外伝 ・ も し も 話
[花悲壮] → ツキウタ



【お題】 隼さんが喚んじゃった♪ C下

<今回交わった世界について>
・原作よりの世界
・字春と魂だけ入れ替わった獄族の〈はる〉のいる世界

<表記について>
※原作寄りの世界の住人・・・「 」
※召喚された側の世界の人々・・・『 』

洋服にこだわった!






その世界では、“願い”は力にそのまま変換される。

そんな世界で、歴史の過去に沈んでいた人間たちも現在を生きる者も含め多くの者たちが「あたたかな春という季節」を望んでいたなら。
「季節を取り戻す」ことで「世界の再生」を多くの者たちが願っていたなら。

その“願い”の力はどれほどだろうが。
その“力”秘めた鍵は、どれほど巨大な力を持つことになるだろか。

それだけの力を秘めたものがあるのなら、“何でも願い”がかなう――そう、人間が考えてもおかしくない。

「その願いの鍵を手にする君自信の願いはなんなんだい?」

そうとわれ
“鍵”の保持者はうっすらと笑みをたたえた。


俺の願いか?


不敵なえみをうかべる別世界の始は、それをきかされ一寸も考えることなく即答した。





『はるのベールをはがす!!!』





「「「おいいいいいいいぃぃ!!!!!」」」



ドヤ顔で告げられたそれに、この世界の常識を持ったアイドルたちが激しくツッコミをいれたのだった。


始『太陽だ。太陽があるからはるがベールをするんだ。はるが楽しく外を歩けないのは俺がいやだ。よし。太陽が出ないように風をあやつる機械をつくって雲と淀みを薙ぎ払う装置を作ろう!そうすればはるがベールをしないですむ!いや、いっそのことはるがちょっときにしてるあの痣が見えないように周囲に幻影をかけるような術をつくるべきか。それともはるが傷つかないようにもう“願いの力”も弾き飛ばすような防護術を・・・ぶつぶつぶつ』

衛『うわぁ〜ん!変態ちっくにきこえるぅー。こんな人間に俺たちの はるくん まかせたくないぃ〜!』
朏『はぁ〜。これだから睦月は』
昂『第二世代の獄族から願いをとったら、“核”がなくなるのと同じだから死ぬのでは?』
葵『はじめさん。どうか はるさん のための(えげつない)結界をつくるより、まずはおうちの床を新調してください!!いまの研究成果を発表するだけでおうちもまるっと修繕できますから!』
始『いや、床板を買うぐらい金があるなら研究費に・・・』
朏『だから!!その思考回路をやめろ!!お前もやはり睦月だったか』
新『・・・この場合、そのうち自分の服まで売って研究費につぎ込むまっぱな睦月とか、そのうちでたりしません?睦月一族ならやりかねないような・・・いやー露出狂?あの美人一族でまっぱ…あーいやだー!それだけは!!』
葵『やめて あらた!』

「え〜そちらの世界の睦月の概念て」

朏『王族誘拐犯』
新『奇人変人集団』
昂『災厄』
葵『研究中毒』
衛『え、えっとお化け屋敷の住人かな』

「「おふぅ・・・」」







【喚ばれちゃったよ♪ C 太極伝奇〈はる〉下】







異世界の黒年長二人を寮に連れ帰り、隼の部屋で事情説明が行われた。

事情をしるものは少ない方がいいだろうと判断した隼が、他の者は招待せず、“呼んじゃった”さいに居合わせた陽だけをこの場に残したまま。
陽は逃げたがったが、もし隼一人の手に負えなくなったなら他の年長組をすぐ呼ぶための助っ人として残された。
もちろん応援を呼ぶかもしれないことは、あちらの〈はじめ〉には承諾済みだ。
案内され促されるままに〈はじめ〉が〈はる〉を抱き上げたまま座り、その正面に隼と陽がすわる。

『あいつらと同じ“アイドル”をやっているお前たちの話ならば、春の守護が来るまでならきいてやってもいい』

きくだけだ。
手助けはしない
まぁ助言くらいはできるかもしれん。

そう言って〈はじめ〉は、大切なものに触れるように、膝枕状態の〈はる〉の髪を優しく撫でる。

〈はる〉が被っている衣は、表情の変化や顔色などがよくわかるほどに薄い。
特殊な加工(術が仕込まれているとか)がされていて、太陽に弱い獄族のために作られた光よけらしい。
その薄いベールの下にある表情は未だにピクリとも動かず、整ったそれは人形のようでさえある。触れられようが体制を変えられようが、現れた当初から意識のないアチラ側の〈はる〉が目覚める気配は全くない。

隼は生命力がなく寿命が迫っている異世界の『春』と出会ったばかりだった。
そのせいで、青白い顔で意識のない〈はる〉に思わず不安を覚え、むこうの〈はじめ〉に声をかける。

隼「そっちの春は大丈夫かい?なにかこちらでできるきとはある?」
始『カーテンをしめてもらえるか?はるは他の獄族より光に弱い』
隼「ああ、ごめんね気づかなくて」

隼が薄手のレースと厚手のカーテンをしめると、〈はじめ〉は明らかにほっとしたように肩から力を抜く。
他にも聞きたいことは山のようにあったが、窓閉めから戻った隼は「まずは」と〈はる〉がどういう状況なのか尋ねた。

始『世界と切り離された衝撃に耐えきれなかっただけだ。
このくらいであれば、元の世界に戻ればいずれ目覚める…はずだ』

世界と切り離された衝撃。
それはいったいなにがどうつながってその意味になるのか。

深くかかわるつもりはないとあからさまな態度の〈はじめ〉をまえにしてしまうと、うまく質問をまとめてそれを口の上にのせることはできそうにない。
陽からすると、この緊張感はなに?!もう勘弁してくれ〜。といった内心からか、寒さとは別に若干顔が引きつっている。

隼「え、えーっと、二人はどうしてこの世界に?」
始『それはこちらのセリフだ。なぜ喚んだ?この世界では今何が起きている?はるに何を願った?』
隼「え?願い?」



始『お前たちの願いはなんだ?俺たちの世界を壊してまで望むものか?』



隼「不慮の事故だった――そう言っても信じてはもらえなさそうだね」
始『こいつを限定して呼び出そうとしたんだ。それ相応の事が起きていると考えて当然だろう。それで?なぜよんだ?』
陽「はるさんを限定?」
隼「ん?そっちでは、彼をよんでしまったらなにか大事が起きてる証なのかい?」

始『まさか。わからないで〈はる〉をよんだのか?』

隼「わからないねぇ。本当に不慮の事故だったんだ」
始『・・・なんて厄介な事故を起こしてくれるんだ』

険しい顔で、頭痛をこらえるように手で顔を覆った〈はじめ〉に、隼も返す言葉が浮かばない。
だが、彼らをこの世界に喚んでしまったのは、本当に不慮の事故だった。

なんでもできるし何でも知っている魔王とはいえ、できることできないことはある。
今回のはできないことだ。


そもそも隼は寒さに耐えかね、「早く春が来ないかな」とつぶやいただけだ。
そのただの呟きが、何かとつながってしまった。
そして呟きが言霊となり、“連なる者”を引きよせた。


これはひとりで対応するのはまずいのではないだろうか。

隼がせめて陽にも意見を求めようと、情けない顔のまま視線をむけたところで、陽はさっと視線をそらすとさくっと立ち上がる。
救助を呼んでくれるのだろうかと期待してみていれば・・・陽は場の空気を読み、キッチンの方へ向かいお茶の準備をはじめてしまう。
陽からしたら、これはまだ「SOSを呼ぶ段階ではない」ようだ。

隼(よ、陽!!逃げないで!僕はどうしたら!?)

キッチンへ救難信号を目戦だけで送るものの、嫌そうな顔をした陽が首を横に振るばかり。


始『はぁ〜・・。』

隼「!?」

重いため息が聞こえ、室内の空気がさらに重くなる。
びくつく隼が、〈はじめ〉からの次の言葉をまっていると。

始『それでおまえたちの望みは何だったんだ?』
隼「ないよ!僕がそっちの〈はる〉を呼んでしまった原因かもしれないけど。その・・・残念ながら、なにも望んではいなかったんだ』
始『は?』
隼「本当に偶然なんだよ〈はじめ〉。こ、この世界は魔法も術もなければ獄族もいない、争いもなくて、今は平和だし!あ!でもふたりが無事帰れるよう力はおしまないよ!」

始『なんてことだ』

隼「えっと、さっきそっちの世界を壊してとかどうのって言ってたけど。そっちの〈はる〉って」

何か役割でも与えられてるのかな?
僕らが撮影したときの世界観設定だと、“そういった個人への特殊な設定”なんてものはなく、ただの獄族だった気がするけど。

そう、この世界における撮影太極伝奇の“設定”を思い返し、かつ何度か《呼んじゃた》別の世界の自分たちがあっさり帰っていったことから、ことを軽く考えていた隼は不思議そうに首を傾げる。
その様子に「こちらの獄族は基本役目をもつ」と〈はじめ〉が、首を横に振る。



始『はるは鍵の獄族――世界の要が一柱。季節を司どる者だ』



隼「せ、世界の要ぇ(ヒクッ)・・・・まずいねそれは」
始『そうだろう。まずいだろう?いままでの自然災害と睦月の一族が出した損害だけでも国の機関は赤字なわけで。人の業のせいで太陽が滅多にでないから作物は常に不作だし。
はるの契約者である俺も損害賠償の一部を負担する義務はあるだろう。
はぁー無理だ。災害級の賠償責任なんて、年中財政赤字で隙間風しかないオンボロ邸に住んでる睦月一族の財政難もやばいのに、更に賠償金とか。おれはいったいいつになったら実家の床から穴をなくすことができるんだか。たまには障子に紙が貼ってある光景とかみてみたいんだが。・・・無理だ辛い。はぁ〜』

自分たちが知る太極伝奇の設定を思い浮かべていた隼は、くらい表情の〈はじめ〉の言葉に、自分の想像とかけはなれた答えばかりだったため内心悲鳴を上げた。

あと、なにか睦月家の概念がこちらの世界と違いすぎる件に関して、激しくツッコミを入れたかったが、彼はツッコミではなくボケであったため、どこで何を発言していいかわからず、ただただ混乱した。
ついでにいうと、一番彼を混乱させたのは、向こう側の“睦月家”に関してである。
「貧乏極まった睦月ってなに!?」と、まったく想像出来ないことを言われて、「そもそも僕貧乏がよくわからない」と目をまわしていた。

そう!そうあれだ!!睦月のお家事情にあたいする何かが聞こえた気がするが、あれは錯覚!なにも聞こえなかった!!――隼はついに考えることを放棄した。

だが、隼は見てしまった。

隼「!?・・・あああぁぁぁ、な、なんてことだ。ぼ、ぼくの推しが」
始『ん?』

睦月始を至高の推しとし、彼のおっかけもといファンを自称する隼は、自分の知らない衣服に身を包む〈はじめ〉を無意識とはいえガン見してしまったのである。
そしてファンというフィルターさえ凌駕した現実を目の当たりにした。
彼は気づいてしまったのだ。
あまりのことに、目に涙をためてくちもとをおさえるほどの現実を。

なんということか。
よく見ると、向こうの〈はじめ〉の衣装はとてもボロボロヨレヨレだったのだ。

隼は思わず瞬きを繰り返し、あげく目まで擦って、カッ!!と目を見開いて二度見した。いや、五度見はした。
そして隼はさらに気づいてしまった。

紺色のブラウスのような下着は、撮影と同じように襟部分がレースのようにひらひらしているのかと思っていた。しかし目の前の〈はじめ〉の襟元のひらひら部分はスミがまったく縫われていないではないか!?つまりほつれすぎて首回りの生地が裂けたあげくレースのダンダンのようにみえているのがのぞいているだけなのだ。
しかも一番上の赤い服なんて胸元がやけに大きくV字にひらいているかと思えば、あそこまで――裂けてるぅぅぅ!!
スリットもしかり。
「マジカヨ」と隼らしくない思考が脳内をかけた。

そのまま視線をあげて〈はじめ〉の顔を見れば、こちらの世界の睦月始と同じくどこの物語の王家出身ですかとばかりに神々しく尊く凛々しい抜群の顔立ちがそこにある。

だがその美麗な顔を覆う黒い髪は、あまり艶がない。え?あの睦月始の髪の毛がパサついている?
しかもあれは!あれはっ!!!!アイドルには絶対あってはいけない、否、睦月始にあってはいけないはずの―――枝毛では!?やだ。僕の始の顔の真横に二股に割れた髪の毛がみえるとか!!!しかも・・・むしろちょっとボサッとしていないか?え?こ、この髪の乱れは時空移動の影響だろう!?違わないと誰か否定してくれ!!!

隼の心は荒れた。

隼は己がみたものを否定するように、再度、二度度見した。

おかげでみたくない新たな事実に気付いてしまった。
次に彼が気づいたのは、彼の衣服の布の質だ。

肩や袖の面積の多い布は、てっきり絹でできているから透けてるのかと思っていた!が、それは間違いである。 どんなに品のよいものにみえようと、それは〈はじめ〉の顔立ちがよすぎるための補正効果である。
そう、あれはただたんに着すぎたあげく部分的に布が薄くなっているだけ―――ただの貧乏の証であった。

しかも〈はじめ〉の服は、みればみるほど酷い。 全体的にあちこちやばい。はっきりいうと、もう寿命をごまかしているとしか思えないほど酷かった。

ほつれと継ぎ足し布がいっぱいある。隼はこれをオシャレでとちゅうから布の柄を変えているのかと思っていた。 隼は思わず顔をおおってうつむいた。
だがオシャレで布をたくさん使うようなゆとりがあったら、睦月家の障子に障子紙が一面に貼られているはずである。

帯などは撮影では金縁だった部分が、様々な柄の入った縁となりがとても高級感にあふれ綺麗だとおもっていたが、なんてことはない。 ほつれをそこらにあった布で端に沿うようにおおって補修しているだけだった。
黒い部分の“アレ”。部分的に角度を変えると同色でありながら見事な刺繍模様がズラーっと浮かぶ地模様がきれいな黒生地…とおもいきや、 綺麗に穴をふさいだあとである―――この段階できっと当て布にするべき予備の布さえなくなった。

貧乏睦月ここに極まれり!!!


とはいえ、だれがこの世界における頂点に君臨している睦月家の、真逆の姿を想像し、受け入れられようか。
あまりにこの世界の概念とは真逆(だがきらびやかに見える)の〈はじめ〉に、隼は自分の目と頭を疑った。

悲しいかな。何度も瞬きをするが現状はかわらない。

隼はついには頭を振り、自分が今見た“睦月始”の姿の〈ナニカ〉を「なにもみてない」と思いこもうと努めた。
そう。あんな貧乏そうで、貧相で!いかにも自販機のおつり口や自販機の下をあさって小銭を探していそうな“睦月始”なんて、いるわけがない!あれは妄想だ。と――。

隼は懸命に自分に言い聞かせたのだった。

だが、しかし。
現実は無情である。

あれもまた現実だ。


隼「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・無理ぃ・・・しんどい(涙)こんな現実受け入れたくないぃぃぃぃ・・・・ぼ、ぼくの美しいはじぃ・・・あぁぁぁぁぁぁ・・・グスグス・・ぼ、ぼくはもう、無理だ。こんなのみたくない!! もうむりぃ〜グス・・グスッ・・・」

陽「まぁ、二人ともおちつけって。とくに隼。なにがあったかしんないけど、お前が一番落ち着け。
春さんや海がいれるみたいに美味くはないだろうけどさ、お茶でもどうぞ。あ、そっちの〈はじめ〉さんは中華系の服着てるからもしかすると茶の味があわないかも」
始『いや、それなら大丈夫だ。大陸にしばらく旅に出ていたから茶の違いも慣れた。これは大陸のものに近いな』

そして、陽は〈はじめ〉の衣服の違和感に気付いてはいない。

荒ぶっているのは隼の心のみ。


そんな荒ぶる心に絶妙なタイミングで陽がティーセットを一式持ってきてテーブルに並べる。
それを飲んで、ようやく隼は真の意味で落ち着きを取り戻した。
涙は何とか引っ込んだ。
だが正面に座るとかわいそうなぐらいの〈はじめ〉の衣服にある縫い目がみえてしまう。隼はそれから意識をそらすので必死だった。

陽「おじゃましますよーっと。っで、なにがまずいんだ?」
始『朏様、あっ。王の側近いわく、〈はる〉は《世界》にとってのアロマてき要因がある、らしい?』

陽「ん〜?どういうことだ?」
隼「っぐ!!ごほごほごほごほ!!!!ごほ!スーハースーハー!・・んん。ごほん。あー落ち着いた。えっとね、つまり春がいれば《世界》は常に気分がいい。癒されるってことだね♪」
陽「(なんでこいつむせてんの?まぁいいけど)・・・ふーん。じゃぁ、そのアロマな春がいなくなると、世界の機嫌がわるくなったり?」


「『・・・・・・・・・』」


陽「すんのかよ!!リーダーズの真顔とか怖いんですけど。え、まじで?
つまりいまそっちの《世界》は不機嫌で、その癇癪のせいで「世界崩壊」につながるとか。え?あれってそういう意味だったり?」


隼「もっと簡単にたとえると、世界はお盆で、お盆が傾かないようにするために何本か柱が立っていると仮定する。柱を1本引っこ抜けばお盆は傾くよね?
っで、そういう柱の役目を果たす存在があちらの世界には何人かいる。そのひとりが向こうの〈はる〉なわけだ。
〈はる〉がいなくなるっていうのは、“そういう”こと・・・ここまで言えばわかるかな」

陽「柱が抜けたらボンはひっくり返る・・って!それかなりまずくないか!?」
始『だから聞いたんだ。その柱たる〈はる〉をうちの世界から引き離してまで、〈はる〉に限定して喚んだということは、叶えたい願いがある。そう考えるのが妥当 だろう?
だから何の事件が起きているのかときいたんだ。世界規模の珍事かと思っていたから、大人しくついてきたんだろう。

・・・・まさかそれがただのミスだとは思わなかったが』


始『帰ったら世界からまた四季がなくなってそうで怖い・・・』


規模がでかい!!と悲鳴をあげながらの陽のツッコミに、〈はじめ〉は重いため息をついて本格的に頭痛を抑えるように頭を押さえうつむいた。

陽「それはたしかにまずいな」
隼「だよね」
始『ああ、非常にまずい』


始『しかもそういった立場のせいで〈はる〉がすでに誘拐・監禁事件に巻き込まれてる。また攫われたなんて知ったら、こいつの守護役がきれてる姿しか浮かばない』


守護役に勝てる存在はいないと若干青い顔をする〈はじめ〉に、陽と隼は言葉が出ない。

この世界において睦月始とは、誰よりもきらびやかで、冷静沈着で。権力も財力も容姿も才能も、そういった全ての頂点にたつために生まれたような存在だった。
それがみすぼらしい格好もあいまってとても疲れ切ってみえる。しかもゲンドーポーズをしてはため息を連発している。


これはもうだめだ。と、的確に判断した隼が、ちゃきりとスマホをとりだし、陽に手渡す。
陽は無表情のままそれを受け取り、高速で「隼の部屋ヘルプ!まじやべぇ」とうつと、頼りになる年長組に一斉送信をかけた。
スマホは〈ハジメ〉が視線をあげる前には隼に回収された。


隼「えっと、つかぬことをきくけど、むかえってその守護役さんが来るのかな?その守護役っていうのは、春にだけつけられた護衛の事?たかが人間が獄族の護衛になるの?」

始『くる。はるのためなら世界ぐらいあいつは超える!
あと、はるーー柱役は全員獄族だ。寿命がないからな。当然、その守護役も獄族だ。はる達柱は、《鍵の獄族》と言われている。
そいつらを生かすために、そいつらのためだけの守護役の獄族が生まれる。守護役どもは《鍵の獄族》を生まれながらに自分の王だと認識しているから、自分の主たる王以外どうでもいい主至上主義者が多い。主になにかあると、あの温和な〈こうき〉さんでさえ目をカッ!とひらいて殺意むき出しにするぐらいひどい。第三せ、守護役どもが怒るととにかく本気で怖い。
しかも守護役ってのは《鍵》の力の暴走をとめる役目ももっているから、ぶっちゃけ力の扱いにたけていて、《鍵の獄族》より遥かに力が強いやつらしかいない」
陽「まじかよ(顔ひきつり)」
隼「それって〈はる〉が四季を司るってことは、それ以上の力の持ち主が守護役で。今、そのとんでもなく凄い怖いのが、こっちに向かってきてるってことだよね。だってそっちの〈はる〉って、僕からしても凄い力を感じるよ。いや、凄い力っていうか、魂の格がすごい上っていうのだけはわかるよ。それの守護者とかぁ・・・・(ヒュンと魂が抜けていく)」
陽「今、ふと思ったんだけど。“温厚なこうきさん”って、もしかしてGrowthの衛藤昂輝じゃ。そっちの世界に俺達と同じ存在がいるようにこっちにもいるって考えると・・・・え、あいつって怒ったことないので有名じゃ。そいつが目をかっぴらいてきれるとか・・・え・・・こわっ」
始『ああ、あっている。ぐろうすがなにかはわからないが、〈衛藤こうき〉ーー彼もうちの世界にいる。獄族だから俺よりはるかに年上だが』

隼「えっと・・つまり?」




始『この世界の無事を祈る!』




やけにキッパリと、そこはさすが睦月始とばかりにキリリとかっこよくキメゼリフを吐いたのだった。








* * * * *








――その魂は

 世界に愛されている







その体は

 “ひと”の願いを叶えるために生まれ



その心は

 光を渇望し



その血は

 一滴で“ひと”を破壊し



その目は

 すべてを見定め



その涙は

 時を刻む永遠の歳月を語り



その声は

 審判を告げ



その生をもって

 “ひと”は世界に生かされる







両儀を壊した人類への最期のチャンス――それが〈鍵の獄族〉



〈鍵の獄族〉を絶やしてはならない



彼らこそ再生への鍵

その存在があり続ける限り、世界は人類を見捨てない



だからこそ







『誰だい?我が王に手を出す愚か者は――』







けっして〈鍵の獄族〉に手を出してはいけない



手を出したのなら

その先にある“ ”を覚悟せよ











* * * * *

 









『誰だい?我が王に手を出す愚か者は――』







始『ああ、時間切れだな。この世で一番ヤバイ奴が来た』

陽「え」
隼「おやおや。君が守護者かぁ」

ふいに空間が避けると、そこからは大量の花びらとーー
突き刺すような冷気と氷のつぶてがあふれてくる。

吹き荒れる氷のつぶてがやがて風によってあつまると、それは人の形となり、金の目をギラギラとひからさせて、長い数珠を首から下げた獄族が姿をあらわした。


『人間ごときが。我らに何用だ?』


地の底から響くような声は本当に彼がいま氷をもとに顕現したのだとわかるほどに凍えるようなそれで、情のひとつさえうかがえず、今にも自分たちなどこのまま極寒の狂気によって塵とされてしまうのではないか。
陽は吹き荒れる冷気から腕でかばいつつ、あらわれた獄族を見て、思わず横で困ったように笑う隼を見やる。

陽「〈はる〉さんの守護者ってあっちの隼かよぉ!!!!しかも俺らみて人間ごときって言ったぞ!敵視されてる!!!ムリゲ!!まじ無理!ムリゲっしょこれぇ!!こっちでもわけわかんなくて魔王とまで呼ばれてるのに!!!それより格上の向こうの〈はる〉さんのさらに上いく〈しゅん〉とかどうしろと!!!!」


あらわれたのは、獄族の〈しゅん〉だった。


さすがにこれは予想外だったらしく、こちらの隼は苦笑を禁じ得ない。
しかもアチラ側の〈しゅん〉は、敵が別世界の己自信であろうと気にしていない。

言葉選びを一つ間違えると、あっという間に自分たちに死が訪れる。

そんな恐怖に、冷汗が止まらない。


隼「そちらの世界の僕はかなり物騒だねぇ。同じ僕なのにえらい違いだ」
隼『――我が主に手を出したのなら相応に対処させてもらおう。それがたとえ別の世界の“自分”とはいえ』
隼「おや、こわい」

陽(冷汗かいて真っ青な顔してるくせになんで隼はむこうの〈しゅん〉をあおってんだよぉ!?)



氷の化身いや、あれこそが魔王をうわまわる真なる魔王!そんなテロップがでそうな極寒の緊張感漂う中、〈しゅん〉は部屋をさっと一瞥する。
その視線が一か所で止まる。
ソファに座った〈はじめ〉と、そのうえで膝枕をされて眠り続ける〈はる〉をみとがめ、〈しゅん〉はスゥーっと目を細めてた。

隼『さぁて人間ども。我が主に手を出したのだから、その命、すでにないものと覚悟はしていよう?』

ああ、死ぬ前に一つ聞いておこうか。

そう告げる〈シュン〉は、顔が笑っているのに目が笑っていない。もはや蟻を踏み潰すのを楽しむ子供のように、自分たちに向け死のカウントダウンを告げるかのるようだ。

隼『それで?世界の要をうばってまで何を願った?世界を滅ぼすほどの力でも望んだのかい?それとも世界一つでは飽き足らず、別の世界まで手を出そうというのかい? ひとという生き物はどこまで業が深く愚かなんだ。
大きすぎる力は身をほろぼすと、その身をもって知ったのだろう?世界を滅ぼし、天罰をうけてなお学習しないとは、なんて矮小な生き物なんだ。あきれてものも言えない。
ふふ、嫌になるなぁ。本当に人間というのはどこまでも愚かしく小賢しい。
そうだ、ここにいる全員、二度と輪廻にさえ戻れぬように魂ごと引きちぎってくれようか』

その言葉に、傍にいたふたりから悲鳴がもれる。
陽などは隣の仲間にすがり、隼は懸命に強気なようにみせているがその実、すでに涙目になっている。

これは死神の言葉なのだろう。

言葉が紡がれるごとにそこから冷気がこぼれだすようで、体が芯から冷えていく。
〈シュン〉の口からでてくる言葉すべてが、まるで自分たちの魂を少しづつ削って言っているかのような恐ろしさを漂わせている。

陽と隼が顔を引きつらせ微動だにできずにいると、はぁ〜という重いため息が響き、部屋の空気を緩和させる。

始『おちつけ〈しゅん〉。こいつらが次元の穴にひきこまれた俺たちをかばってくれたんだ。敵じゃない』

実際は隼がよんでしまったらしいのだが、たしかにあれはワザとなどではなく本当に事故だったのだ。
なので決して彼らは悪くないとは断言はできないが「そうだよな」と〈はじめ〉にとわれれば、隼と陽は〈はじめ〉の言葉に感謝の涙を流しながら全力で首を縦に振った。
その様子に、〈しゅん〉が興覚めだとばかりにつまらなそうな顔を見せる。

隼『ふーん。〈はる〉の契約者である君がいうのなら・・・“そういうこと”にしてあげるよ。“僕の対”に感謝するんだね人間』

海「こえぇ・・・向こうのお前ガチじゃん(汗」
隼「彼は人ではないようだからねぇ。人間とは感じ方も価値観もなにもかも違うのかもしれないね」

始『獄族はそういうものだ。ましてや鍵の獄族ならば当然だな』















……バタ_(:3」∠)_

力つきた。

この辺から気力なくなったので、続きはダイジェストでお送りいたします。

かきたいところだけかくので、「なんやかんや」はふっとばします。


っと、いうことで。

中間を吹っ飛ばして〜〜〜〜〜
そうしてお迎えが来ました。





突然アイドル世界の皆が集まった共有ルームに穴が開いたよ!
ひょっこり出てきたのは、獄族世界の彼らで・・・。

朏『っと。よいせ。おー、睦月は無事だったっか』
新『はいあおい、手ぇだしてな』
葵『うわぁ!っと。本当に別の世界があるなんて!』
昂『あおいさん、そこでとまらないで!』
衛『わー!と、とまらないで!つまってるから!!』

「「「み、朏さん!?とグロースの!?」」」


朏『あん?なんで俺の名前』
衛『えっと、こ、こんにちわ?ぐるうす?じゃなくてですね、俺、藤村まもるといいます。俺、役目のある第二世代ですので、できれば早く帰らせてください』
昂『まもる…もう少しまともな自己紹介はなかったのか。あ、俺はこうきです』

朏『やれやれ。こいつらはまぁおいといてくれていい。
で、ここはどこだ?なんで春はよばれた?ようやくみつけたうちの末っ子にお前ら何してくれてるんだお前達』

始『えっと、ここは平行世界、だそうです』
隼「そうだよ!あと“よんじゃった”のは本当に偶然の事故で!」
朏『は?』
衛『事故?』
始『驚くことに、この世界は俺達の世界のように危機にせまられてるわけではないそうです』

衛葵『『えええ!?じゃぁどうしてはるくん(さん)をよんだの!?』』

新『ああ、これだめなやつ・・・』
始『俺たちは次元の嵐に巻き込まれたようなんです。そこから助けてくれたのが彼らです』

朏『ほぉー。“あれ”が次元の嵐』

朏『どう思うまもる?』
衛『ええぇ〜。あのニョロニョロした手の群れというか糸の群れがぁ?とは思うけど。うん。まぁ、“そういうこと”ならそれでいいんじゃないですかね』

朏『ふん。はる の“契約者”に免じてみなかったことにしてやるさ。だが次はない。あまりおいたが過ぎるような遊びはするな、とくにそこの“しゅん”』
隼「感謝するよ。肝に銘じてる」

春「いろいろばれてない?」
海「だな」


朏『さて、こっちの〈しゅん〉にも言いたいことがある。
おいバカ〈しゅん〉。お前まで追いかけてどうすんだ。
おかげで向こうの世界は猛吹雪だぞ。はるが起きた時に悲しむだろうな〜、で?お前あれをどうおさめる気だ?』
衛『そうですよ!おかげで俺の里には雹というかつららが降ってくるし! こうくん の作った藤棚が完全凍結しちゃったんですよ!藤守りとしての俺の存在意義が危ないんだよ!』
新『ちなみに しゅんさん の契約者の故郷、いま有り得ない灼熱地獄に見舞われてると よう から苦情があった』
葵『でも!ちゃんとこっちからも術者を何人か送っていますので、そこまで落ちこまないでくださいね!』
新『よう と よる、あと仙郷の住人達がめっちゃがんばってます。と、だけお伝えしておきますね。しゅんさん、帰ったら頑張って怒られちゃってください』
隼『ううう・・・でも はる が心配で』

朏『俺は国にしかしばられてないからいいものの。とはいえ、逆に言うなら国にしか俺の力ははたらかん』
衛『俺は里です』

朏『わかっているとは思うが。はる の第三世代であるお前が世界を留守にされると、あの規模の災害をどうこうできるやつがいねぇ。とっとと帰るぞ』

始『あの、朏さん、まもるさん。今更なんですけど…なんで あおい様 がここにいるんですか?』
葵『え、えっと・・・それは!』
始『はっ!まさか あおい様 が術のサポート役に!?緊急事態でついに才能が開花したとか!?』
朏『んなわけねーだろ。そいつの脳筋具合は今更どうにもならん。〈みこと〉と術者、他獄族総出で結界を維持してるなか、こいつのせいで宮殿の池がなぜかチョコレートになったしな!あおいが動くだけで事態が悪化するからつれてきた。向こうに〈みこと〉がいるから、あおいは道をつなぐための媒介だ。血は濃い呪いとなるからな。帰りはこいつの血と〈みこと〉の血は共鳴するだろうからそれで道を開く。
ついでに〈しゅん〉と暮らしてたって言うあの陰陽のふたりが今は要だ。あいつらがたおれたら、次こそ世界は人間を見捨てる気満々だぞ』
始『なるほど・・・あおい様 がいるのは、しかたない。と』

海「え。葵が脳筋?」
隼「それはまた予想外だね」
涙「っというか、さっきから向こうの はじめ がやたらと あおい を様付けする方が気になる」
恋「どうせ葵王子様とかそういう設定じゃ?」
涙「それもそっか」
駆「それより・・・“ミコト”って(難しい顔)」
春「しっ!気にしたら負けだよ!これは“平行世界の設定”だ」
「「「あ、なるほど」」」
海「お前ら、変な現象に慣れすぎだろ(苦笑)」

始『?さっきからそっちで何を驚いているかわからんが、こっちのあおい様もしゅんも脳筋だぞ。しゅん なんか、なんというか…考えるより殺ってしまえってかんじだしな』

春夜葵「「「ひぇ」」」

隼『そうだねぇ。僕は かい と はる 以外に興味がないからねぇ。ああ、でも はじめ は別だよ。僕の対である君がいないと はる を守れな・・・いっ!?』

ゴイン!!

朏『ったく。これだから第三世代の若造どもはみんな盲目で困る。第二世代以外は目にいれさえしねぇんだから面倒だ。
わるかったなこのガキが。あとでしっかり説教かましておくんでゆるしてくれな。

――まもる』

衛『はいはーい!ではちょっと失礼しますよ〜』
始『たのむ、まもるさん』

眠ったままの〈はる〉を〈まもる〉に手渡す〈はじめ〉。
〈まもる〉は〈はる〉とひたいごっつんこで、獄族の気を調査!診察して眉をしかめる〈まもる〉。

衛『まかしちゃっていいよ〜。ん?んんん・・・ありゃ。ちょいまずいかも?』
朏『どうした?』
衛『これはただのショックによる気絶じゃぁないね。早く連れて帰ったほうがよさそう〜かも?』
隼『僕なら?!僕は はる のための第三世代だ。僕なら はる をおこせる!』
朏『却下ぁっ!!第二世代と第三世代は生まれも性質も違うんだっつぅーの。いい加減学べまっしろけ!この中では何度も言うが まもる が一番の適任なんだよ』
衛『うーん。今の第二世代の中では、俺が一番 はるくん に近い性質なんだけどねぇ。
いつもなら呼びかけるだけですぐ共鳴がおきる。けど、いまはない。
はる君、俺にこたえてもくれないんだよねぇ。理由は、まぁわからないでもないんだけど』

始『それは…魂のせいか?』
衛『そう。大正解。魂がここにはないから俺の声にこたえられるはずがないから当然だよね』
葵『どういうこと?』
衛『はる君の魂をね、“世界”がとらえてはなさいから、アチラ側に魂が残ってるっぽいんだよね。早く連れ帰るのが一番の治療だよ』

隼「!?あれほど魂の力を感じるのにそこにない、だって!?
・・・い、いやぁ、まいったねぇ。これは僕が思う以上にちらの〈はる〉の力が強いようだ。どれほどのものか僕にさえわからないよ。存在が完璧な状態だったら、こっちの世界がパッカーンしてたんじゃないかな(汗)」

朏『ごたくはいい!ならとっとと帰るぞ。
俺達は はる さえ返してさえくれれば、こちらの世界には用はない。そっちの世界も別世界の事情に関わりたくないだろうし、なにより はる に用はない。そうだろう?
それにそろそろ〈みこと〉にも負担がかかる。とにかく帰るぞ!睦月、結界を貼れ。お前と あおい の分だけでいい。それならもつだろう?』
始『わかりました』
衛『びゅーん!とーうっ!ってあっちに還るよ〜。王様とけんすけくん、りょーくんたちが今すっごい頑張ってくれてるからね』

なんやかんやありまして。
どうにか帰還。





〜帰還後〜

『なぁ、まもる。まもる たちがでかけてるあいだにこんなものができたんだけど』

『・・・・なにこれ?』
『さぁ?食べれる、のか?』
『え!?こうくん 勇者だね。これたべるとか』
『おれは遠慮するかな』
『まもるぅ!なにを こうき に食べさせるってぇ!!』
『おちついて りょーた!』
『・・・いや、だから俺は食べないと(汗)』

『・・・・・・あおいさま、あなた、なにをしたんです?』

『ひぃー!!ごめん!!!結界をはるのにみんなの協力をしようとして』

『まて。なんで空にある結界から鯉が流れこんでんだこれ?』
『それなら俺が解説しまーす』
『あ、あらた!』
『じつはですね、あおい が結界を張ろうとしたところ、池が爆発しました。鯉たちは見事に空高くお星さまのように打ち上げられていきました。 そして爆煙が去った後、池はなぜかチョコレートに変化していまして。
そのあとちゃんとした術師が結界を再構築しようとしたんですが、まだ未完成だった結界のすきまから、さっきの爆発で吹っ飛んだ鯉がもどってきまして。ええ、空からです。結界をぶすぶすつきさすようにして鯉たちは弾丸のごとくふってきまして。なぜか大量に。更に開いていく穴に術師があわてたせいで、結界は中途半端なまま。しかも結界の外はご存知の異常気象でして。そのせいで、結界と鯉と池は一気に凍り始めたんです。うちのチョコレートが似合うピンクな恋君じゃありませんよ。ここは重要です。魚の鯉です。
ええ、それはみごとな氷像ができあがるほどで。
ぶっちゃけチョコレートの池と中途半端な結界とふってくる最中の鯉ごとまるっと凍ったんです。それがこのみごとな甘いにおいの氷像の理由です』

『見事でしょう?』

『みごとな連鎖だな』
『いろいろ見事すぎて言葉が出ないよ』

『・・・これだからうちの脳筋どもは!あおいぃ!!!あれほど手をだすなといっただろう!もうお前は結界に触るな!!』
『ひぃ!ご、ごめんなさい朏さーん!!!』

『わぁ……お空の上までのびた鯉の氷像とかすごいなぁー(遠い目)』
『芸術点高いですよねぇこれ〜。ねぇ、はじめさ…』
『よぉし!チョコレートは はる が好きだったはず!睦月調理部隊出動!』
『って、なに先陣きってるんだお前は!!!はる に食べさせるならまずは衛生面の確認からに決まってんだろうが!』
『え、朏さん、つっこむのそこ!?』


『しゃぁぁぁぁ!夕飯豪華!!!!』
『こんな上等魚、市だと高いぞ!』
『何年に1回ありつけるか否かだ!皆、心して調理せよ!』
『揚げ!焼き!そしてお造りじゃァァァ』
『え。チョコレートもいいんですか!やったぁー!!!ひさしぶりの甘味だぁ!!!』

『あ、はじめさん がいつのまにか頂上付近まで登ってますよ!あれは大物狙いと見た』
『氷像に駆け上っていく連中って、ぜんぶ“睦月”か・・・』
『まって!あんな綺麗で繊細そうな線の細い睦月の人たちが、みんな一撃で氷像をくだいていくんですが!なんでっ!?』
『わっ!あの中腹にいる睦月の人、ひと蹴りで中心部の塊くだいた!』
『わぁ〜くだけた氷がきれー(チベスナ顔)』
『しかもほぼ皆さん素手ときている。うわー睦月スゲェ!』
『天まで伸びる鯉の氷像が・・・くだけ、いや解体されていく?』
『職人技ですね〜』
『あ、術つかってるひともいる』
『あれで研究肌の引きこもり一族とか・・・え?どこが?』
『あ!あの包丁を持った睦月の人、凄くない!?なんかおちてる最中の鯉がいきおいよく調理されてますよ!』
『刺身かあれ?いや・・・はっ!?あれはバラでは!』
『氷の像とか、鯉のお造りとか出来上がっていくように見えるんですが』


『あれが“睦月”…』
『うんうん。やっぱうちの世界の“睦月”ってあんな感じだよね』















★★★★★★★★★★★★★★★★★★



【NGシーン1:もしはるが目を覚ました場合の獄族側とのやりとり】

隼『今この場に〈よう〉と〈るい〉がいないことを感謝するんだね人間。あの子らは極度の人間嫌いだ』
春『ふふ。だめだよ、しゅん。《花》が彼らに手を出していない時点で、彼らは無害だ』
隼『我が王がそう望むのなら』

春『それでは。はじめまして。
オレは季節を司る両儀の獄族。こちらにも“オレ”がいるので名前は知ってるでしょうが、立場上、この世界と縁を結ぶわけにはいかないので、名を名乗ることは勘弁してくださいね。どうか〈ツウン〉と』
隼「え!?それって"そのまんま"じゃ」
春『ふふ。意味を理解しても声に出して言わないでくれれば問題はないよ』

隼『僕は獄族のしゅんという。〈鍵〉の守護者で、そこにいるはじめは僕の対だね。
まぁ、君たちには興味も何もないから、君たちも別に僕のことを覚えてくれなくていい。
ああ、そうそう。ひとついいわすれていたけど。

――我が主に手を出したら容赦はしないよ。

それがたとえ別の世界の僕とはいえ、ね』

陽「こえぇ・・・向こうのお前ガチじゃん(汗)」
隼「彼は人ではないようだからねぇ。あまり僕らと価値観が違うのかもしれないね」

始『睦月はじめ。〈鍵〉の契約者』
陽「あ、始さんは普通だ」

海「えーっと、つまりどういうことだ?」
春「天使でもあくまでもないってことはわかるよ」
隼「彼らからすると僕らは敵ってことかな?」
隼『そうだねぇ。 本当に許しがたいよね』

隼『はっきり言うと、僕は人間があまり好きじゃないんだ。
たとえそこの君が姿形が僕の契約者と同じであろうと、そっちの海は僕のかいじゃないし、いますぐにでも君たちを血祭りにあげてしまいたいほどだよ』
春『だめだからね』
隼『こう僕の主が言うから我慢してるだけだよ?』
始『こいつらは人間のように見えるが、獄族という別の種族だ。基本的に獄族は契約者以外の人間に興味がないし、仲間意識も薄い。 みためにだまされて、人間の価値観を押し付けないほうがいい。 こいつらを人間と同じと思わないことだ。 食事もしないし、普通の攻撃では死なない。 親もいなければ、人間のような細かな感情変化をしらず、心をしらず育つものが多い。
獄族は陰のかたまりに自我が生まれた存在だ。 彼らは不死ゆえに、命の重さを知らない。 下手なことを言うと殺されるぞ。 並行世界の自分であろうと、こいつらは容赦も躊躇もしないだろうな』
春『もう。始ってば。オレはすごい躊躇しちゃうよ』
隼『まかせて瞬殺だよ♪』








【NGシーン2:“はる”って生き物はみんな寂しがり屋らしい】

始『春は・・・』
春『オレはさびしがりやだからね。仲間がいなくなるのはいやだよ?あと、人間が死ぬのをみるのも嫌』
隼『そういうところは《花》と違うよね〜。《花》だって誰かの死をきらっていたよ。でも必要とあれば、躊躇なく殺しただろうね。それが仲間であろうとも』
春『《花》もしないよ。言葉では「殺せる」って言うし、事実だろうけど。オレたちが何よりも嫌うのは、《花》もオレも置いていかれることと、独りぼっちがなによりも嫌だからね。大切な子たちを殺さないよ」
始『むしろ二人とも自己犠牲的なまでに守ろうとするだろ』
(だれかを“まもる”ための心を持つのは、それは“あいつ”もはるも同じだな)














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途中で力尽きてほんとうにすみませんでした!

これで「呼んじゃった」シリーズは完結です。
隼を春が迎えに来る伝奇で始まりで、春を隼が迎えに来る伝奇で終わる。
そういう流れでした。

Cのひらがな伝奇は絶対シリアスだと思ったでしょう?
いやぁ、これだけは絶対ギャグ路線爆走のあげく「こい」で終わら気満々でした(笑)
みなさんが楽しんでくれたらなぁと思っています。
長文乱文だったのにここまで読んでくださりありがとうございます。お疲れさまでした!










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