白と赤色の物語
- 銀 魂 -



24.赤い空
第31話「どうでもいい事に限ってなかなか忘れられない」より







 -- side 坂田銀時 --








ついついまたジャンプを買ってしまった。
週刊なのがいけないんだよ。
一回でも見逃すと続きがわかんなくなるし。

ふところにジャンプをいれて、スクーターを走らせていた。
さっきみたとき信号は青だった。
なのに



キキィーーーーーーーー!!!
ドン!!!



交差点のところで、赤い車と激突してしまった。
信号はこっちがゆうせんだろうがぁぁぁぁ!!!!

衝撃が来て――。



意識がもどったとき、空はひどく赤かった。

あれ?なんだこれ?
空がまっかだ。

あれ?これって真っ赤なのはもしかておれじゃねーか?

あれ?なんでおれ、こんなことになったんだっけ?
あれ?ちょっとまて・・・

あれ?

おれは・・・








**********








カタン

『ん?』

―――真選組駐屯。

土方十四朗の机の上には、いくつかの写真立てがある。
そのうちのひとつが、風もないのに突然たおれた。

それを怪訝に見つめるも窓からなにかが入ってきたというわけでもないらしい。
土方が横を見ると、他の写真立てはどれも先程と何も変わらずそこに立っている。
真選組の集合写真やきれいな灰色の猫がアップで映っている写真などは、無事だ。

『おかしいな』

バランスが悪かったのかと、ふしぎそうに倒れた写真立てに手を伸ばした時――。

土方の携帯が、リンリンリンと着信を告げた。
彼の携帯はメロディーによって、だれからきたか使いわけている。

今回は、“坂田銀時の関係者から”のものだった。

そこで土方は、ふと、電話とたおれたままの写真立てとの共通点に思い当たり、不安が胸をよぎり顔をしかめた。

電話に出るのが突然怖くなり、目の前の携帯をとることができない。
鳴り続ける携帯の着信音に、通りすがりの隊員が不審そうに部屋の中をのぞいていく。

『・・・まさかとおもうが・・・・やめてくれよ』

けれど携帯はそんな土方の心中など無視して、鳴り続けている。
それが緊急感をさらにあおり、土方はしかたないとため息を一つついて胸の中のモヤモヤを吐き出すと、携帯をとり、電話にでた。

『はい』

《シロウかい?》
『お久しぶりです大家さん』

機械の向こうから聞こえてきたのは、固い声。
それに嫌な予感が当たったかと、土方の眉間にさらに深いしわがより顔がゆがむ。

『・・・なにか、ありましたか?』

《実は“銀時”が――》



銀時が車にはねられて病院に運ばれたらしい。



ああ、やはり不安は的中してしまった。
土方は平静を装って『いまからいく』と病院の場所を聞いて、通話を切った。
部屋を去り際、ひとつだけ倒れた写真立てに手を伸ばして、それをしっかり立て直して飛び出ていった。

「副長、いいところに。この前の件で山崎が・・・あ、ちょ!土方さん!?」
「副長!?」
「どこに行くんです副長ぉ!?」
「「「「ふくちょー!!!?」」」」

土方の名を呼ぶ隊士たちの声が聞こえたが、彼はそれをすべて無視して、否、耳に入っていないようで、表情がそがれた青い顔で廊下を駆け抜けていく。
そんな土方をみたことない隊員たちは不安を顔に乗せて、ただ見送るしかできなかった。












表面のガラスにはひびが入ってしまった写真立て。
そこには、白い猫をだいて笑う銀色の天パの幼い子供が映っていた。









第31話「どうでもいい事に限ってなかなか忘れられない」より








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