死んで死後の世界にたどりつき
- B LEACH -



00.その人生は終わりを許されず





 -- side オレ --





 オレは『この世界』にいる

 例えこの世界が、死後の魂がたどり着くべき世界であるのだろうとしても
オレは“オレという意識のもと”に生活をしている
それは“生きている”ということ

オレはすでに三度死んだはずだった
だけど――

オレは まだ死ねていない。








**********








 すべてのはじまりたる“)”は、女だった。
 彼女はプログラミングが好きではあるが、人に誉められるようなことは何一つできないような――どこにでもいる凡人だった。
そして彼女は、親よりも早くに死んでしまった。
何があったのかは本人にもわかっていない。
なぜ自分が死んだかわからないが、最後に見たあれは、何かの爆発による光。そして激しい衝撃だった。

 死んだらそのまま自分の意識はなくなると思っていた。なのに意識はそのあともあり、は転生した。



 転生した先は、漫画【HUNTER×HUNTER】の世界に酷似した世界。
そこで再び“”として生まれた自分は、女から男となり、黒一色だった目も髪も赤い髪と明るい黄緑の瞳と、随分目立つ色彩となった。
 その【HUNTER×HUNTER】の世界では、強さがものをいった。
だから必死になって《念》という自分の生命エネルギーを使った技を覚え、様々な野生動物や両親やらハンターやら――世界の不条理さとバトルをして必死で生き抜いた。
そうして気がつけば、なぜか仕事相手の女が産んだ見知らぬ子供をおしつけられ、恋をする暇もなく子育てをすることになった。
それでもオレの環境は悪くなかった。仲の良い両親がいて、可愛い義息子がいて、それなりに楽しい日々だった。
義理の息子はオレの死後は見事な殺人鬼になったらしいが、そこはそれ。
さすがに死んだ後のことまでは保証できない。
 転生してから“”となった自分は、その世界で45年の歳月を生きた。
否、享年45歳というべきか。
死亡原因は、遺跡のトラップに引っかかったことによる崩落事故。

そのとき、世界は『蒼』に染まった――。


 世界が反転したとき。
オレは、青い海が眼下に広がる大空に放り投げだされていて、落下していた。



 二つ目の別世界へは、トリップという形で行われた。
正確には世界からはじき出されるような形となり、その衝撃でオレの身体は2歳ぐらいまで縮んだ。
 オレを拾ってくれた男の名は、ゴール・D・ロジャー。
某海賊漫画【ONE PIECE】における海賊王の同姓同名――否、本人そのものだ。
 突然世界と切り離されたオレは情緒不安定だった。
そんなオレをロジャーが・・・爺様が、救ってくれた。
だからオレにとっての“世界”は爺様になった。
 大切だった。
一緒にいると楽しかった。
色んな冒険とかして、みんなで騒いだりして、けっこう幸せだった。
だけど幸せすぎて、ここが漫画と同じ道を選択する世界だとは信じたくないばかりに、オレは爺様を見殺しにしてしまった。
ロジャーは自ら自首し、死んでしまった。
そのときに、オレの世界が壊れた。
 それから間もなく、オレはあの世界が【ONE PIECE】の原作どおりの時代を辿ろうとしていることを知る。
それを知り、オレは自分の好きなように手を出すことを決めた。
もう泣くのに疲れたから。
 原作について覚えていることは少ない。
だけど好き勝手生きて、好き勝手に原作を破壊するような行動をしてみた。
 残念ながら、夢も途中で、海賊たちの抗争に巻き込まれて死んでしまったが。
あっけない死だったかもしれない。
ロジャーの意思をひきつぎオレを育ててくれた義父シャンクスや、仲間たちは優しかったし、側にいて暖かかった。
なのにそんな彼らの目の前でオレは死んだ。
それだけは申し訳ないと思うけど、後悔はなかった。
大切なものを守りきれた。
 それに転生やトリップがすでに二回目だから慣れているとはいえ、争いの耐えない生活に、元日本の一般人だったオレは、本当は少し疲れていたんだ。
だから死ぬとき、これでよかったんだと思ったし、ホッともしていたんだ。
もしかすると死ねば爺様に会えるかもしれないとも思っていたのもあるだろう・・・。

 シャンクス、義理の親子だったけど。
大好きでした。
でもそんなあなたを置いて先に逝かないといけないらしいです。
親不孝でごめんなさい。

 世界の皆さん。
ありがとうございました。

 さよならも謝りもしないよ。
薄情なオレでごめん。

だって、本当に後悔はない。


 だからね。

世界にさようならを――
 心から笑って告げたのだ。



しかし、気がつけばオレは、傷一つない姿でたくさんの人の中にたっていた。



 三つ目の世界。
オレはぞくにいう『死後の世界』とやらにきていた。
 間違いなくオレは肉体を失ったようで、魂魄だといわれた。
そこではみんな同じように白い着物や甚平など和服ものの服を着ていて、街並みもまた江戸時代かそこらのさびれた景色をしていた。
集められたオレたちはみんな死んだ魂で、今から、これから住む地区ごとに振り分けられるという。

思わずオレはつっこんだ。

「ここどこ?」

 冗談で「オレはだれ?あなたはだれ?」とも呟いてみた。

本当に冗談のつもり言ったのに、なぜか返答が返ってきた。
しかもオレの発した言葉こそが正解だといわんばかりの、同意を含んだ頷きとともに。

返って来た言葉は――

「記憶がなくて当然だ。お前たちは死んでここへきたため、皆、前世の記憶を失っているからな。
ここは尸魂界といい、これから流魂街の各地区にお前たちを振り分ける」

 黒い着物を着たやつが告げた。
その言葉に思わずあいた口が塞がらなかった。

そうるそさえてぃ? るこんがい?

 思わずオレの顔がひきつる。
聞きました奥さんいまの?

ってぇ!!どこの死神な脱色漫画だよ!!

 頭を抱えて叫びたくなったオレは悪くない。
どうやらこの死後の世界もまた漫画を原作にもつ世界らしい。










また漫画――いい加減にしてくれよ。
神がいるならオレにどうしろというんだ?

いいかげん。まっとうに死んでいたいんだが。








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