01.ましろ色と赤い猫 |
物心つくころには側にいた 白い しろい―― みつけたのは 自分と同じ色の生き物 気付けば いつも側にはあいつがいた 黄色に近い明るい黄緑色の 光の加減で金にも見える 不思議な瞳 鬼と言われた自分 ひとは側に寄り付かなかった けれどあいつだけが側にいた 俺と同じ色をした生き物 風来坊なあいつはよく姿をくらましたけど あいつだけが はじめから そ ば に―― いて くれた んだ ********** 青い硝子でつくられたような不思議な首輪をした白い猫がいた。 まるで海をそのまま閉じ込めたようなその硝子の首飾りは、こんなところの住民ではとうていてがとどきそうもない。 金をかけていそうでもあるし、まず材質が何かわからない。不思議としか言いようがない雰囲気を放っている。 それがなにでできているとかはわからなかったが、たかが猫に与えられるものではないことは俺でもわかる。 天人か、はたまた御上あたりの成金か金喰い虫ぐらいしかつくれそうもない良い品だ。 そいつの大きな目は、明るい黄緑色で、宝石のように光を反射して煌めいている。 けれどだれかの手によって整えられていただろう毛並みは、血に染まって――赤く、黒く塗りつぶされていた。 「おまえ、こんなところにいていいのかよ」 「ンニャ〜ン」 「・・・わかんねーって」 戦争があった。 人と人が、人とそれ以外の者が殺しあう戦争だ。 その最中にまでそいつは俺の側にいた。 だけど側にいたから、そいつは戦の血をあびてしまった。 猫には怪我一つなかったが、洗ってももう猫の毛は白には戻らなかった。 血が染みついたように赤い色が落ちなかった。いや。まるで元々その色だったといわんばかりに、燃える炎のような綺麗な赤色に染まっていた。 「ニャン♪」 こびりついた汚れと血を洗い流した猫は、こっちの迷惑など考えもせず、ブルブルと身体をふるわし水気をはらってきた。 ふわりと風がゆらす。 乾いたそれは、綺麗な夕日色で、さっぱりしたとばかりに猫は嬉しそうに鳴いた。 |