字春が魔族になりまして 07 |
『春くん!気を抜かないで!!グリにばれちゃうよ!』 『えー、もうそろそろグリも巻き込もう。あとみんなにばれてもいいかなぁ〜って思うんだけど。だめ?』 『だめったらだめ!!!グリまでなんて!!だめぇー!』 『そうだよ!俺たちでさえかなりショックうけたんだ。あんなこと言われて、この世界のやつらが絶望でもしたらどうするきだよ!』 『あー・・・うん。それは困るねぇ。運命の女神の介入を防いでるせいで創る世界はどれも脆い状態なのに。あ、君たちはあんな女のようにならないでね。 仕事してね』 『するから!ちゃんとするから!!』 『お願いだからそんな死にそうな顔しないで!』 『・・・・おまえら、朝から何をしてるんだ?』 『『!?』』 『あ。始だ〜。おはよー。じつはね――』 『『まって、はるさ(く)ん!』』 そのまま春は、剣介と英知によって連れさらわれていった。 ただ見送るはめとなった始は思わず眉をしかめ、首をかしげたのだった。 『なんだあれ?』 【07. そろそろ再戦の時だと思うんだ】 『髪型のせいか、前よりよけい天族に見える』 『魔族っぽい威厳がごっそり削げ落ちたよね。角あるけど。爪もあるけど』 『ふわふわしていてなんだか春さんがかわいい』 『あ、うん。前より優しい雰囲気だよね春』 『人間が言う聖母ってこんな感じかなぁ〜ってちょっと思う。いや、黒いけど。角あるけどな』 という年少組たちの意見が飛び交うようになった原因である春は、最近とある事件のせいで髪型を変えた。 それ以降、周囲がうける彼への印象もガラリと変わっていた。 あいかわらず黒い翼を常に出したままだが、その髪が地面にまでつくほど長く伸び、ふわりふわりと緩やかなウェーブを見せるその淡い髪と、穏やかな雰囲気が相まって、周囲から魔族説を疑われているほど。 服装もその髪型には以前では違和感があると、オシャレな輩が率先して春を着飾り貢いだせいで、黒い衣服も以前のような鋭利な印象を与えるスマートなものではなく、天族のように柔らかな布を幾重にも重ねられたふんわりとした衣装だ。 全体的に黒い布なのは変わらないが、天族の昂輝の着ているふんわりとした衣装に近い。 ただし素肌を徹底的に隠すように、背中も出ていなければへそや足首さえ出ていない。露出が少ない徹底ぶりは相変わらずである。 みえているのは肩の部分だけだが、その白い肩を覆うように向こう側がすける黒いストールのような羽衣をまとっている。 その布には小さなビーズやラメがちりばめており、光にあたると布がキラキラと輝く。まるで宇宙を羽衣にしたようだと感嘆する者もいたその上質な布を彼にささげたのは、なにをかくそう布と言ったらこの人の隼である。 腰の部分では巻きスカートのように黒い布がまかれているが、巻かれた布も羽衣と同じ素材なのか、地面をひきづりそうなほど長いのだが、ふわりふわりと舞い、歩行を邪魔しない。ただし中が見えることはない。けっしてだ。 さらにここまでするか!と言わんばかりに、立派な角の傍には、その威圧感を和らげるかのように花が飾られている。 いったい誰と誰のコーディネイトによるものかは妖しいが、間違いなく本人のセンスではあるまい。 ![]() 数日前までの、「お前こそが魔王だろう!」とつっこめるような。どこか鋭さを周囲に与えていた魔族らしい魔族。といった面影はすっかりなくなっていた。 髪型一つ、服装ひとつ。 それだけでまるで包み込まれるような暖かな優しさと包容力感じさせる存在に、誰もが言った。 あれが優しい魔王だ。 と。 魔王という評判は変わらなかったが、悪魔らしいから、天使のようなという名称に変わった。 どうやら彼の角の立派さと、髪の毛の膨らみ具合がまさに存在感をアピールしているようで、さらにはすその広がった豪華な黒い衣服というのが、人間の価値観でいう魔王がまとう豪華絢爛な衣装により近いらしい。 髪の毛のボリュームが存在感をより生んでいるというのは笑えるが。 しょせん管理者とはいえ、育てている世界を見続けていれば、人間たちにどこか感化されてもおかしくはない。 そんなわけで、現代において魔族の最高位にいる始をさしおいて、春はいまだに魔王と言われていた。 そんなふわふわな魔王が、部下を連れて黒い翼を広げ宙を舞いつつ仕事をしているさまを遠くから眺めつつ、始は大きな樹の幹に座り翼をおさめる。 隣にふわりと舞い降りた白い天族に横に座るよううながしながら、着々と進んでいくイベントの会場の様子を観察する。 始『春はどうやらああいう裏方がわりにあっているらしいな』 隼『ふふ。たしかになにかをつくったり管理したりするのは得意なのかもね。ああ、みて始。今もあの子なんだかいつもより生き生きしてないかい?』 始『なぁ、隼』 隼『なんだい始』 始『春がずいぶん懐かしい髪型に戻ったんだ。どうやら力の制御に失敗したらしくてな』 隼『そうだね。最近の春は雰囲気まで柔らかくてフワフワしているよね。・・ん?なつかしい?』 始『ああ、そうか。まだあの頃は隼は生まれていたなかったな』 羽をしまい、二人で木の枝に腰を下ろした黒と白は、遠目できびきびと仕事をする春をみながら、昔話に花を咲かす。 始『俺が生まれてすぐあいつと会ったんだ。お互い子供の頃だ。そのころのやつらが今生きているとしたら、いまはみんなジジババだ。新や陽たち天族魔族たちがまだ生まれてないほど昔の話だから、隼もしらないだろうが。 あの頃の春はやつのみなりをどうこうする者がいなかったせいで、髪はボサボサ伸び放題。お互い生まれたてのこどもであまり歩くのもうまくないのに、 あいつはふわふわの髪を伸ばし放題で、歩く毛玉のようだった。それでよくこけていて・・・』 隼『ふふ。春にもそんなころがあったんだね。 あ、そうか。それでこの間、陽が毛玉みたいな春がどういうのかってきいてきいたんだね。 たしかに。いままでみたいな雰囲気を鋭くみせていたあのストレートの髪型の春を長く見ていると、最近のフワフワの春のイメージはわかないよね』 始『そういうことだな。俺が始めてあいつと会ったときは、もうすでにくせっけだった。 いままで奴の部下たちの頑張りであのストレートを保っていたらしいが。 春を着飾り・髪を整えていた部下たちの腕には感服だ。あの強力なうねりとアホ毛をよくぞストレートにできたものだと。な』 隼『そうだね。春の髪ってすごいよね。ここだけの話、あのハネ毛で下手したら世界のシナリオが壊れるらしいからね』 始『は?』 隼『ふふ、なんでもない。脱線させちゃってごめんね。 ところ始は僕に何か用があったんじゃないかい?』 始『ああ。そうだ。その春の髪型が変わってから、“勝利”のやつらがコソコソなにかをしてるんだが。隼はなにかしらないか?この間も――』 始『“勝利”の三人組が道端でキャンキャン騒いでるから何をしているのかと声をかけたら、何かを言おうとした春の口をふさいで剣介と英知が春を連れて脱兎のごとく去っていったんだ』 隼『ん。おやおや。“勝利”というと春がなにか動きだしているってことかな』 始『だと思う』 隼『でもそれなら安心じゃないかな?』 始『あんしん?』 隼『彼らは 《第7セフィラNetzach(ネツァク)》“勝利”だよ。例えこれから何かが起こるのだとしても、それに彼らは勝つよ』 隼『勝つために動く、導く。それが彼らの役目だ』 始『そう、だったな。心配は無用だったか』 隼『うん。・・・・の、わりにはまだ浮かない顔をしてるね始』 始『ああ、実は問題があって』 隼『僕でよければ聞くよ』 ガシッ 始『ぜひきいてくれ』 隼『・・・えっとこの手は何かな?』 始『なぁ、隼。きいてくれるよな?』 隼『あ、あれ?なんで僕の髪の毛掴んでるのかな?』 始『そんなものお前が逃げないようににだろう』 隼『んんんん!?』 始『聞いて、くれるんだよな?(ニッコリ)』 隼『な、なんだか嫌な予感するよ!』 始『これについてはずいぶん前から誰かにとことん話したいところだったんだ』 隼『あ、聞くっていったのはやっぱりなしで・・・・あああああああああぁぁ!!さ、さらに髪をつかむのはやめてくれるかなぁぁぁあ?!え?なにこれ?始が近い!ご褒美いぃぃぃ!!!!って、いたたったたたた!!!!』 始『まぁ、聞け』 隼『なんでそう必死になるかな!?』 始『実はな』 隼『か、肩を抑えるのやめてくれるかなぁぁぁぁ!?あ、はずれる!?肩がぁぁぁあ!!』 始『ああ、きいてくれるのか。そうかそうか』 隼『だからそれは取り消しで、ひぃ!?』 始『きいて、く・れ・る・よ・な・?』 肩をガシリとつかまれた隼は、もはや全力で頷くしかできなかった。 始『まぁ、勝利が何かしようと構わないんだが。問題は春だ』 隼『春?』 始『ああ』 始『隼は、いまあいつの髪の長さどれくらいあるかしってるか?』 隼『地面には端っこの方がついていたよね』 始『そう。それだ。ひきづるぐらいあるんだ』 隼『んんん?それがどうしたんだい?髪が長いのはなにも春だけじゃぁないだろう?僕もほらこんなに長い』 始『深刻な話だ』 隼『え?どこが?』 始『隼は春の特性をしってるだろう?植物を操ってると思われてるアレだ。正確には植物が勝手に奴に絡んでくるだけだが』 隼『そうだったね』 始『それが、あの髪型になってから悪化してるんだ』 隼『!?そ、それは・・・・・・たしかに。とても深刻な状況だね』 始『だろう』 隼はもともと管理者側の存在だ。 そのためこのオリジン世界の中で蔓延る“春は植物系能力者説”という勘違いをしていない。 そもそも春を中心に植物たちが活性化する正しい理由を知っているのだから、勘違いの仕様がないともいう。 そもそもこの世界は“生命の樹”の意思と、そこから生まれた天族魔族たちの力や想像力、イメージがもととなって、物体ができあがった世界である。 つまり管理する者たちが生きるこの箱庭の世界のすべての構造物、生物に至るすべてが、天族魔族たちの望みにこたえてできた“生命の樹”のイメージによる産物なのだ。 ここは“生命の神”の夢の中。 “生命の樹”が支える箱庭。 すなわち“樹”そのものが台地の代わりをなしているともいえる。 その空間において、植物の根は“生命の樹”と連結しているといってもいい。 だから“生命の樹”により近い存在である植物たちが、“生命の樹”と同じ気をまとう春をめがけて群がるのは当然ともいえた。 始『俺が言いたいことはもうわかるな』 隼『意外と強靭なんだよねぇ、春のこぼれる力の残滓を吸い取って成長するあの植物って』 真面目な顔で頷く始に対し、隼は苦笑を禁じ得ない。 そりゃぁ、春に群がるのも、植物が急成長するのも仕方ないというもの。なにせこの世界の本体である神と同じ気配を春は垂れ流しているのだ。 もっとも“生命の樹”に近い存在である植物たちがそれに反応してもおかしくはない。 ただし、“それ”が悪化しているなると話は別である。 隼『髪の毛に魔力が宿るから長く伸ばした方がいい――っていうのは、真実じゃぁなかったはずなんだけど。あれ?やっぱり長くした方がいいのかな?』 始『お前も混乱することがあるんだな』 隼『ちょっと僕も春のことはよくわからないなぁ。あの子、ちょっと人知を超える不思議なことあるから』 隼『・・・・・・・・ねぇ』 始『なんだ。と言いたいところだが“気づいた”か』 隼『僕の勘違いだったらいいんだけど』 始『たぶん勘違いじゃぁないだろ。言ってみろ』 隼『現在進行形で!今まさになんだけど』 隼『勝利の子たちが総出で攻撃を仕掛けているあの3階建ての遊技場をまるっと二つほど飲み込んだ巨大な草の固まりって、あそこでやっている今のイベトとかなにかの演出とかじゃなくて。もしかして』 始『髪が伸びる前にはなかったレベルだろうあれは?巨大な草の包囲網とか見事なものだ・・・・・・・・どうしろと?』 隼『はるぅー!!!!!!!!!!!!』 * * * * * 春『ああ、助かったよ。ありがとう始。に、みんなもね』 英『春君!春君!はるくぅーん!無事で!無事でよかったぁ〜(涙)本当によかったよぉ〜・・・ぅえ〜きみが・・ぐす・・というか世界は無事?いま、俺達生きてる?こ、こわかたぁ・・(号泣)』 剣『心配、したー・・・・はぁー・・しんどい』 ボロボロのよそおいにぐったりとした6人は、荒れ果てたイベント会場の真ん中で膝をついてぐったりとしている。 中でも最もよろよれなのは、春だ。長い髪がところどころでからまり鳥の巣のようで、新しく新調されたはずの衣服はところどころ破れ、部分てきに髪の毛ともにチリチリと焦げている。角や髪を飾っていた花はすべて無残に散っているか、潰れ、原型がない。 穴が開いたりこげたり裂けたり、煤けたよそおいで、地べたにしりもちをついている春は眉をハの字にして苦笑を浮かべると、なんだか泣きそうな顔をして空を仰ぎ見ている。 その横では同じように煤けた英知が号泣しながら、春にだきつきその無事をたしかめている。 ガキン!と音がして振り返れば、英知の言葉に賛同しながらいち早く視界の隅にうごめく緑を剣で切り裂く剣介。「うぉりゃぁ!」といきおいこんで剣介はこれで最期とばかりにうごうごとうごめく太い緑の植物の蔦を剣で薙ぎ払うと、剣を地面に深々とつきさし、そのまま杖代わりによりかかるや、ぐったりしてしまう。 剣『・・・疲れた・・・げっ。俺の剣みてよー。あの植物のせいで刃がボロボロ!なんでこんなに植物の強度が上がってんだよぉー・・・もう、だるい』 グ『やはり。髪、ですかね。切りましょうか?』 グリは腰にいつもさしている二振りの棒(ステッキ)をとりだしひとふりすや、剣よりも大きなハサミが彼の腕の中にあらわれる。それをジャキンと光らせているグリからは、普段の穏やかな雰囲気が消失し、何とも言い難いニコリとした黒い良い笑顔を浮かべている。 隼『はる春春春・・・大丈夫?生きてる?生きてる?』 オロオロとそれはもう不安そうに声をあげている隼は、手にしていたクリスタルの美しいステッキを消すと、泣きながら春にかけよる。 しかしこちらも大天使という役目が嘘のように、手入れのされた髪の毛は飾り止めを失いボサボサで、すでにあちこち煤け羽は痛み、羽をしまう気力もないのか、美しいはずの六羽までボロボロになっている。純白の化身とも常に言われていた隼の美しい姿は今はない。今の彼は白くはなく、植物の液体がかったのか緑色の染みと埃のせいでなんともいいがたいまだら色に染まっていた。 はぁーーーーーっと、それはそれは誰よりも重いため息をつき、乱れた髪を手櫛でなおしているのは、現在この世界で一番力を持つ魔族。始である。 始でさえ顔は泥だけ、こちらもつややかなはずの六翼が一部逆立ったり煤けたり、その長い爪は謎の液体で固まって酷い有様である。 かわいそうなほどにみんながみな満身創痍でボロボロであった。 疲れをみせつつ始が指をパチンと弾けば、キラキラと光がこの場にいる者たちを包み込み、剣介の剣からおのおのの衣装、羽までが見事な再生をとげる。 さすがに春の髪を飾っていた花びらだけはすでに命が散ってしまった後でどうしようもなかったが。 それに全員がようやく肩から力を抜き「ふぅ」とばかりに息を吐き出した。 春『ありがとう始』 始『・・・・・・・・で?』 春『そう睨まないでよ』 始『・・・おい春、なんださきほどのアレは?俺の力がとんでもなくもっていかれたぞ』 何がどうしてこうなったかというと、この世界の娯楽の一つである定期的なイベントがあったのだ。 この世界において、大きなイベント・企画や計画案などは、“勝利”を通さなければ許可が出ない。 なぜなら基本的に失敗を許さないのが"勝利"であるため、イベントの成功のために今回も尽力を尽くして運営側と確認をしていたのだ。 しかし天族魔族関係なくひらかれる月ごとのこの祭りで、とんでもないものがとんでもないことになったのである。 春『知っての通り、明日はここでお祭りがある。オレたちは明日のために事前に運ばれた展示物たちの警備を担当してたわけだけど』 始隼『『けど?』』 春『新種植物ノ品評会トカキイテナイヨー』 始『ああ、なるほど』 隼『納得』 グ『この企画もすでに何十回目なので、本来であればなにごともなく開催されるはずだったのです。が・・・』 剣『ほんと死ぬ(遠い目)』 英『俺は明日のために植物たちが枯れないように水の膜を周囲にはる役目だけのはずなのに・・・・こんなはずじゃなかった。もう柊羽と双子のところに帰りたい。うち帰って癒されたい(遠い目)』 始『だいたいわかってきた』 隼『そ、そうだね(苦笑)。でもどうして会場の植物だけ急成長したんだろう。髪が伸びたからといっても、春があるいてるだけじゃぁここまで急成長したことないよね?・・・・いちおう?』 春『うん。ないね、いちおう“まだ”』 グ『ああ、それなら』 剣『変な植物が他の植物をのみこんで、この会場全体の植物の性質が変化しただんだ』 英『あげくその植物たちが春くんめがけて・・・・・っというわけでね(苦笑)』 始『ほぉう』 隼『変な?』 春『はぁ〜・・・・なんというかね。どっかの誰かが、吸血植物の改造に成功したみたいで。品評会に“魔力吸引”植物がでてたんだよ』 隼『質が悪いねそれは!?』 始『それでか』 春『ふふ、オレね』 緑の急成長も止まり、汚れもおち、ずいぶん落ち着いた彼だったが、その疲労具合は目に見えてあからさまだ。 春などは苦笑を浮かべて答えていたのだが 春『・・・・吸ワレマシタ。ハルサンハモウ・・・・_(:3』∠)_』 笑顔を浮かべたまま、けれど真っ青な顔をしており、話しているさなかにそのままバタンと目を回して倒れてしまった。 あの顔色と状況からして、なんでこいつまだおきていられるんだろうと思っていたメンバーたちからの慌てる声は最早ない。 かわりに、あきれたようなつかれたようなため息が重なった。 始『・・・よく、あれだけの植物に魔力を奪われて生きてたなコイツ』 隼『まぁ、春だからねぇ〜(苦笑)』 剣『うん。春さんだし』 英『春君だし』 グ『やはり髪の毛を・・・』 新『え。品評会が中止?俺の植物がひとを襲った?えぇ〜なんですそれ』 『『『それはこっちのセリフだよ!!!』』』 新『あ。やっぱり水の代わりにひたすら魔力だけで育てたのがまずかったか?うーん謎だ。春さんの家みたく綺麗な植物を育てたくてですねぇ。ようやく咲いたとおもったんだけどなぁー。ちぇ』 春『・・・コワイ。怖いことしてる子がいる。怖い。ショクブツコワイアラタコワイ(ぶるぶるぶる)』 * * * * * 隼『始もいなくなったし作戦会議といこうか!』 剣『つか、始さんっていた方がいいんじゃ。凄い戦力になりそう』 春『それはだめ。始の誕生のために世界を一つ壊したなんて知られたら、始がショックをうけちゃうかもしれないし』 剣『お、おふぅ・・・』 グ『世界をひとつ?・・あの、僕がここにいても?』 英『あ、今回はグリも参戦でいいの?』 隼『やむなくね。もうこうなっちゃぁ世界の危機だよ!協力者は多い方がいいからね』 グ『よくわかりませんが、宜しくお願い致します?』 春の館に集められたのは、始を抜いた隼をはじめとするイベント会場巻き込まれ関係者だ。 隼に視線をむけられ春がうなずけば、館中に結界がはられる。 それは何人たりも立ち入りを許さず、始の術でさえもすべてを拒絶するほど強固なものだ。 バサリ!と隼の白く大きな翼が広がる。 隼『それでは、はっじめるよ〜!第3回世界を守るぞ談義!!司会はこの僕!隼がお送りいたします』 エアマイクを手に、隼がまずはグリに状況を理解してもらおうと、軽く春のことを語りバトンを春へてわたす。 その際に春がじつは魔族ではないときかされたグリは驚きに目を丸くしていたが、春が幻術をとき角が消え、白い2対の四翼と黒い翅をみて、ようやく納得したような表情を見せた。 ![]() ![]() グ『なるほど。だからやたら植物が成長したんですね。植物は“生命の樹”にもっとも姿形が近がゆえに呼応しやすい、かつ植物の根はすべて“生命の樹”につながっていますし』 英『さすがグリ』 剣『グリ、冷静すぎじゃね?』 グ『いえ、一応僕も驚いてはいますよ。でも姉さんの制御を失敗したビックリ特大魔法でとある台地が焦土と化したあれをみたときより驚きは薄いですね。いままで春さんが植物に絡まれてるのはよく見てましたし。むしろこれでモヤモヤしていた部分が取り払われて、春さんに関してはスッキリしたぐらいです』 隼『あ、あれねぇ・・・』 春『あったねーそういうことも。たしかあのときは“王国”側にすごく怒られたよね。彼らの管轄内だったから』 剣『・・・あの大規模災害(gkbr)。この箱庭の1/6が焦土と化した・・・・ん?あれ?そうすると春さん、よく無事だな。この世界って春さんの夢のなかだろ?本体とかに影響なかった?』 英『はっ!?そういえば』 グ『あ・・・すみません姉さんが(汗』 春『大丈夫大丈夫。あれくらいなにも影響なかったよ?二日後には森にもどったのがその証拠♪』 隼『本体に影響があったら今頃世界が傾いてるよ(苦笑)』 剣『それもそうだ』 英『だね』 グ『です、ね』 夢の中だからねと笑う春に、グリをひっとうに安堵のため息を吐いたのだった。 隼『さて、そろそろ本題にはいるけど』 パンパンと手をたたいた隼に視線が集まり、春を抜かしたメンバーたちの表情が真剣なものに変わる。 隼『で、結局のところなんで最近春はおかしなことになってるのかな?』 グ『ですね。春さんが生命の神だとしてもさすがに最近の植物の成長は異常すぎるかと』 剣『それなー』 英『うん。気になるところだね』 剣『思い当ることって言うと、髪?やっぱり髪の毛?』 グ『いっそのこと僕ぐらい切ります?準備ならいつでも』 春『こ、こだわるね髪に』 ステッキをふるう準備は抜群だと、グリが杖に触れるのを顔をひきつらせた春があわててとめる。 春『髪の毛のせいじゃぁないから、みんなおちついて。 これはね、うーん・・・なんていうのかなぁ。 本来の翅をすべてだしても普通は髪の毛が伸びたりはしなかったはずなんだよね』 グ『つまり?』 英『え、なんか意味深!?ちょっと嫌な予感が』 春『“本体”の方で何か“力がゆらぐ”ようなことがおきた――んじゃないかなぁとおもう。ほら、オレはあくまで本体の一部の意識をうつされただけだし。本体の情報はないんだよねぇ。あ!本体はオレのこともこの箱庭のことも全部把握してるよ』 『『『『・・・・・』』』』 隼『きいてないよ!?』 春『え?なにを?』 隼『そこでぼけないで春!ちょっと待って。まずい。まずいよ春。ねぇ、それいいの?“外”大丈夫?!僕らここでのほほんと暮らしてて大丈夫!?戻った方がいい?本体に戻った方がいい?!ねぇ、どうしよう!?ごめんね始!世界の方が大事だから、僕、君を置いて戻らなきゃ!』 春『え〜そんな大したことじゃぁないって。おちついておちついて』 隼『おちつきすぎだよ春!?』 春『だって』 『『『だって?』』』 春『どうせ運命の女神がまた乗り込んできただけだと思うよ?』 春『あ、本体から連絡きた〜。 [今度みんなを“あっち”に顕現するから、ぜひ女神を追っ払うの手伝ってほしい]――だって。 よろしくね(*´▽`*)』 『『『『!?』』』』 【前世だとこんな感じ】 ![]() |