03.まだ死にたくない! |
ハァ〜イ☆ども!! ひとはオレのこと赤い獅子と呼ぶね。もとい、鹿科の一種の、角が立派な赤毛の鹿です。 「変」とほざいてくれたシシ神が、うちの主さんを助けてくれたおかげで、まだまだノラに戻れそうもないオレです。 ?いえ、ヤックルです! -- side オレ -- オレの主であるアシタカにいさんは猪の神さんと話した後、モロ一族が少し面倒を見てくれることになりまして、主は彼らの住処でしばらく寝込んでおりました。 オレはわざわざ岩場を登るような甲斐性はないので、モロのおうちが見える場所をうろうろしてました。 時代が時代でよかったよ。 都会のようにビルとか建ってたら、こうも好きに森の中うろつけなかった。 食べ物豊富な森でよかったよかった。 っで。 ある日の夜。 オレはモロと主の会話を聞いてしまった。 というか、あんだけ大声で怒鳴りあうようにしゃべっていれば野生の動物は目が覚めます。 「サンをどうする気だ?あの子も道づれにするつもりか!?」 《・・・いかにも人間らしい手前勝手な考えだな。サンは我が一族の娘だ。森と生き、森が死ぬときはともにほろびる》 「あの子を解き放て!あの子は人間だぞ」 《だまれ!!小僧!!》 《お前にあの娘の不幸が癒せるのか?森をおかした人間がわが牙をのがれるためになげてよこした赤子がサンだ!・・・・・人間にもなれず山犬にもなりきれぬ・・・あわれでみにくいかわいいわが娘だ》 《お前にサンをすくえるか!?》 はい、いただきました。 かの有名な名台詞ですね。 ありがとうございます美○●宏さま!! その翌日にはご主人は、その岩場をでていきました。 もちろんオレもついていきましたよ。 だってオレの種族がいないこんな生息区域外の森で、野生に返されてもたまらないんでね。 そっからは怒涛の展開。 ただの鹿には超きつい! なんと森と人の戦いへ突入だ。 巨大猪、乙事主様に従い猪たちが、エボシさんのいる人の陣営を襲う。 主さんはたたら場が別の状況で燃えているのを見て、そっちに向かった。 途中で侍がいて矢を射かけれかけたけど、自慢の足で飛び越えてやったよ。 そのままドボンと湖へ避難〜。 鹿だけど犬かきみたいに頑張って泳いで、たたら場までいったとも。まじほめて。 前世が犬(狼)でよかったよ。おかげで、こうして水の中を獣の姿で泳げるのだから!! だけどエボシさんをつれてくるために、たたら場の横から今度は陸地を疾走。 追っ手に黒い馬が人間を乗せてやってきたけど、ハッ!オレの足にかなうまい!とわらってやったぜ。 怒り狂った馬が追いかけてきかけたけど、そこはうちのご主人が腕の骨さえ切り取る超今強力な矢を放って敵の人間を落としていた。 腕が吹っ飛ぶとかスゲェ。 オレもとばすぜ!しっかりのってくんな旦那! っと、思っていたのですが、敵もなかなかやってくれる。 オレの素敵な後ろ太ももを矢で射られました。 ぐぁっ!!ちょー!!!!いてぇぇぇ!!!!! 「ヤックル!」 かけつけたアシタカにいさんが、一生懸命抜いてくれるんですけど、やじりめちゃくちゃ痛い。 この恨み忘れまいぞ人間めぇ!! もう!やぁねぇ。いたいったらありゃぁしないわ。 だから人間の争いに巻き込まれるのは嫌なんだよぉ。銃とか刀とか弓とか槍とか、野生の動物たちには無い知恵を使ってくるからかなわないのよねぇ。 まぁ、そやって森を奪って動物を奪った結果、土砂崩れとか雪崩とか地盤沈下とか起きて自然からいつかしっぺ返しが来ると思うけどな。 だからオレら動物が恨むのは、筋違いなんだと本当は思うよ。 恨みを忘れないとは言ったけどね、世界は巡るものなんだ。 自然界のすべてのバランスが保てて、世界はなりたつ。 だから自然だけでなく、人間だけでなく。なにかひとつが特出してしまえば、そこからバランス系は壊れてしまう。 いまでない、時代。遠い未来にそれは、その特出したなにかに襲い掛かるだろう。 それを知ってるから、実のところオレは森と人の争いにとくに興味はない。 どちらが勝とうと、負けようと。 それが時の流れというものだ。 いつかは終わる。いつかははじまる。 めぐるものだから。 っとはいえ、オレ、まだ死にたくないんですけどねぇ!!! そっから・・・。 地雷モドキ?でたおされた猪軍団の群れから、アシタカの指示でモロのこどもが一匹ほりだされた。 あの体重に押しつぶされて生きてるとはなんちゅう幸運なワンコでしょうか。 なんとか猪の死体から解放されたモロの子に、痛む足をひきづりながら『よかったなぁ〜』とモロの子に頬をよせる。 グルルと獣の鳴き声で「ありがとう」と返事が来る。 それからオレは怪我を理由に、この森VS人の戦場で傷ついたたたらばの男たちとたたら場にもどることとなった。 ご主人はモロの子といくらしい。 『うちのご主人よろしくな〜』 サン?いやちがうか。エボシを追ってかけだしたアシタカと共にかけだしていくモロの子に声をかければ、チラリと視線が帰ってきた。 またね、おともだち。 中身が狂っているようなオレでも、せっかくこの森のやつらとすくなからず仲良くなれたばかりだったのにね。 原作という意味で結末を知っているオレは彼らの向かっているだろう森の奥を見据えて、一礼をささげる。 ―――ご武運を。 あいさつしたし。 さぁ---! 逃げるぞ!! 働け人間! そしてこの戦場から逃げるのだ! だって戦場に長居したくないし。 それにほら、たたら場が人間の侍にせめられている。そこへ男どもをつれて帰らなにゃならん。 オレ、大役じゃね? まぁ、オレも怪我してるから連れてってもらうだけだけどな! いやぁ。命惜しいからご主人たちの後は追う気ないし! どうせダイダイラボッチ?くるときには、このたたら場まで彼ら戻ってくるしな!! いくぞ!人間ども!! |