2014.03.27 加筆修正


不思議お兄さんは何役者?
- ポケモソ ベストウィッシュ編 -



01.ベストウィッシュ!よい旅を







 -- side サトシ --







オーキド博士の学会の付き添いで、ママとおれはイッシュ地方へ旅行にいくことになった。
楽しみだったママとの旅行。
博士が言うには、そこにはカントー地方にはいないみたこともないポケモンであふれているらしくて、どんなポケモンに会えるのか楽しみだった。
飛行機が着水した飛行場で、ピカチュウがなにかに興味を持ったように空を見上げていた。
おれはみたことのないピンク色の魚のようなポケモンに興味をひかれて、海の手前まで走り寄って

そこで――


『わぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!』

「は?」
「ぴぃか?」

赤い何かがおれとピカチュウの前を通り過ぎ、ドボーン!!と大きな水しぶきを上げて、何かが降ってきた。
波紋だけが広がる水面を唖然と見つめていたおれとピカチュウの前をさっきのピンクのポケモンがとびはねた。

「えーっと…いまのなんだと思う“ピカチュウ”」
「ちゃぁ〜?」

何が降ってきたんだろうと、ユラユラ揺れる水面をのぞいていたら、下の方から赤い何かが近づいてくるのが見て、コイキングかな?と体を乗り出そうとしたら、ザバァ!!!っと勢いよく水が盛り上がって、おれとピカチュウはビクリして互いに抱き合う形で思わず海辺から後退するように尻をついてしまった。
"それ" はびしょりと大量の水をしたたらせて海から上がってきた。
ビタリビタリと水をしたたらせてさっきまでおれたちがいた場所に手をつく様は、河童かなにかのようにもみえる。
なんだか恐怖をあおる光景に、恐る恐る "それ" をみて――

さん!?」
「ぴっかぁっ!?」

赤い塊だと思ったのは、なんと知り合いの人間だった。
普段は短い燃えるような赤色の髪は腰まで長く伸び、服は相変わらず白と黒のウェイター姿。

なんで降ってきたんだよ!?

「ぴかぴ!」
「え?空に何が…?」

抱きしめたままのピカチュウに空を見るよう促され空をみあげてみれば、さんのポケモンらしい鳥ポケモンが空にちらっと見えた。
そのポケモンはすぐに雷をまとう黒い雲の中に飛び込んでしまったけど。

まさか、あそこから?

ピカチュウに促されて見上げた空の一角は、稲妻をまとう黒い雲が見えた。

「ぴーか!!」
「っ!?“ピカチュウ”!
なんなんだよおまえら!」

「なんだときかれたら……」

凄く空は気持ちいい青空なのに、あの一角にだけただよう雲に違和感を感じてみつめていれば、その隙をつくように、いつものロケット団トリオが突然現れてピカチュウを檻に閉じ込めてしまった。

「“ピカチュウ”〔十万ボルト〕!」
「ぴっか!」

檻ごとピカチュウをつれていかれないように檻を押さえて指示を出すけど、さすがに対応策として電気対策はしていて――
その対策であふれたピカチュウの電気が空中に広がり、その瞬間、おれたちの真上に黒い影がよぎった。

それとともに上空の雲から雷が落ちてくる。
どうやらおれの“ピカチュウ”の電撃のせいで、さっきの雷雲を引き寄せてしまったらしい。

目の前に落ちてくる。それに間に合わない!そうおもったとき、声が響いた。

ピカ〔ひかりのかべ〕だ!!』

雷雲から発せられた青い雷は、物凄い音を立てて、ピカチュウをとらえていたロッケト団の檻ごと、ピカチュウに直撃した―――かにみえた。
そのいきおいでロケット団はふっとばされていく。
おれも爆発した勢いでふきとばされそうになったけど、いつの間に立ち上がっていたのか、背後にさんがいてささえてくれてたので、地面にたたきつけられずにすんだ。
かわりにさんのせいで、おれまで服がびしょにびしょになったけど。
バチバチバチィ!!!!

『気をつけろ“ピカ”!第二陣が来るぞ!!』
「ぴっかぁ!!」

「え?“ピカ”?じゃぁ、おれの“ピカチュウ”は」
「ぴ!ぴかぴ!」
「“ピカチュウ”!」

おれの“ピカチュウ”にあたったと思った電撃は、なんとさんのピカチュウ“ピカ”が受け切ったらしい。

緑の大きなリボンに細く赤いリボンがからまる。センスの良さがうかがえる色彩のリボンはそのピカチュウは首元でふんわりとリボン結びになっている。
そのクリスマスカラーこそまさしく“ピカ”の特徴だ。

ふわりとしたリボンを首元にまきつけたピカチュウは、そのかわいさとは裏腹に、とんでもない量の放電を始める。
バチバチと普通のピカチュウ以上の放電をしているやる気満々の“ピカ”が、上空の雷雲を睨みつけながらおれとさんを守るようにドン!とたたずんでいた。
おれの“ピカチュウ”よりすこしばかり体格の大きな“ピカ”は、次々と降り注ぐ青い雷からおれたちを守ってくれている。

『はぁ〜。くっそ。あのやろう逆恨みもいいところだ』

〔ひかりのかべ〕に青い雷がはじかれていく。幻想的な光景に思わず見惚れてしまう。
それを見つめていたら、おれの背後で物凄いため息が聞こえた。
状況からいって、この状況はさんがかかわっているんだろう。

「あ、あのなにが。あの雲は…」
『ああ、サトシか。悪い。それどころじゃない!!電話電話っと』

さんは濡れてはりつく赤い髪を鬱陶しそうにうしろにかきあげると、何かを探すようにキョロキョロと視線を動かす。やがて目的のものを見つけたのか、さんはびしょぬれのまま走って電話ボックスへとかけていった。

だされたのは、モンスターボール。
そこからは黒いバンダナをつけたポリゴンが飛び出してくる。

『ちっ!さっきの雷のせいでこの辺の機械いかれてんじゃん。オレ、弁償とか無理だぞ。
…あああ!もうっ!!被害が広がる前に早くあいつを止めるぞ!
“ポリー”、電波ジャックだ!!電話の周波数を“ピカ”の電撃に合わせて、そのまま電波を誘導して“ピカ”の雷にのせてくれ!
まだ誘導に“ホウサクさん”がいるから奴もすぐには逃げない!“ピカ”!最大威力で空に向かって〔十万ボルト〕!!」
「△○×◇××♪」
「ぴぃっかぁっ!!」

…でんぱじゃっく?え?ポリゴンってそんな技あったけ?
ないはずだ。

ってかあのピカチュウのセリフがいま「やったるわごらぁ!」みたいに野太く聞こえたのはなんでかな?

そうこうしているあいだに電話ボックスから受話器をとったさんに続き、モンスターボールから飛び出たポリゴンの“ポリー”が、身体を電子化してテレビ電話の画面の中に飛び込んでいく。
ああ、電波ジャックって――言葉のまんまなのか。直に中から操作しちゃうのか。とか、しみじみ思った。
画面一面にポリゴンの顔がうつれば、ボックスの上ですたんばっていた“ピカ”が放電を始めた。
それと同時にさんが電話に向けて――


『“ゼリィ”!ふてくされるのはやめて帰ってこい!!おまえの残しておいたプリンを食べたのはオレじゃない!!“タマ”だ!!!
あとでプッチンプリンのかわりにオレがとっておきのプリンをつくってやるからやつあたりすんじゃねぇよ!!! お前の分だけ生クリームもつけてやる!!だから大人しくしなさい!!』

えーーっと。プリン?
ポケモンの?
「ぴ、ぴかちゅう」
いや、うん。いや、いやわかってるよ“ピカチュウ”。食べ物のあの黄色いプリンのことだろ。
思わずだよ思わずね。

おれが、おれの“ピカチュウ”と話している間にも、向こうのピカチュウの方では進展があったようで、「ヂュウゥゥゥゥゥ〜!!」と“ピカ”が〔十万ボルト〕には不釣り合いすぎる量の雷撃をあの黒雲に向ける。
そのたびに空は青や黄色に光かり、黒雲の向こうにうっすら黒いものが見えた。
どうやら空の上にいるポケモンと交信を取っているらしい。

さすがというべきか。

機械とポケモンをつかって人間の言葉を空にいるポケモンに伝えるとか、発想がぶっ飛んでいる。 それでもポリゴンや電気ポケモンがいるからには、相性のいい抜群のコンビネーションにもみれる。
さんは、使い方も言ってることも変だけど、ポケモンの生かし方をこの人は良く知っている。
もしもこの『どんなときでさえポケモンを生かせる頭の回転力』をバトルでつかわれたらたまったもんじゃないだろう。 これがもしバトルでいかされたら・・・知らないポケモンに対するのとは違う寒気で背筋がゾクリとした。
きっと誰もこの人には追いつけないんじゃないかと思う。
いまでも追いつけないところにいるのに。

そうこうしているうちに、雲の上からも青い雷がまた落ちてきて、さんのピカチュウ“ピカ”が、ジャンプしてクルリと回ってシッポでその雷を空中キャッチしていた。
どうやら電話機に落ちいて機械を壊さない用の配慮らしいけど、あの凄い威力の落雷をよく平然と受け止められるなぁって思ったら。

「…っ!!!ちゃぁぁぁ!!!」
「“ピカチュウ”!?」

突然だった。さんの“ピカ”が雷を受け止めたそのすぐあとに、もう一撃落雷がおき、おれの側にいた“ピカチュウ”が雷を浴びてしまった。

『あ。おいこら“ゼリィ”!ピカチュウ間違えだ!!なんてことを!ひどすぎだろ!!』

そのひどいといわれるほどの威力を持つ雷を平然と受け止めてるさんの“ピカ”は何者ですか!?

さんが空を睨んで大声を上げたが、反抗するようにその直後にもまた落雷があったが、とっさに彼の前に飛び出た“ピカ”がその雷をひきうけた。
さんの言葉にイヤイヤをするように降り注ぐ青い雷を、“ピカ”は黄色い電気をまとった〔アイアンテール〕で打ち返して、雷を地面に落とすなんていう被害を最小限に抑えていた。
おれの“ピカチュウ”に雷が落ちたとき、すぐにさんが別のモンスターボールからシェイミをだして〔アロマセラピー〕を使ってくれたおかげで、おれの“ピカチュウ”は何事もなく回復を見せた。
まだすこし調子が悪そうだけど、おかげで大事には至ってないみたい。
もともと電気鼠であるピカチュウに電気はあまり影響はないだろうけど、それでもあれだけの威力をもった雷だ。心配にならない方がおかしい。
おれが“ピカチュウ”を抱きあげたとき、ちょうど“ピカ”が今までにない量の雷を放出をしたせいで、風が吹いたのか一瞬黒雲が晴れ、金色に光る鳥ポケモンと黒い大きなポケモンがいるのが見えた。
たぶん黒い方がさんの言う“ゼリィ”だろう。
金色には覚えがあるから。

それにしても。黒いほうはみたことがないポケモンだった。
視線を腕に向ければ、“ピカチュウ”と視線が合った。

「あ、大丈夫か“ピカチュウ”?」
「ぴぃ〜か」
「そっか。それにしてもさっきのポケモンはなんだろうな」

なんだかんだで色んなところを旅しているさんだ。
噂では全地方を制覇したとか。してないとか。
さんに関しては、よくわからないことが多いけど。
間違いなく全地方を回っているのは断言できる。
ならばこそ。おれの知らない地方のポケモンもたくさん知っているんだろう。
きっとあの黒いのはそのうちの一体。

クォン…とポケモンの鳴き声のようなものが『音』が聞こえ、黒いポケモンがさんの方をチラリとみたが、黒い雲がすぐに隙間を埋めてしまってポケモンの姿もみえなくなってしまう。
そのままポケモンと黒雲をみていたら、ここがイッシュという新しい地方で、おれがまだ知らないポケモンがたくさんいることを思い出した。
きゅっと腕の中のピカチュウを抱きしめる力が強くなったのを感じてか、ピカチュウが目を開けると、おれにほおずりをしてきた。

「ぴぃ〜か」
「“ピカチュウ”…そうだな。また会えるといいな」

「しぇい、みぃ?」
「ぴっか!」

ふいにおれがヒカリたちと出会ったシェイミとは別の、さんのシェイミが、ピョンと飛び乗ってきて、おれの腕の中のピカチュウを心配そうにのぞきこんだ。
さっきは気付かなかったけど、シェイミの小さな手の右手に細い黒色の何かが控えめに巻き付けられているのを見るに、さんのマークである黒いバンダナの一部だろう。
納得。さんのシェイミだ。


マサラの有名幼馴染ズたちは、自分のポケモンに名前を付け、区別するようになにかしらのマークをそのポケモンにつけているからすぐにだれの子かわかるし、目立つ。
赤いリボンはレッドさん。
緑のアクセサリーはグリーンさんのポケモン。
さんは、黒のバンダナ。
きっと去って行ったあの黒い子もバンダナをしているのだろう。極限あの真っ黒な身体では、同色のバンダナなど目立たないだろうが。


「しぇいみ?」

ふいにかけられた声にそちらをみれば、まだシェイミが心配そうな顔をしている。
シェイミは、雷が“ピカチュウ”に直撃したことを気にしてるのだろう。
それに「大丈夫元気だよ」という風にピカチュウが笑顔でこたえた。
二匹のやり取りがなんだかかわいくて、おれもようやく顔の緊張が取れた気がした。

「お前のお蔭だありがとうなシェイミ」

そう頭を撫でてやれば、「しぇ〜いみ!」と、くすぐったそうな笑みがこぼれ、同時に甘いかおりが周囲にあふれた。
その匂いにすこしほっとしてたら、さんが埠頭からピカを連れて戻ってきた。

『ごめん。"あいつ" にげられちゃった。“ピカチュウ”は大丈夫か?』
「はい。こいつの〔アロマセラピー〕のおかげで」

それから間もなくママと博士が駆けつけてきて――。

「サトシ!あなた大丈夫!?」
「うん」
「ほんとうになんともないのか?」

と、はじめはおれの心配をしてくれたんだけど、さんがいるのに気付いたら、さっきの雷もさんのせいかと勝手に二人は納得して、空気が一気に和んでしまった。

えぇ!?それでいいのかよ!?

「なんじゃか」
「あらぁ。じゃぁ、さっきの雷も?」
「どうせのポケモンじゃろ。それにしてもずぶぬれだがどうしたんじゃ?」
「まぁ、ほんとうにずぶれね。こんなところまでどうしたの?」

さっきの物凄い雷よりもさんが濡れていることの方を "笑顔で" つっこむ二人のノリには、さすがのおれと“ピカチュウ”も慣れなくて、しばらく蚊帳の外になってしまった。

『ユッキー!!!いいところに!!うちの“ゼリィ”が“タマ”にいじめられて家出しちゃったんだよ! それで追ってきたらイッシュまできちゃってさ。 ケンジくんにあやまっといて。あの子、ケンジくんになついてたから。
あとハナちゃん。お願い!オレのために洋服作って!替えがないんだ』
「なんと!?“ゼリィ”じゃと!!お主、イッシュを滅ぼす気か!つかまえるって…マスターボールぐらいもっておるのじゃろうな」
『え〜なんでそんな高価なもの使うのさ。
マスターボール?いらない、いらない。だってあいつ捕まえたのって、ただのモンスターボールだし。 サトシのコータスやミィのエンテイみたいに泣き虫のヘナチョコ甘えん坊のあいつに、マスターボールなんてやりすぎだって。 まだあいつのモンスターボールは壊れてないしな。 オレの手元に残していくってことは、これって帰ってくる気満々ってことだろうし。
まぁ、でも今日はオレが悪くてさ。“タマ”があいつのプリンを食べたの知らなくて、“ゼリィ”がタマに〔クロスサンダー〕をつかおうとしたから、あわてて「“タマ”はわるくないだろ」とか庇ったりしちゃってさ。それからふくれちゃってさ。
“ゼリィ”に悪いと思ったから、“タマ”にちゃんと説教したし。 しばらく“タマ”には手持ち解除通告して野に放置してきた。 すぐに "鳴き" ながら追ってきたけど、“ゼリィ”が帰ってくるまで近寄るの禁止ってきつく言っておいたんだ。 まぁ、「自分は悪くない!おいしそうにあったプリンがわるいんだ」の一点張りだったから、“ゼリィ”をみつけたあと頭が冷えてたら迎えに行くけど』

「・・・・・・」

プリンが原因のお家で騒動に、おれの“ピカチュウ”は巻き込まれたらしい。


それからアララギ博士と合流し、いったんアララギ研究所にいくこととなった。
そのあいだにびしょ濡れだったさんはタオルを借りて長い髪を乾かしつつ、ママたちと話に花を咲かせていた。
空を飛んで追いかけようにも唯一手持ちで飛べるポケモンが“ゼリィ”を追うためについていってしまったとかで、そのままさんも一緒にいくことになったんだ。





結局、ママはさんの服作りに忙しく、オーキド博士はさんの“ピカ”とかの健康診断で忙しく、三人は旅行そっちのけで研究所で数日まったり過ごすことにしたらしい。
おれの“ピカチュウ”はというと、やっぱり具合が悪かったみたいで、アララギ研究所にいた新人トレーナーとの勝負の時に電気技が使えなくなっていた。

あわてて研究所に戻ったおれが、ママがいる部屋に飛び込めば髪も切って衣服も新ためたさんがいて。

“ゼリィ”をとっつかまえてあやまらせるから!と、“ゼリィ(家出っ子)”を追いかけていた唯一の飛行ポケモンを呼び戻した。
問題はそこで。
バサリ!と大きな風を切る音を立てて研究所の庭に下りてきたのは、金色に輝く巨大な鳥ポケモンで、七色の翼がきれいだ。
それに手を振っているさんやママ、オーキド博士のなんと慣れたことか。
チラっとアララギ博士を見れば、口を開いたまま固まっているし。
うん。おれもはじめのころはそうだったなぁ。

「おお、“ホウサクさん”も元気のようでなによりじゃ。
ケンジやシゲルはお主の羽をいたく気に入っていてのぅ。この七色の羽が痛んでないか心配しておったぞ。いつか帰って健康診断を受けるんじゃぞ」
「まぁ、“ホウサクさん”。いつもうちの者達がおせわになってますね。
ごめんなさいね、あなたを彼の足のように使わせちゃって。移動も大変でしょう?他にも飛行タイプはいるんですもの。無理して付き合わなくていいのよ」
「くわっ!」
『ユッキーの発言はともかく。ハナちゃん、“ホウサクさん”はすすんでオレに協力してくれてるんだって』

ママとさんのやりとりは相変わらずだ。
でもさんと旅をするのなら、飛行タイプはホウオウ“ホウサクさん”ぐらいでなければついていけない。
さんはそういう旅に出てた。
そこまでわけありの旅だったから、普通の鳥タイプには無理だったんだ。
長距離移動やら危険地域に足を突っ込むさんのポケモンはレベルが高い。
そのポケモンたちが長居旅から帰ってきたのでそれを機にと、博士が簡易的な健康診断をしていた。
ホウオウの“ホウサクさん”。ピカチュウの“ピカ”。ポリゴンの“ポリー”、シェイミ。
他にもいるなら出せと、博士はさんをうながした。
めったにカントーにもどってこないさんだからこそ、その手持ちをいまのうちに診ておこうというのだろう。

「ついでに聞くが、お主、今の手持ちメンバーは?どうも新顔が増えておるようじゃのう」
『まずは埠頭でも見せたやつらな。
皆様ご存じ、孫の数がついに四十桁をこえたレッドのパートナーにして、バリバリ現役でなぜか不老っぽいピカチュウ、“ピカ”様。
さっきまでの旅先のゲーセンでゲットしたポリゴンの“ポリフェノール”こと“ポリー”。
うちの庭に風と一緒にとんできて、迷ったって泣いていてそのままいついたシェイミの“カナン”』
「ふむふむ。シェイミといえば、シンオウの感謝ポケモン。ずいぶん遠くまで飛ばされた様じゃなお主。こやつにみつけてもらったのは運がいい」
「しぇーいみ♪」
『こらこら“カナン”は大人しくしとけって。
あと飛行タイプとしてついてきてくれたホウオウの“ホウサクさん”。
イッシュで十五年ほど前に会った自由人ことたまに "玉" にも姿を変えて人間を試したりして遊んでいるゼクロムの“ゼリィ”。
あとは、“タマ”の空のモンスターボール。あー、たまたまたまたま言ってたら口がおかしくなってきた』

「ゼクロムですって!?じゃぁ、さっきの飛行場での雲は!?
ホウオウだって、たしかホウエンの伝説のポケモンじゃない!!それにシェイミまで!あなた、何者なの!?」

『アララギ博士が博士であるように。オレはただのウェイター。
そう。オレはさすらいのバイトマン。カントーのマサラタウン出身のだよ』
「はは。相変わらずさんはポケモンに好かれてんな〜。おれも負けてらんないな!」
じゃからしかたないのはわかるが、改めて聞くと、いやはやなんとも豪勢じゃなぁ」
「…あー。そうかも。そういえばさんの手持ちってよく変わるけど、派手だよな。カントーではミュウツーやコピーポケモンたちひきつれてたし」
『ああ。ミュウツーはストーカー対策に力を貸してもらったんだよ。いまはコピピカとオーキド研究所のお庭番をしてもらってる。コピーニャースはね、あの子はバトルが嫌いなんだ。だからいつも研究所かその周辺を散策してるよ』

ミュウツーは“ツー”。
おれの“ピカチュウ”の、コピーポケモン――名を“燈花(トウカ)”。
ロケット団のニャースのコピーは、“月見(ツキミ)”。

彼等コピーポケモンは、とある地方でロケット団につかまりそうだったところに "たまたま" 居合わせたさんに保護された。コピーポケモンたちはみんな自由に飛び立っていったのだが、ニャースとピカチュウのコピーだけは、その礼として、ストーカーに付きまとわれていた彼を守っるためについてきたという逸話がある。

それにしてもさんの手持ちにホウオウまでいるのは知ってたけど、こうして直接みれることはめったにない。
なにせさん、ずっと旅をしているのだから。

おれも触ってこようかなぁ。
ちょっとうずうずしていたら、アララギ博士が何かに気付いたように表情を険しく、否、ひきつらせてさんに "六匹目" のことを尋ねた。

「・・・・・・つかぬことをおききしますが、“タマ”って…」

『レシラムだけど。どうかした?イッシュ地方のポケモンだから知ってると思うけど…』


ありえないわー!!!頭を抱えたアララギ博士の絶叫が響いたのは、いうまでもない。





オーバーロードしたおれの“ピカチュウ”は、さんの“ピカ”と“ホウサクさん”の見事な微調整によっていままでのレベルまで回復することができた。
忘れてしまっていた技もすっかり問題なく使えるようになったようで何よりだ。
むしろレベルアップしている気がする。
さすがはレッドさんの相棒たる“ピカ”様だ。

レッドさんっていうと――トレーナーであるレッドさん大好きな“ピカ”が、さんといるのを見ると、すごい違和感がある。
たぶんレッドさんの手持ちを借りないとダメなぐらいの旅に出てたんだろう。
でも。やっぱり“ピカ”はレッドさんといるところが合う気がする。
逆にさんときたら、ヤドキングとホウオウの組み合わせしか浮かばないなぁ。
今回はヤドキングはつれてないんだな。残念。





「イッシュの旅かぁ」

はじめ、おれはママと博士と旅行に、このイッシュ地方にきただけのはずだった。
しらない地方。
やっぱりそこも知らないポケモンにあふれていて、せっかく旅を終えて帰って来たばっかなのに、おれの目はつい新しポケモンにひかれてばかり。
ママとのせっかくの旅行だったけど、しだいにこの地方を旅したいという想いにあふれてきた。


結局、おれは“ゼリィ”をさがすというさんにくっついていくことになったんだ。

“ピカチュウ”が“ピカ”のおかげで回復してからすぐにまたバトルがしたいと思った。思い出すのは、“ピカチュウ”の不調を発見するきっかけとなった、さっきのシューティーっていう奴とのバトル。
もう一度あいつに挑戦したい。
それに――イッシュ地方にきて、新しい出会いにワクワクしていた。

おれは、さっそく旅をしたいと言ってみた。
だけどママに「一人旅なんてダメよ。どうせごはんとか考えてなくて、てきとうにするつもりでしょ!」と言われてしまった。

「いままではタケシくんとかケンジくんとかにたよりっきだったじゃないの。
旅はできても食事とかどうするのよサトシ。
いまさら料理できるわけないじゃないの。まぁ、少しくらいできるのはママもしってるけどね。でもそれじゃぁ、栄養が偏っちゃうもの」
「ふむふむ。そうじゃのぉ。おまえさんの旅仲間は、みな、ちぃっとばかしサトシを甘やかしすぎたかもしれぬのぉ。 ママさんや。 "一人じゃなければ" いいのじゃろう?
ちょうどいい適任がココに一人おるようじゃよ」
『なにそれハナちゃん、ユッキー。なんかオレ、すごく嫌な予感がするんだけど』

「サトシをよろしくね」

「お主もたまには普通の人間の歩調で旅をしてみてはどうかの?」
『オレが人間じゃないみたいに!?』
「「「どこからどうみても人間だけど?まぁ、規格外だけど」」」

ママに強く言えないさんが圧倒的に不利だった。
そんなわけで、さんと共にいるなら行ってもいいと許可が出て、おれはさんの“セリィ”を探すのを手伝うと言う名目で、さんの旅に同行することになった。


そうして今回の旅の目的を決めた。
おれはイッシュリーグまでいってやるんだ!ってね。

後日、準備が整ったおれたちは、この見知らぬ地、イッシュ地方を旅することになった。
さんの手持ちの中に、まだホウホウがいたことは――

いいのかな?

ただでさえこの地方は、ピカチュウ一匹いるだけでも珍しがられてたのに。
あんまりよくないきがするけど。


まぁ、いっか。





 









 


【オマケ】

サト「いくぞ!“ピカチュウ”!」
サトピカ「ぴっ!ぴかちゅう!」
サト「どんなポケモンがいるか楽しみだな!」
夢主『おいおいサトシ、あんまはしゃぐなよ〜。ああ、できればオレの“ゼリィ”もサトシぐらいアグレッシブになってくれればいいのに』
サト「ほら!さんも早く!」
夢主『あーはいはい。“カナン”、モンスターボールはいるか?“ピカ”様はご老体だからボールんなかもどっちまったけど。どうする?』
カナ「みぃ!」










<今回登場したポケモン>

☆ピカチュウ(ピカチュウ)
・サトシのピカチュウ
・ゼクロムの雷を受けLV後退するも・・・驚異の回復を見せる
・“ピカ”の何代目かの孫にあたる

◆ピカ(ピカチュウ)
・クリスマスカラーのリボンをしている
・親と名付けはグリーン
・レッドを気に入り、ピチュー時代にレッドの手持ちに自らなった
レッドのポケモンにして、最強のパートナー
・年齢不詳

◆ポリフェノール(ポリゴン)
・黒いバンダナを首にしている
・通称 ポリー
・比較的新しい子であるため、サトシとは初対面
・港に落下する前までの旅先のゲーセンの景品でゲットした

◆カナン(シェイミ)
・黒いバンダナを腕にまいている
・楽園、花を届ける、感謝などから連想
・名前には「約束の地」という意味がある
・夢主の家に飛ばされてきた
・比較的新しい子であるため、サトシとは初対面

◆ホウサクさん(ホウオウ)
・種族名より命名
・豊穣の神だから豊作
・“さん”までが名前である
・基本、夢主と行動を共にするためパートナーとおもわれがち
・七色のハネは、オーキド研究所では気に入られている

◆ゼリィ(ゼクロム)
・種族名より命名
・言いたいことをはっきり言えない気弱な子。ただし頑固者
・ヘタレではあるが泣き虫ではない
・打たれ弱く、傷つけやすいだけ。でも真は曲げない
・逃げ足が速い

◆タマ(レシラム)
・白いペットといえば、タマかシロだろという理由
・すでにシロという名前の仲間がいたので、タマになった
・ずるがしこいが、どこか抜けている
・ちょっとおばかな子
・ただいまおっせ教を受けてふてくされて“玉”に姿を変えてどこかに引きこもっている
・ゼクロムをおちょくるのが趣味
・実は喧嘩っ早い

◇ツー(ミュウツー)
・映画【ミュウツーの逆襲】に出てきたほうのミュウツー
・ピュアーズロックで夢主の仲間になった
・もっかお仕事は、夢主をストーカーから守ること
・意外と穏やかな性格で、現在はオーキド研究所の護衛

◇燈花/トウカ (コピーピカチュウ)
・映画【ミュウツーの逆襲】より
・サトシのピカチュウのコピー
・自由を求めていたが、なんだかんだでミュウツーについてきた
・夢主にかわいがられているので、ずいぶん丸い性格になった

◇月見/ツキミ (コピーニャース)
・映画【ミュウツーの逆襲】より
・R団のニャースのコピー
・月を見るのが好き
・争い事が嫌い
・オーキド研究所からあまり出たがらない。研究所内の散歩が好き








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