01 古市左京は(いつまでも)子供です |
※魔法の国(春成り代わり字の世界)…『漢字名称』 【弥生字】 ・真名は《字》 ・芸名「春」 ・私生活では「花」 ・魔法のある世界の春成り代わり主 ・二つ前の前世は【復活】XANXAS成り代わり ・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり ・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える ・転生しすぎで魂が徳をつみすぎたせいで生き物に逃げられる。なぜか猫にはすりよられる ・ロジャー(蝶)は魂の片割れで、夢主の端末のような存在 ・転生得点:自分が不幸になるとすぐそばのだれかにラッキーが訪れる体質 ・とある世界で呪いがかけられたため、自分に向けられた術・ウィルス・毒などを無効化してしまう ・“超直感”があり、異常に勘がいい ・長く生きすぎてネジが吹っ飛んんだ精神年齢仙人な天然ボケ ・生命力が0のため、始の魔力で生かされている ・Growthとは恥ずかしい時に遭遇率が高いという謎の関係 ・志季、朏とはランチ仲間 【睦月始】 ・夢主とは小学生の時出会う ・双方の家族親戚公認の夢主生存装置 ・どでかい魔力を持ち合わせているのに、さらにどこからか魔力は湧き出つづける ・夢主と出会ったことで極度の笑い上戸に進化した残念なイケメン ・おもしろいことに全力投球しちゃう愉快犯 【霜月隼】 ・夢主とは始経由で小学生の頃からの知り合い、実際に会ったのは中学半ば ・家の関係で始とは既知の仲 ・始クラスタ ・愉快犯と面白いことに挑む確信犯 ・魔力量はそれほどなく、周囲の自然から魔力をとりこんで自分の力として使っている魔王 ・夢主のことがとっても大事 【ロジャー】 ・夢主と魂を同じくする、守護霊 ・顕現すると蝶の姿 ・基本的には“力”の操作などはロジャーの得意分野 「こうやって眼鏡なしで、改めて気づいたんでけど、左京さんのは目はすごい綺麗な紫の目ですね」 「よく・・・・・・・・・・・・・いわれた」 「左京さん!?」 いづみの言葉に、左京は喜ぶ――どころか、突如肩を落とし、ひざをついてしまった。 その表情はごっそり抜け落ち、魂までどこかに吹っ飛んだような死んだような魚の目であった。 あまりの脱力具合に、思わずいづみが心配するほど・・・ ―――綺麗な紫。×××と一緒だね。 遠いどこかで聞いた優しい声が、左京の頭の中でリフレインしていた。 それはもはやハンマーで頭をたたかれ、愉快な笑い声がこだまする幻覚を味わうような衝撃であった。 『ああもう!あの赤ん坊がすっかり大きくなって!!!始そっくりだねぇ!僕のことは覚えてるかな?』 白いだれかが笑いながらはしゃぎ声をあげる。 『始さんと違ってこの子は、目が大きいですね。凄いな紫はやっぱり始さんそっくりですよね』 『この目、もしかして始さんの血筋関係?・・・え、隠し子!?』 『あ、でもまってくださいみなさん。そうすると髪の色が始さんらしくないです。たしかにさらさらな質感はそっくりですが』 『色だけで見ると髪の毛は春さんぽくないですか?』 『髪も雰囲気も。すげぇ始っぽくね?』 『でも髪色が』 『・・・なんか春さんと始さんを足しで二で割って、ホクロを一個足すとこんなかんじだなとーおもったり』 『そうだねぇ、そのつんとしたところとか始さんそっくり』 『まんまじゃん』 『始さんと春さんの二人を掛けあわせたかんじじゃねwwwwwwwww』 『つまりは2人のこども?』 『え?お二人の子供ですか!?いつのまに生んだんです!?』 『んな、ばかなwwww』 『そうなるとどっちが生んだんだろうね』 『こんなに大きく育つまで隠してたなんてやるな二人とも』 『生んでない』 『髪色!いいところに目を付けたね!そのとおりだよ!この子は始の子じゃない!当然、残念ながら僕と始の子でもないんだよねぇこれが』 『もう!しってるなら隼さん、早く答えを教えてくださいよ』 『それじゃぁ面白くないでしょ♪詳しいことは春に聞いてほしいな』 『じゃぁ、春さーん。どういう関係ですか?』 『じゃーん!なんとオレの子供です!』 『まじか!?』 『ほらぁ!春さんが!うんだって!』 『生んだとはだれも言ってないぞ』 『あ、始さんその手は!待って!あたまはやめて!!あいあんくろーいた!いたたたたたたたたた!!!!』 「・・・・・」 左京の頭の中に懐かしい人々の楽しげな声が、幻聴として響いていた。 続いて彼らと過ごした日々が走馬灯のように鮮やかに、幻聴と共に―― 「ちょ!?左京さん!!大丈夫ですか!しっかり!しっかりしてください!!!」 いづみがそれはもう必死でガクガクゆらしても、しばらく左京の魂が過去から戻ってくることはなかった。 【01 古市左京はまだ子供ですwww】 〜 side 古市左京 〜 秋組第二回公演 異邦人。 千秋楽。 ザワザワザワ 古市左京はざわめく座席に首を傾げた。 眼鏡をはずしているからよくは見えないが、客席から聞こえる声から察するにどうやら客席に有名人がやってきたらしい。 しかしすぐに開演開始のブザーが会場内に鳴り響き、客席からもざわめきがとぎれる。 きっとその有名人よやらもこれ以上騒がれるのを極力抑えるために、このようなギリギリの時間にやってきたのだろう。 このMANKAIカンパニーには、有名なTV俳優である皇天馬が夏組に所属しかつリーダーをしていることもありTV関係者はたまに客として訪れる。 今回もそう言った部類だろう。 まぁ、問題がなければそれでいい。 左京はすぐに意識を舞台へと戻し、集中する。 本日は千秋楽。 いつもより気合がはいる。 自分たちができるのは、ただひとつ。 最高の舞台をとどけるだけだ。 舞台終了後―― カーテンコールにこたえ、秋組メンバーが数回目の礼をしたところで。 ふと左京は客席に目がいった。 それはもはや無意識で。 ただ、眼鏡がないからこそ、“視えた”普通とは違う光を目にし、それに目がおってしまった。 客席のなか、普通よりもまばゆい“色”をまとう存在。 「・・・・」 扉寄りの奥の方の客席は昏めで人の顔を判断するのは難しい。 それでも左京は目があったとわかった。 客席の、入り口付近の、それも一番後ろ。 だというのに、その人物と視線があい、左京は目を見開いたまま固まる。 存在感は横の紫のオーラを纏う人とは比べられないほど希薄だが、それをぬきにしても一度見たら忘れられない“鮮やかな緑”の瞳だ。 口もとじれずその客を見ていれば、視線が合ったのが分かったのか、客はへらりとした笑顔のままひらひらと手を振ってくる。 瞬間、左京は・・・・・・・そのまま顔を手で覆って天を仰いだ。 * * * * * 『こんにちわぁ。わー、ここが楽屋なんだね。 いい舞台だったよ。演出もとても面白かったけど・・』 舞台が終了し、客がはけたあとの控室。 客席に人は残っていなかったが、突然開かれた扉に団員たちが驚き振りかえる。 入ってきたのは、一人の背の高い男性だが、とても華がある。 年のころは、目じりなどの皺から30後半か40代前といったところか。それでも若々しく、老いをまったく感じさせない。 そのひとをみて至だけが何かに気付いたように目を丸くする。 そのままそっとふところからスマホを取り出すと、何かを打ち込んだ後、口端を持ち上げて笑う。 秋組を含めた他の劇団メンバーたちは、突然の訪問者に驚きで固まっていた。 しかしそれもすぐになくなり、男が話をしているうちに、しまいには彼がいるのがあたりまえのような感覚になってきていた。 男はさも劇団員のひとりです。とばかりに、ニコニコ穏やかで、あっさりと控室に入り込み団員たちの輪にすっかり溶け込んでいた。 一成とは違った意味で人懐っこいようだ。 しかもフレンドリーなだけではなく、雄三とはまた違った視点と言動でもって、先程の舞台のどこが良かった悪かったなどを細かく指示し始める。他の公演も見ていたようで、何回目の何組の演技が・・・と話はひろっがっていく。 悪かった箇所に関しては、こうすればよりよくなると自身で演じさえする。 短い演技。けれどその数十秒足らずのそれだけで、思わずひきこまれてしまう何かが男の演技にはあった。 その演技に感化されて、演技に勉強熱心なこどもたちが目を輝かせて、これはどうだ?もっとうまくするにはどうしたらいい?といっせいに群がりはじめる。 おしくらまんじゅう状態であったが、男はいやな顔一つせずに笑顔で彼らを受け止めると、ひとりづつ質問にゆっくりと答えていった。 万「ん?なぁ、あのおっさ、じゃなくて左京さんどこいった?」 相手が誰であるかなどすっかり忘れ突然現れた男に演技指導を受けていたひとり、万里が、ふと周囲を見回し眉を寄せる。 控室を見回してもそこには左京の姿だけがない。 わいわいと男と会話していた面々も演技や時間、金に関してうるさい声が聞こえてこないのに、思い出したように周囲を見回してさらに首を傾げる。 太「( ,,`・ω・´)ンンン?あれ?サキョ兄?」 椋「そういえばいませんね。十ちゃんみた?」 十「いや。・・・・舞台が終わってからは」 一「いつもなら“ときはかねなり!”とか“時間がもったいねだろうが!”とかの怒鳴り声が聞こえてきそうなのにそれがないだとぉ」 東「おやおや、どこにいったのかな」 密「迷子?」 誉「密くん、天馬くんじゃぁあるまいし、さすがにそれはあるいまよ」 天「な!?俺だって控室まで迷ったりしない!!」 幸「はいはい方向音痴はだまってなよ」 天「ぐっ!ほ、方向音痴なんかじゃ!」 咲「いつからいなかったんでしょう?」 至「俺もそこまできっちり周りを見てなかったしなぁ(笑)今頃、“どこ”で“何を”しているのやらww」 シ「ワタシも、みてないネ」 万「つか、至さん。なんでそんないい笑顔なんだよ。何か知ってんだろ?」 至「さぁね(笑)」 椋「はっ!?も、もしかして左京さんヤクザだし悪い人たちに絡まれて・・・」 天「んな!?なら早く探さないと!」 臣「いやいやいや!まずは天馬はおちつけ(苦笑)」 『ふふ。相変わらず困った子だねぇ』 ふいに楽しげなコロコロとした笑い声が響く。 だんだんと心配になってきて、戸惑う団員たち。至を抜かして。 そんな彼らをなだめるように、そのどこまでも優しい響きの声が「何も心配はいらないよ」となげかけられる。 『こんなにいい子たちが心配してるのにねぇ』 悪い子だよね。と柔らかい笑みを浮かべて同意を求められ、男のそばにいたいづみが顔を真っ赤にして激しく首を縦にふる。 その様子を真澄が「節操なし・・・俺がいるのに」とギリと見つめていたが、ふいに男の手が伸びてきて、『ん。いいこ』と真澄の頭を優しくなでる。 なれないそれにきょとんしていた真澄だったが、見上げた相手がそれはそれは慈愛にあふれた優しいまなざしを向けてきたことで――――思わず視線をそらした。その顔はいづみ同様に真っ赤である。 幸「あ、サイコストーカーがおとされた。ナルホド。あんた天然タラシか」 椋「ゆゆゆゆ、幸くーん!?」 『ん?』 幸「そんないい年して首傾げるとか。あざとい仕草して、狙ってんの?」 一「ははwwユッキーすげーwwwしらないひとなのに容赦ない♪」 至「www」 紬「ん?しらない、ひと・・・あ」 丞「・・・」 誉「んんん」 綴「!?」 臣「そ、そういえば・・・・知らない・・んだっけ?俺たち」 綴「すっかりなじんでたから忘れてた」 幸「だれか、えーっと、おじ、いや、おにいさん?このおにいさんしってる?」 大人組からのセリフと幸の問いに、その場にいた全員が「あ」と小さな声を上げ、全員が首を横に振る。 そこで団員達の視線が男に一斉に向けられる。 男はあいかわらずニコニコとしている。 い「えーえっと。今更ですが」 「「「「だれ!?」」」」 団員たちの疑問に、けれど男は答えず。 なにかを知っていそうな至は、「なにもしりませーん」的な笑顔のままメンバーたちの輪から一歩下がり、自分に視線が向かないように逃亡済みである。 幸「あんただれ?」 太「そうそうちゃっかりいたけど誰っすか!?まさか俺たち秋組の評判を聞いて・・・・スカウト!?」 天「それはないだろ」 『その話は、またあとで。時間切れみたいだ』 男は人差し指で口元をおさえ、「いまは秘密」と微笑むと、その視線がふいっと廊下へ続く扉へ向けられる。 それからすぐにバタバタと廊下をかける音がきこえ、まるで扉の向こう側の状況が分かっていたかのようだと錯覚してしまう。 そうして待つこと数秒、扉が勢いよく開かれる。 年のころは男と同じくらいだろう。しかしもっと快活な印象を与えるピンクの髪の男が、あわただしく入ってくるなり、背の高い男の腕を引っ張っていく。 『慌てなくても大丈夫だよ恋』 恋『慌ててください!あいつ裏口に回ってたそうです!! 始さんが先回りして裏口から逃げ出そうとしてたところを捕獲したらしくて、さっき始さんから隼さんに連絡があって、隼さんから今俺に!それで迎えに来たんです」 『あれ。そうなの?もう照れ屋だなぁ〜。あ、おじゃましましたー』 ひらりと手を振って男は、恋と呼ばれた男にひきづられてでいていく。 「またね」そんな笑顔を扉が閉まる間際にむけられる。そんなところもどこか艶やかだ。 団員たちは、男の背が扉によって見えなくなるまでただただ見送るしかなかった。 椋「な、なんだったんでしょう」 咲「なんだか嵐みたいだったね」 紬「そうだね」 パタン。としめられた扉。 ようやく声を発せられるようになったのは、それからしばらくしてからのことだった。 いまのは通りすがりの客ということにしよう。そうおちつきかけたところで。 天「あ!」 椋「天馬くん?」 ふいになにかを考え込んでいた天馬がこえをあげる。 そのまま勢いよく扉の方を振りむくが、すでに男はさったあとだ。 それに気づくなり天馬は雄たけびを上げて、床に膝をつき、床を悔し気にたたきはじめる。 天「あああああぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!お、俺はなんてことを!!!!」 幸「うるさい!今度は何?」 天「い、いまの!」 太「ん?さっきのナイスミドルっすか?」 天「や、弥生、弥生春だ!!!!!」 「「「「え」」」」 万「あ、そういえばなんとなく見たことあるなぁとは思ったけど」 東「ああ、それかぁ。なんか彼、見覚えがあるなぁって。そっかぁTVでよくでてたからだね」 綴「あちゃー弥生春って、まじかー」 臣「あー、そっか。今日はあのひと眼鏡かけてないから気づかなかったんだ。TVでもいつも眼鏡かけてるから、そっちの印象が強かったんだな」 シ「モノホンの芸能人ネ!」 綴「いや、だからシトロンはどこでそういう日本語を覚えてくるんだ」 幸「へーあれが芸能人かぁ。ふーん、俺様天馬とは大違い」 天「俺なんかくらべもんになるか!!ああ!くそ!もっと話とけばよかった!!」 真密「「だれ?」」 太「えっと、すみません誰っすか?」 至「俳優だよ。正確には元SIX GRAVITYってアイドルグループの参謀ってよばれてたひとだね」 い「やだ!どうしよう!私あのひとたちのCDもってる!!」 真「・・・あんたのためなら俺だって歌の一つぐらい」 綴「真澄はそこで張り合おうとすんな」 幸「監督がカレー以外にも興味があった事実に驚いている」 い「正確にはSIX GRAVITYの兄弟グループのProcellarumのひとの、カレーの曲が好きなの」 至「あんてー」(顔ひきつり) 幸「さすがカレー星人」 一「カレーの曲とか、マジなにそれwwwwうけるー」 万「むしろひくわ」 十「・・・・菓子の曲とかは」(そわそわ) い「あるよ!今度貸すね!」 十「っす」(周囲に花がパッ) 丞「なるほどな。どうりで親近感があると」 紬「や、やよいはるって・・・・」(ふらり) 丞「あ、おい紬!?」(ささえ) 紬「お、大物俳優だよ。大御所もいいところ・・・・そんなひとにため口を・・どうしよう丞!?」 誉「ふむ。あの様子ならば本人は気にしてないのでは?」 密「‥ねむい…zzz」 * * ** * 舞台が終わってすぐに左京はひたすら足を動かし、出口へ向かって走っていた。 彼とて、すでに“みつかっている”時点で、逃げても遅いのだとはわかっていた。 そもそも“彼ら”がその気になれば、自分が家を飛び出しても一両日中には発見され連れ戻されていた。 ある者は、人脈をとおして。 ある者は、マスメディアの力を利用して。 ある者は、ただいなる権力と金を駆使して。 ある者は、その足で情報を拾い集めて。 ある者は、不可視な力を用意て。 またある者は、鋭すぎるその勘でもって。 自分が自由にしていられるのは、“彼ら”が見逃してくれていたからにすぎない。 全員が揃えば、富も名声も権力も仲間も、自分をあまやかしそして叱ってくれる親も、何もかもがそこには揃っていた。 そこは幸せで固められていた。 左京はそんな“彼ら”の優しさに感謝こそすれ、嫌悪はしていない。 だからこそだ。“彼ら”から自立する必要があった。 だから左京は彼らの元を離れた。 何が悪いのかというと、一言でいうなら身内が非凡すぎたのだ。 普通の感覚があるうちに。 そうしなかった場合の末路が、皇天馬である。 有名人にして金持ちを親にもつあの子供をみていればわかるだろうが、一般とはかけ離れた浮いた存在になっていたのは間違いない。 左京は、今は自分で選び進んできた道にようやく光がさしたところで、連れ戻されるわけにはいかなかった。 というより、あまりに“彼ら”が“普通”とは掛け離れすぎていたため、 高校ぐらいに突如“普通”と実家の違いに気づき、瞬間悟った左京は家を逃げるように飛び出したのだ。 このままでは、一般的にいう非日常が常識になってしまう!その前に!! その想いは今も変わってはおらず、左京としては、なにがなんでも家に戻るつもりはなかった。 ただ、「そちらの生活に関与しない代わりに一年に数回は顔を見せろ。でないと乗り込む」とある日突然、家出先に手紙が届いたことで、家には戻っていないが仕方なしに年に数回は愛に戻っているが。 それでもいままで一人で生きてきた。生活費も。仕事も。何一つ口を挟まれたことはない。 舞台をみにくることもなければ、向こうから会いに来ることも、こちらから役者を始めたこともーー言ってはいない。 だから関与しないと言っていた本人たちがきたことに「これはまずい」と思ったのだ。 ついに連れ戻しに来たのだろうかとも思った。 舞台が閉幕後に、左京は脱兎のごとく、それはまさに非凡というものから逃げるように裏口に向かったのだとしても、それが無意味でしかないことも理解していたが、 それでも左京は逃げずにはいられなかったのだ。 ようやく劇団員として、認められた。 ここが居場所だと思えたからこそ。 左京は衣装のままだというのもきにせず、ただ出口へ向かって―― もうじきだ!そう扉をあければもうだい 『アウトだ』 左「っ!?」 扉を開いたそのさきには、30後半ぐらいだろうか、とても大人の色気を漂わせた黒髪に黒服のイケメンが腕を組んで仁王立ちしていた。 左京とよく似た紫の切れ長の目を細め、呆れたように男はため息をついた後、持っていたスマホの画面を左京に見えるように突きつける。 『お前、身内に密告者がいるぞ』 左「あ!?あのやろう!ちーーーーーがーーーさーきぃ!!!」 みせられた画面の送信者の欄に「茅ヶ崎至」の文字をみて、その場で思わず足を止めて怒りのままにスマホに手を伸ばしかけてしまう。 その手からさっとスマホを持ち上げられたため、触れることはかなわなかった。 ついそのままスマホをひったくろうと手を伸ばしてしまう。 無意識に追いかけるように左京が手を伸ばしたところで―― 左「いだっ!!!」 相手の大きな掌で左京の頭がわしづかまれた。 男は左京が考える隙さえ与えず直後手に力を込めると、その万力のような手でギリギリとみごとなアイアンクローをきめた。 左京はその痛みに悲鳴を上げ、ワタワタと手の動きで「やめろ」と抵抗を見せものの、左京の力など怪力男の腕の前ではピクリとも動かない。 左「はなせ親父!」 『いつまで駄々をこねている気だ左京?』 左「俺は隼さんと違ってアンクロはご褒美じゃない!いだっ!だぁぁぁ!!!!い゛だだだだだだ!やめ、始さんまった!まじやめろ!いだだだだだだ!!!死ぬ!離せ!!!!」 始『春たちを待たせてる』 左「そういうなら腕を離せ!!」 始『逃げなきゃアイアンクローだってするつもりはない』 左「いや、絶対嘘だろ。俺や年下組の人たちだっていつもされてるし!!・・・そういえばあんた、父さんにアンクロしたことないだろ。俺は知ってるからな」 始『バカだな左京。お前の親は、気配読む達人だぞ。先読みの賢人だぞ。そんな未来まで見えるやつに俺の手がかすると思ってるのか?この四十年近く何度あいつに技を仕掛けようとしたか。 あれは逃げの達人だ(真顔) ついでにいうと、攻撃されるのは俺だ』 左「・・・・・・」 始『さ、気が済んだろ。そろそろいくか』 始は左京の頭から手を離すと、満足げに頷き、ひょいっとそれは軽々と左京の襟元をつかんで持ち上げたかと思えば、そのまま俵抱きにして、先程左京が出てきた扉へと手を伸ばす。 左「なぁ、親父・・・・・」 始『あ?』 左「なんで首?なんで俺は今あんたに首をつままれて片腕で持ち上げられてるんだ? なぁ、父さんと俺の扱いが違いすぎなくないか?あんた、父さんへはこんな扱いしないだろ。「ほら、こい」って自分から招くだろ!その後エスコートするだろ! しってるか?そのいかにも騎士が令嬢をエスコートするみたいな仕草を素であんたがやるの父さんにだけって!」 始『フッ。なんのことやら。しらんなwww』 左「笑いが漏れとるわっ!!」 始『まぁ、壊れやすいものか、そうでなかいの違いだな。気にするな』 左「他のやつの扱いが雑だ!!!」 始『おら、いくぞ左京』 左「だから雑すぎだろ・・・・いや、もういい」 そのっまブランブランと宙にういたまま運ばれる左京は、すっかりやる気も反抗する気も失せてつかれきっていた。 その脳裏にはいい笑顔の至の姿がよぎったのであった。 * * * * * 春『オレの子供がお世話になりました。よくしてくれてたみたいだね。―――ありがとう』 呆然としているMANKAIカンパニー団員たちの前で、それはもう柔らかく目を細め愛おしそうに“こども”の頭を撫でているのは弥生春。 “こども”と呼ばれ、腕を組んでたってはいるものの、唇を尖らせそっぽをむくようにしてふてくされたような顔をしているのは、自称いい年したおっさんである古市左京である。 そんなふてぶてしい様子で、けれどされるがままに弥生春に頭を撫でられている左京の横では、「くっくっく」と口元を手で押さえつつ笑っている睦月始がいる。 さらにはそんな三人の傍に、ちらほらとSIX GRAVITYとProcellarumのメンバーの姿もある。 ちなみにそんな左京と春のそばでは、すべての事情を知っているーーもとい弥生春たちを招待した本人である左京の酒飲み友達である茅ヶ崎至が、腹を抱えて「左京さんがかわいがられてるぅwwwww魔王に攫われたお姫様のご帰還だwww」と楽しげに笑い転げている。 左「だぁれが姫だ!!このゲームオタクめ!よくも密告しやがったな!!」 至「いやぁwwwだって俺、春さんから左京さんの状況を教えるように言われてますしーwwwいわば魔法使いの弟子!なんちゃってw」 左「なんで父さんたちとお前が連絡取ってんだ!?連絡先まではおしえてないだろ!」 至「え。左京さんから親御さんの正体を聞かされた翌日には向こうから連絡きたけど?」 左「・・・・・・超直感と権力怖い」 頭をなでながらも至に怒鳴りつける左京に、ツキウタメンバーたちはいい笑顔で見守っている。 左京は無視しているが、撫でたりハグされたり、髪の毛ぐしゃぐしゃにされたりと、とにかくツキウタメンバーたちはかまいたおしている。 どうやらなんらかの手段で至と連絡を取った春が、至をつてに左京の様子をうかがっていたようだ。 おそるおそる左京の背後にいる大御所能人たちをみれば、こちらの視線に気づいた彼らからひらひらと手を振られ、思わず振りかえしてしまったものが何人かいた。 しかしすぐにハッと我に返った劇団員たちは、思わず左京とツキウタのメンバーたちをガンミする。 そして全員の結論が―― 「「「左京さんって始さんと春さんどっちが生んだんですか?」」」 という究極の結論であった。 ひとり「あれで50歳近いだとぉ!?実年齢より若くみえるなー」というつっこみがもれたが、それはそれ。 すでに始と春の子供前提であるのは、左京の髪の毛の質や目などの色合いからだろう。 春と始が横に並んでいるからよけいに。 そして勘違いが酷い速度でひろまっているが、始と春は男で、どちらも子は産めない。 ついでに、この二人距離が近いがつきあっていない。 ただ、たがいに空気のような扱いをしているせいで距離感がおかしいだけである。 春『ふふ。また勘違いされてるよ。どうしようかね始』 始『たしかに寮のみんなで育てはしたせいか、“親父”呼ばわりされてはいるがな。左京は俺のこどもではないな』 春『オレの子だよ〜。 始はオレの相棒で傍にいた時間が長いからね、それで左京は始を親父って呼ぶようになったけど。始が不倫とか、左京が始の前妻の子とか。そもそも誰の隠し子でもないから安心してね』 春のその言葉通り、睦月始にはすでに妻子がいる。 そして愛妻家にして、仲良し夫婦として業界でも有名だ。 他のメンバーにもそれぞれ妻や子がいるのだ。 ただそんな噂一つなかった弥生春のこどもが、左京というだけのはなし。 い「そういえば至さんはしってたんですよね?」 至「ああ、うん。ちょっとね。たまたま左京さんの素性を知る機会があってね。それ以来の縁かな」 十「なぁ」 左「あん?」 十「なんで左京さんは“古市”なんだ?そっちのあんたのこどもなら苗字は“弥生”なんじゃないのか?」 椋「じゅ、十ちゃん!?あわわわわわ(汗)そういうプライベートな話はつこんじゃだめだよ!」 十「そうなのか。わるい」 至「左京さんの本名は弥生だよ。ヤヨイサキョウ。ねー左京さん」 左「だまれ茅ヶ崎」 至「古市は偽名なんだよ。しょせんコードネームってやつだよ(ニヤリ)」 十「あ、ヤクザだからか」 椋「こら!じゅうちゃん!」 左「それもないわけではない。はぁ〜・・まぁ、一番の原因はこっちの話だがな」 十「こっち?」 左「理由なんて簡単だ。親がこれだからだ」 そういってクイっと左京が示したのは、弥生春。 訳知り顔で「そうなるよねぇ」とほわほわ頷いてる春に、左京が舌打ちをする。 その顔が「本当にどこまでもおみとおしか」とつぶやいていたことから、名前を変更したことも居場所も教えていなかったとみれる。 春『オレたち20代の頃までは寮で暮らしてたからね。そうすると必然的に左京はツキプロの寮でみんなにもみくしゃされながら育ってね』 始『左京の子守歌は、ツキプロ所属のアイドルたちの生歌だったから、ある程度歌えるぞこいつ。歌に関しては少しばかり椿の影響が強いが・・・(椿のあれは、もはや洗脳にちかった気がするが魔ぁいいか)』 春『うん。まぁ、そういうわけで。社長公認で寮でくらしてたから、アイドルが身内で、それが日常だったんだよね』 始『ある日、“こんなの普通じゃない!”って言って、家を飛び出したんだ』 春『今、左京が任侠者であることで周囲を巻き込みたくないというのも理由の一つもあるけど。一番はこれでしょ?オレの子ってばれるの嫌がって、古市って名乗ってるんじゃぁないかな?どうかなオレたちの推理は』 左「もうきくな・・・」 ――っと、いう感じで、何年たとうとウチの字春にとってみれば左京さんはこども。=我が子。っていう意味で、「春さんにとってはいつまでも子供です」というタイトルに。 とりあえずA3!メンバーとツキウタメンバーが、左京さんを中心にわちゃわちゃするだけの話が読みたいwww ■ ちなみにこの段階で、ヨヤハルは46歳。 実は実子ではなく、養子。 左京が赤ん坊の頃、字春がみつけてひきとった。 ■ 左京は始のことを「親父」、字春のことを「父さん」と呼んでいる。 そのため高確率で、周囲が勘違いし、いろんな憶測が高速で飛び回ることに。 ■ 親子になったときの経緯はこう ↓ 「いのちゃんがこの世界にいないから結婚しないね」と両親に宣言していた字春。 だけど縁があって養子をひきとる。 字「結婚はしないけど、こどもできちゃった♪」 母「あら、始くんとのこども?」 字「ちがうよ〜」 母「てっきり始くんと春くんとのこどもかと。よく似てるわよね?」 父「そうだね。わー僕らの孫かぁ」 母「わたしたちおばあちゃんね(ニコニコ)」 字「アイドルやるし、お金も稼げるから養子もらちゃった。大丈夫。ちゃんと育てるよ」 からの〜。 ■ 弥生妹、妹の彼氏も左京を溺愛。 社長の許可をもらって寮につれていけば、もうツキウタメンバーに大いに愛される。 ちまい左京がかわいすぎて、椿ちゃんが自分のファンになれ〜と左京を洗脳・・・・もとい、ツキウタメンバーで一番、べたかわいがり。 よく男衆がいないときは、面倒を見てくれていたので、左京も一番椿になつき、拳をきかせる歌に夢を抱くように。 もちろん友人であるSolidsメンバーも遊びにきたとき左京の存在をしり、よくかまいたおしてくれた。 もうツキプロの秘蔵っ子ともいえる左京www ■ そんな左京さんとカラオケにいくと。 酔ってなければ、SolidS含み色気あるのをやってくれる。 リクエストあらば他グループのも歌える。 歌だってキュート系からカッコいい系まで歌う。 左京「甘いミルクティを入れたら〜♪」 ザワッ(°Д°; ) ってなるの必須www 駆と恋のまだまだアバンタイトルより(笑) ちなみにクリスちゃんの曲もひなちゃんの曲も歌える。振り付け踊れる。 しかも完璧にきゃるーん☆まで抜かりないwww た・だ・し!!酔ってる時に限るwwwww 左京さんは、次の日動画見て唖然。 ■ 字春たちが劇場にいた理由――の、ボツねた 始「チラシ?」 字「うん。目に付いたんだ〜。行ってみようかなぁと…あ、ひまなツキウタメンバー招集かけれる?みんなで行こっか」 隼「さんせーい!これは絶対運命的な予感っ」 字「「ねぇーー!(゚∀゚ )」」 海「…白の魔王様と緑の仙人様の直感か。こぇー」 という理由でMANKAIカンパニーにやってきたという経緯があったり、なかったりwww ■ 左京さんと至さんの関係 仕事しすぎで頭が痛い左京さんが病院行って、「弥生さん」と名前を呼ばれる時、たまたま風邪で診療を受けに来ていた至が遭遇。 事情を全部反してからは、左京さんと至は酒飲み仲間。 酒で愚痴ることができる大人っていいね♪ 翌日にはなぜか至さんのスマホに見知らぬヤヨハルからメールが(笑) そこから至さんは始さんと春さんかに、自主的に左京さんの実況中継をしていく。 第二公演の招待状をだしたのは、至。春と始だけ呼んだ。 左京案を驚かせようとした。 結果、他のメンバーもきていてびっくり。 でも面白かったよし。これからもスパイっぽいので楽しく左京さんの近況を黒年長にばらしていく所存(笑) こんなネタを考えた。 続かない・・・・・・・なんて嘘、かもしれない。 続きは未定です(笑) ----------------------- |