名前が引き継がれたにすぎない。
トップのサカキはアニメと同じ姿をしているが、彼も“また裏で誰かに操られている”人間だ。
つまりさらに上がいるということを忘れてはいけない。
そこはさておき、彼らの【奪う】というのは自称である。
なにせ彼らはよく人助けをしているのだから。知っている奴は知っているが有名ではない……かもしれない。
たまに現ボスが暴走して、本当に前回のサカキを模倣しようとする馬鹿“も”いるわけで…。
今回はそのパターンらしい。

今代のロケット団は、“本当のトップ”が留守になるたびに、悪の組織ってカッコイイよなと思っている現行サカキが初代サカキをまねて悪だくみしようとするので、地域ごとにロケット団の在り方が変わるようにもみえてしまう。
そのせいで、サトシも困っている様だ。


「そうよ。人のポケモンを奪って悪の限りをつくし世界を手に入れる。それが我らロケット団よ!」

ああ、今回は悪役設定ですか。

「何言ってるのよ!キバゴは私のポケモンよ!かえして!」

「なるほどこいつはキバゴっていうのか」
「イッシュ地方制圧の手始めにこいつもいただくニャ」

「!?ねぇきみってニャースよね。どうしてここにいるの?っていうかなんでしゃべれるの!?」

「ニャーは天才なのにゃ。他のニャースとは一味も二味も違うのにゃ」
「さぁ、観念するんだな」

みているうちにピカチュウとキバゴが頑丈そうなガラスケースにいれられてしまう。
それにサトシが先程つかまえたばかりのマメパトをくりだす。
アイリスはなぜかしゃべるニャースに釘付けで、おかしなところにツッコミをいれている。



っというか、完全スルーされてますオレ。

ピカチュウという種族がほしいのなら、オレの肩に乗っているピカをささげるのに。
どうせレッドへの愛で自力で逃げてくるだろうし・・・。
しかもサトシの“ピカチュウ”より、ピカの方が数倍は強いのは間違いない。
だって伝ポケ形無しといわれるほどのレッドのポケモンだ。しかもこのピカは、そのレッドの手持ちにして最強を誇るエースときている。
むしろ年季はいってるからいい味でているのに。
強いポケモンを狙ってるくせに、オレのピカをねらわないのは・・・謎だ。
性格悪すぎるのが原因かな?

まぁ、なんだっていいけど。


完全空気なのをいいことに、オレはのんびりモンスターボールからポリゴン“ポリー”を取り出す。

『“ポリー”。内側からあの電気回路こわしちゃってよ』
「××○×〜♪(了解♪マスター)」
『うん。たのむ』

指示を出してオレはポケナビをとりだし、向こうのロケット団の機械に赤外線の照準を合わせる。
それと同時に“ポリー”が身体を電子化し、ナビの中に入り込む。
銃を向けるように標準を定め、通信交換モードを起動すれば、ポリゴンはデータとなってとんでいく。


っと、そこでちょうどサトシとロケット団のバトルが、一度きりがよくなったようだ。

ポケモンバトルにもちこんだはいいものの、サトシのマメパトはムサシのコロモリにやられてしまった。
〔かぜおこし〕の直撃を受けとべなくなってしまったマメパトは地面に落ち、名前を呼びながらサトシとアイリスが崖下までかけていく。

そんなことをしている暇があったら、ポケモン救う算段をしてほしいものだ。



っていうかね。
さっきから何度も言いたかったんだけどさ。


みんな、オレの存在、わすれてないか?


「「「「「あ」」」」」

やれば、気配なんてけせるけど。
わざわざ気配を消さず、足音もしっかり立てていたのに。
髪だって目立つ赤色だぞ。
なのに声を出してようやくって、どんだけオレの存在感薄いのかな。

ようやく全員がこちらをみるものの、その様子からして全員が全員、オレの存在を忘れてくれていたようだ。
おにいさん、泣いちゃいそう。

オレはハナちゃん手製の帽子を以前の癖で目深までおろすように深くかぶりなおすと、シェイミのボールを放り

『〔くさむすび〕』

「我々の邪魔をしないでもらおうか“赤毛のジャリボーイ”」
「ニャニャ!?“赤いジャリ”ニャ!今日はいつになく赤いニャー。おみゃーにしてはめずらしい服を着てるニャ」
「またあんたなの“赤ジャリ”!!」

おいおいおい。どんどん名称が省略されちゃってるよ。しまいには“赤ジャリ”って・・・。そりゃぁ、あんまりだろ。それでは、まぐろとシャリみたいな――寿司しか連想されませんよ!?

ああもう!あんまり“赤いの”“赤いの”と連呼しないでほしい。
たしかに髪の毛は赤いさ。
服だって今日は赤いけど。
“赤いの”って呼び名はいかんせんどうかと思うんだよ。

オレはたいがいポケモンの種族名の頭文字をひねって名前を付けることが多いけど、ロケット団のネーミングセンスもオレよりひどいとおもった。
ああ、オレはセンスが悪い自覚あるからいいんだよ。
でも呼ばれる側としては、そのセンスない呼び名で呼ばれたくはないな。
サトシなんか“ジャリボーイ”だし。その仲間の女の子は“ジャリガーイ”だし。

っと、いうか。オレはもう【ボーイ】なんて年齢じゃないんだが。
ま、だれも年相応には見てくれないのも仕方ないよな。オレ、転生の影響で成長遅いし、いまだに十代後半でも二十代前半でもとおるしなぁ。

赤いとかジャリとか、マグロネタか!?オレは寿司かよ!?と、つっこみたくなる呼び名を連呼ながらロケット団は各自おのれのモンスターボールに手をかけ、はたまたなにかの装置を取り出そうとした。
だけどしっかりオレに目撃しっちゃってますし、そうはうまくはいかせないぜ。

『“ポリー”』

この一言を合図に、ロケット団が持っていた機械という機械の類が一気に中から破壊され、使用不可能な状態となる。

『はい、ピカ様。地面に向かってエネルギー放出』
「ぴっかっ!」

ムサシがなにか言おうとしたが、“悪役”なんだろ?ならさえぎってもいいって思うことにしておく。
今回の地方では、ロケット団を【悪設定】にしたサカキ(二代目)がわるい。


ついでにカナン(シェイミ)をボールにもどす。
カナンは技を使ったのでもう役目を終えているのだ。それに早くモンスターボールに戻りたがっていたしな。

シェイミの技はごく普通の技で、ただの〔くさむすび〕だ。
だから、その技で足止めしようにも、すこししたらすぐにみんな動けるようになってしまう。
だけどうちのピカ様なめんなよ。
レッドが育てたピカのコントロールは並みじゃないんだ。
そのピカの絶妙なコントロールによって、微力な電気が地面に流され、――――〔くさむすび〕で生えた草が急成長を始める。

「きゃぁ!?ちょ、ちょっとなによ!なんなのよこれ!!なんとかしてよサトシ!!」
「うわ!って、おれまで!?っていうか動けないのはおれも同じだー!!」


「なんなんなのニャー!」
「こ、これは…」
「いつもの?」

「「「いやなかんじー!?」」」


『え!?はやくね?その台詞!
ちょっとまってよ!まだオレ、おまえたちをたおしてもいないんだけど!!』


「なに言ってんのよ!」
「そうだ!そうだ!“赤毛のジャリボーイ”が来た時点で、俺達の未来は空の上決定だ!」
「ニャーたちの悪役ルートはここまでだったニャ」


ピカは、きちんとねらってロケット団やサトシ、アイリスたちの足元にあった〔くさむすび〕だけにねらいをさだめて、微弱な電流を流し成長を促したのだ。
植物の生長の手伝いや、腐葉土の促進が特技とか、地震とか微弱な振動やらを電気をとおして感じてあげくものの振動の動きまで操作できるようになり温度を下げて氷を作り上げるなんてことまでしたり、電気を圧縮したものをアイアンテールでうちだしたり、電磁砲みたいのうってきたり、電気分解とかで空気中の好きな場所で爆発を起こしたりとか、磁力やら磁場をつくりだしてものを浮かしたりとか・・・・・・うちのピカ様はすでに属性とか無視しちゃうほど実は年季が入った分かなり芸達者なのです。

そんなピカによって操作された植物は、サトシもアイリスもまきこんで、勢いよく育ち、別の植物技のごとく彼らをかんじがらめにしてしまう。

そんな草の塊五つの横を通り、唖然としているピカチュウとキバゴのいれられたケースまで歩み寄る。
そのまま長年の旅で鍛えた足技をかけるつもりでやっぱしやめて――「ふん!」っと勢いよくフライパンをふりおろせば、見事にケースの四隅をとめていた金具を粉砕し、パキン!とあっけなくケースは分解される。

「“ピカチュウ”無事か!」
「ぴっかぁ!」
「ていうか、わたしたちが動けなくちゃいみがない…って!?サトシ!あんたなにやってんのよ!」
「まってろピカチュウー!!!」
「ぴ。ぴかぴ…」

ピカチュウ大好きなサトシが、葉にまきつかれた芋虫のような状態で全身を始め、それにアイリスが驚き、ピカチュウは現状の異常さに一瞬顔をひきつらせていた。


『っで。ロッケト団よ、まだやるか?そのときはオレのポケモンたちが相手をするけど』

「おみゃーのポケモンとでだけはバトルなんかするもんか!!ニャーの命がいくつあっても足りないにゃ!」
「そういえばこないだまでミュウツーつれてたもんなー赤ジャリの奴」
「ボーイって年齢でもないけどあいつ。それよりはやく私たちをはなしなさいよ!」





――オレとサトシのイッシュの旅は、本当に波乱万丈。
なんか最初から騒がしく始まったのでした。

めでたしめでた

「なに終わらせてんのよあんた!いいからはなせー!!」
「そうだそうだ!」
「ニャーはイモムシじゃないにゃ!」

「さすが さんだな!電気タイプの技とは思えないぜ!!」
「…植物タイプの技をあげるピカチュウってどうなの?!本当にあなたたち何者!?」

『さ。旅に戻るか。いくぞサトシ、ピカチュウ。アイリス』
「はい! さん!いこう“ピカチュウ”!」
「ぴっか!」
「あ、ちょっとまってよ!もう!」
「きばば」


「ニャーたちをおいてくなにゃー!!」
「ッカムバーックジャリボーイ!!」





 









 


【オマケ】

ムサ「空にはとばされなかったけど・・・」
ニャ「にゃー。いいかんじではないにゃぁ」

コジ「……なぁ、ニャース、ムサシ」
ムサ「なによコジロウ。ここから脱出する手段でも思いついたの?」
ニャ「なんにゃぁ?」
コジ「ここ、地形が随分変わってるけど…これ、このままでいいのか?」
ニャ「……みちゃいけないにゃ」
ムサ「なぁーに言ってんのよ二人とも。赤ジャリが通った後はいつもこんなもんじゃないの」
ニャ「…赤ジャリは赤ジャリにゃ。考えてもわかるわけないのにゃ。ならどうやってここからでるか考えてた方がマシにゃ」
ムサ「ニャースの言うとおりね」
コジ「だな」










<今回登場したポケモン>

☆ピカチュウ(ピカチュウ)
・サトシのピカチュウ

◆ピカ(ピカチュウ)
・クリスマスカラーのリボンをしている
・レッドのポケモン
・伝説を超える力を持つ最強にして最恐のピカチュウ
・草タイプの技を操作するほどの緻密な電気コントロールが可能

◆ポリフェノール(ポリゴン)
・黒いバンダナを首にしている
・通称 ポリー
・どんな機械の中にも潜り込める

◆カナン(シェイミ)
・黒いバンダナを腕にまいている
・植物と間違われてシキジカに襲われた子
・ただいまボールのなかにひきこもり中
・ふつうな〔くさむすび〕ができる

◆ゼリィ(ゼクロム)
・現在家出中な夢主のポケモン
・伝説的存在らしい

☆ニャース(ニャース)
・ロケット団に所属する
・しゃべるニャース
・機械いじりが得意

●キバゴ(キバゴ)
・アイリスのポケモン








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