有り得ない偶然
++ アルナシセカイ ++



[ツイッター・ツキアニ軸] 悩める始とデート編
「春」成り代わり夢主1の世界…『漢字名』。
「隼」成り代わり夢主2の世界…「カナ名」。

アニメ 第11話「迷いの瞬間」 より





【悩める君に相の手を】
 〜side シュン成り代わり世界〜



《俺はやるからには徹底的に最高のものを目指す主義だ》


目を覚ましたハジメは、深いため息を一つついた。
今朝見た夢の内容を辿る。
―――あれはグラビのメンバーに宣言した時のものだ。

チラッと視線を動かせば、机の上に視線が行く。
目に映るのは今回決まった合同ライブの台本。
夢のことと今のことを考えると、胸がもやもやしてしまう。
きっと今日もご飯は喉を通らないだろう。


ああ、なんてぜいたくな悩みなのだろう。



始「ごちそうさま」

自分の中で考え事がぐるぐるめぐって、この思考が先にも後にも進めないどん詰まり状態。
やはり食べ物がのどを通らない。
ならば大ぐらいのあいつにやってしまえばいい。

葵「もういいのですか?」
夜「あ、食後のコーヒー」
始「いい。そろそろ仕事でな…シュン、残りは全部やる」

そう思っていたのだが、そんなハジメの言葉に眉間にしわを寄せ、シュン(成り代わり主,零)がまったをかける。

零「ストップ。俺もいらねぇ。―――なぁ、ハジメ。ちょっとだけ俺に時間をくれ。それまで退室するなよ」

いつもなら喜びそうなのにシュンは眉を強く寄せてハジメを小突くと、そそくさとキッチンの棚から弁当箱を取り出す。
そうして瞬く間におかずが綺麗に詰め込まれていく。

零「本日仕事があるお前が飯抜きとか何言ってる!ご飯は体のエネルギーだ。弁当にしてでもちゃんと仕事前に食え」

シュンはらしくなく、ドンッ!といささか乱暴に中身の詰まった弁当をハジメにつきつけるように渡した。
どうやらシュンはシュンなりに、ハジメの態度に苛立っていいたようだ。





零「どうしてあいつは幼馴染みである俺にも相談しないんだ!」
春「王様はプライドが高いからね(苦笑)」
海「もう少し待ってやれよシュン」





――ハジメのいなくなった部屋で、仲間たちがいつもと違う雰囲気のハジメを気遣い集まり始める。

駆「今日、ハジメさんだけお休み取れなかったんだっけ」
恋「働き過ぎだよなー。単独の仕事も多いし」
葵「大丈夫かな。無理してなければいいけど」
新「心配するなアオイ。あの人がヘバッた姿想像出来るか?」
葵「へ?」

恋駆「「全然出来ない」」

夜「ハジメさんって頼り甲斐あるし優しいし絶対的リーダーって感じだよね。俺達プロセラメンバーも尊敬してる」
陽「うちのリーダーが特殊なんだろー。ここまでメンバーからおかしなこと巻き込まれるか警戒されてるリーダーなんているか?」
駆「うーん、どうしよう。完全に否定出来ない」
涙「うんうん」

春「絶対的な我らがリーダーにもなにやら悩みがあるみたいなんだけどねぇ」
海「え、ハジメに悩み?季節外れの雪でも降るんじゃないだろうな」
春「ねぇ、カイ。君はうちのハジメをなんだと思っているのかな」
海「あー、ははは、悪い悪い。冗談だよ。――でも意外だな。悩みがあるのは良いとして俺らに諭されてるのがらしくないっつーか、気ごころ許したシュンにさ言わないって。なぁ、ハルはあいつの相談に乗ってやらないのか?」
春「うーん。たぶん友達だからって相談に乗って、それを話すタイプ・・・でもないし。むしろハジメのことだから、人に話せる悩みじゃないと思うんだよね。なんとなくね」
海「うん。うーん。よし!ならこういうのはどうだ?えっと蛇の道は蛇!あれ、違うか?だよな!シュン」
零「どうしてそこで俺を名指しなのか、カイ」

春「あれ?ハジメの見送り終わって帰ってきたのシュン?」

零「蛇の道はといわれたからには、やらせてもらおうじゃねーの。俺は俺らしく!ハジメの悩みを聞き出して見せる!!!」

その後、どういったわけか、シュンの気合と共に若干TVの映像が乱れたが、年中・年少組は珍しく、「いいぞー!もっとやれ!」「気合ですよシュンさん!その調子です!」とシュンをほめたたえた。
TVの画面は再びゆがんだのをしらないのは、この場にいないハジメだけである。



* * * * *



テレビ、ラジオ、雑誌の取材…新作のルージュのCM撮影。
やっと一段落がつき、ハジメは胸のもやもや事疲れを取り払おうと息をつく。

始「・・・月城さんですか?今終わりました。例の打ち合わせは…了解です。今から直帰します。お疲れさまでした」

ハジメが月城との電話を切って、廊下の曲がり角に指しかかろうとした時のこと。
視界にとまった“白い”ものに、思わずハジメは足を止める。
ふりかえれば、ソファにはオフのはずのシュンが座っていた。

始「シュン、今日のお前はオフだろう?」
零「お疲れさん…んー、そうだな」

ニカッといつものように笑ってシュンは、傍らの紙袋を掲げて見せた。
そして――

零「ハジメにデートのお誘いだ」

ハジメがシュンのかかげたもに「紙袋?」と意味が分からないと首を傾げれば、予想外の発言返ってきて、ハジメは今度こそ目を見開き心底驚いたのだった。



* * * * *



一方。寮では、正常な動きを取り戻したTVを共有ルームでこどもたちがみて、目を見張っている。

涙「ハジメのCM、増えてる」

ルイのことばどおり、きりかわったCMが再びハジメをうつしだし、その場にいた仲間たちが頷く。
最近のハジメはやはり仕事しすぎである。
これは年長組に活躍してもらい、少しでもハジメの心労をぬぐってもらうしかないのだろう。

夜「はい、ルイ。お茶」
涙「ありがとう」
夜「はい、アオイも」
葵「ありがとう、ヨル」
夜「アラタ、いちご牛乳…って寝てる」
葵「あ、もうこんな時間なんだ。夕飯の支度しようかな」
陽「あー、夕飯もアオイちゃんが作るのか?」
葵「ハジメさんが仕事している間休んでいたわけだしね。せめて美味しいものを食べてほしいなぁと…遅くなるのは分かってるんだけどね」
夜「いいね。俺も手伝うよ」
葵「ありがとう」

駆「ハジメさんと言えば今頃シュンさんと合流した頃かな?」
恋「デートで息抜き作戦ってやつだっけ?命名したのはカイさんだけど」
新「疲れてその辺に力尽きてもシュンさんいれば心配はないな」
葵「アラタ、いきなり怖いこと言い出さないでよ」
新「冗談だ」
郁「だけど、たしかに最近ハジメさんって働き過ぎっていうか」
陽「ま、普通の人間ならぶっ倒れても不思議じゃねーかも」
夜「そんな…まだ若いんだから」

ピッとルイがリモコン片手にかえた番組から、音声が流れる。
つけたテレビには「働き過ぎる若者」の特集が流れる。
あまりにタイミングが良すぎる。
思わずその場にいた者たちの動きが止まり、TVへと視線が集まる。

キャスターの言葉に心当たりある点がありすぎた。
彼らの脳裏に浮かぶのは、黒の王――。

恋「・・・そういえばハジメさん、最近思いつめたかのような溜息ついてること多くない?」
駆「朝ごはん、殆ど手を付けてなかった」
陽「えっああ」
恋「カケル、今日ハジメさんの仕事は?」
駆「そんなハードな仕事は…えっと、昼は番宣でバラエティ番組…」

カケルがスラスラと読み上げる次々の仕事内容が悪い方へ連想されていく。極めつけは月城さんが不在とのことでコイは叫んだ。

恋「ハジメさぁぁぁぁん!!」
陽「待てこら、なんのためにうちのリーダーがハジメさんを迎えに行ったと思ってる!春さんと海だっている!」
夜「そうそう、ちょっと話が飛躍しすぎているよ」
新「ハジメさんの事だから心配する必要ねーよ。みんな落ち着け」
駆「そ、そうだよね。そのために年長組の人たちに行ってもらったんだもんね・・・・・だ、大丈夫だよね?」

「たぶん」っとだれかの声が応える。
だが、「もちろん!」っと自信を持って頷ける者はおらず、年長組への信頼はあるもののTVの怖い内容からか、なぜか不安に襲われたこどもたちだった。



* * * * *



始「デートっていちゃぁ、そうだな。此処はたしかにデートスポットだ」

こどもだちにとても変な方向で心配されていたハジメといえば、なぜか満面の笑顔のシュンにつれられ、本当にデートスポットにきていた。

零「流石に女装だとコスプレした俺だとバレた時ハジメが可哀想なんで勘弁な。身長があり過ぎる」
始「お前、この間の番組で女装着こなしていただろう。所作とか見た目が本当に女だったぞ」
零「(元女だったし)……嗚呼、旅館ドッキリのやつ。褒めてくれてサンキューな。参考はうちの母さんとお姫さんだ。着物だからバレづらかったんだろ」
始「ああ、どっかで見た素振りだと思ったら俺の母さんか。」
零「とはいえ、真似事に過ぎないからなぁ。メンバー皆ポカーンとしてたから似合わないかと本気で思っていたんだが」

そう話しながらショッピングモールを巡るが、なぜかトップアイドルの二人が歩いているといのに騒がれる気配はない。

始「・・・案外、悟られないものなんだろうな」
零「こういうのはザックリとした変装のほうが良いんだと。もっとも目立つ髪色はウィッグで埋没完了だしな」
始「確かに今の服装とその濃い赤髪じゃシュンだとは思わないだろう」

互いに普段着る服系統ではないが、変装と言う割には軽装だ。
ハジメに至っては髪を下ろしてメガネをする程度…身を隠している窮屈な感じが無い。

零「補足としてウイッグから靴までのトータルコーディネイトは我らがオシャレ番長のコイとヨウ監修だ」
始「あの二人なら見立てに狂いはないな」
零「任命された二人はそれはそれは真剣に吟味し厳選したコーディネートしてくれたぞ」


零「もっとも…俺のは外見的な理由なだけだが、カリスマオーラのハジメがどこまで隠せているやら(ボソッ)」



と、堂々と色んな店を見物しメンバー達にお土産を買っていったその結果。

始「バレたな」
零「おう、バレたなwww」

男二人で買い物袋をたくさん持っていたのか原因か。
それとも二人の醸し出す独特のオーラゆえか。
しまいには正体がバレ、周囲で黄色い悲鳴が湧き出す。

「「三十六計逃げるに如かずっっ」」

ハジメとシュンは声を揃えると、ファンに囲まれる前に全力で走りだした。

零「やっぱり黒の王のカリスマオーラ隠せなかった!!」
始「抜かせ!お前だって自分の顔面偏差値とカリスマオーラを自覚しろ!」
零「顔面偏差値はともかくっ俺は中の中っ。集団に埋没するモブだっっ(`・ω・´)」
始「お前の中身すらどこがモブだ!全国のモブ属性に殴られてこいっ」





そんな騒ぎでふたりはくたくたになりつつ、疲れた足は隠れ家的な喫茶店にむかう。
食にはうるさいシュンが、以前発見した店のひとつで、アイドルでも静かな時間を楽しめる個室のようなブースでわかれているのがいい。
流石は大食い魔である。
量だけではなく、デザート系もリサーチしていたのは驚きである。

零「ずっと言いたかったんだ」
始「なんだ?」
零「お前は無茶しやすい。グラビのリーダーだからと言っても黒の王様と称されても人間なんだぞ。どれも完璧なんて誰が言うんだ」
始「気づいていたのか」
零「ハルも気づいているぞ。相方なんだから頼ってやれよ。それが仲間だろ」

ジト目でハジメを見ながらもシュンはフルーツジャンボパフェを食べ続ける。
いつの間にかハジメの目の前にも、標準サイズながらもパフェが鎮座していた。
シュンが勝手に決めたものでハジメに拒否権はなかった。
ハジメが確認するように正面に座るシュンをみやれば、「くえ」とばかりの強めの視線が向けられる。

……甘いのは疲労時に良いとは聞いたことがある。

それゆえである。
ハジメは妥協してやったのだとばかりにハァーと溜息をついた後、目の雨のそれにスプーンをさした。

始(・・・うん、好みの味だな。些細な変化も察するとは流石俺の幼馴染というべきか)

ハジメは、幸せそうにパフェを攻略するシュンを見て、“幼馴染みだったな”と改めて思い返す。
好みを把握されてるのも頷ける。
ぜいたくすぎる悩みを抱えて、そんなこと考えちゃいけないとばかり思っていたが。こういうとき誰かに話を聞いてもらえるというのは、聞いてもらえる相手がいるというのはいいものなのかもしれない。
こうして己の好みのものを食べ。ゆったりとした時間を過ごして・・・


始(とはいえ。シュンのリーダーとしての概念は性格からは“らしくない”んだよな)


シュンはその性格からしてグイグイ引っ張っていくと思いきや、プロセラルムのリーダーとしては静かに見守るスタンス。
見守るスタンスなのでプロセラの動は参謀ポジションの海が担ってる。
シュンというのは、求められれば応える。

そういえば昔からクセのある連中といつの間にか仲良くなっていたりしたと、ハジメはシュンのことを振り返る。
それは“相手に求められた”からなのだろうか。



パフェを食べた後、食後の運動として、シュンはハジメをバスケに誘った。
相変わらずのバスケ馬鹿である。
そこでふと、バスケプレーヤーとしての道もシュンにはあっただろうと、と今更ながらハジメは考える。

始(将来への道・・・か)

ふと、ハジメは疑問に思って、将来をどうしたいかと夢の内容をシュンへ問う。

零「夢?将来の?」
始「この先、お前はどうしたいんだ?プロセラルムとしてのリーダーとして」
零「リーダーとしてか・・・懐かしいな。俺もハジメもグループ結成で声かけられたのは殆ど同じ時期だったな」
始「ああ」
零「俺も俺で…アイドルになるとか。それもリーダーとかさ。はっきりいってスカウトされるまで全く考えたことがなかったぞ」

あっという間だった。と言う。
過去を振り返っても、一つ一つ着実にこなした思い出はあるが、今の今まで・・・がむしゃらに駆け抜けた印象しかない。
やりごたえのある確かな日々だったとハジメも思う。

始「グラビとプロセラで大きな合同ライブするのがずっと俺の夢だった。
すごいよな、早く目標達成させてしまった。
メンバーも喜んでいる。ノリ気になってくれている。
そんななか、俺だけが状況を消化しきれていない。
・・・あぁ、こんなあっけなく夢は叶うもんなんだなって」

零「その夢を叶えるために費やす人がいるの分かってんのか?」
始「分かってる。これが贅沢な悩みだってことは。・・・でも道の途中で突然ご褒美を貰ってしまったそんな気分なんだ」
零「ほんと、お前は・・・」

飽きれたようなため息がシュンからもれる。
ハジメは「こっちは真剣に悩んでるんだ」と少しむくれたように顔をしかめた。

零「あー!もういい!いくぞ!」
始「?」
零「ハジメにはもう一つ付き合ってほしい箇所があるんだ。つきあって、くれるよな?(笑)」


含みのあるふてきとしかいいようがない笑顔でシュンにひっぱられ、ハジメが連れてこられたのは、大型の街頭テレビが観える場所だった。
見渡す限りは特に何もない。
ただの道路だ。

始「ここが…なんだってこんなところに」

疑問をすべてつげるまえに、突如外套という外套のモニターがCMへと変わる。
流れだすはハジメにとって聞き馴染んだメロディー。
歌。声。画像。
それはプロセラとグラビの合同ライブのプロモーションだった。

トップアイドルグループ二つによる合同イベント。そのプロモーションに、次々と人が足を止めテレビに魅入る。

始「・・・テレビ。まさか!?これ、お前が仕込んだのか?」
零「ふふーん。テレビのことならお任せあれ!・・・ってか企業秘密だな」

作った画像をいかに流し込むか。練習に苦労したんだ。っと、シュンが一瞬遠い顔をする。
だがすぐにシュンは、笑顔で「くわしくは教えんぞ」と肩をすくめる。

零「ほらみろよハジメ!こんな喜んでくれる人達がいるんだ!
頑張っている甲斐があるってもんだろ。・・・なのに、お前ときたら!なんで不満そうなんだ!!
ルイが言っていた「まだ自分たちは夢の途中なんだ」って。
そうだろ!この合同ライブは夢の終わりなんじゃない。このPVをみてるみんな。俺達を待ってくれているファンのこがいる。彼女たちファンのみたいもの。それは俺達のこの先にあるもの。彼女たちの夢も俺たちの夢も続いてるんだぜ。俺達が輝いてる限り。
だからハジメはもっともっと輝けばいいと思うぜ!夢が叶ったって、勝手に終わっちゃもったいねぇ」

流れ続けるPVに、喜んでいる人達。カメラをかまえる者たち。歓声を上げる者。
そのだれもが期待を込めて、プロセラとグラビの合同イベントを待ち望んでいるのだ。

そんな熱気あふれる様子を見てシュンは目を細める。

零「もっと手ぇ伸ばしてみせろよ。もっと野心的に、もっと貪欲的に!って、そんないつも前を見て走り続けてるハジメが俺は好きだぞ」
始「あー、たしかにゴールした気になるのは早い、か。まだ俺には俺達にはやれることがあるはずだな」
零「完璧主義や理想は大事だし、それをこなそうとするのもハジメらしいが、少しはハジメを好きなメンバーにも甘えろ!いつもプロセラのメンバーやお前を巻き込んで甘えてしまう俺なんかがリーダーしてんだしな。あいつらならハジメの甘えなんて喜んで受け入れると思うぞ。っというか、お前から甘えないと、そのうちこどもらが心配して押しかけてくんぞ」

始「ふっ。そうだな」

甘く微笑んだハジメに、シュンがニカリと笑い返す。
人に頼る勇気が、あと一歩足らな語ったのだろうと告げるハジメに、シュンはその背を勢いよく叩くように押してやる。
あまりに強い勢いであったため、思いがけずハジメが一歩たたらをふむ。

始「シュン」
零「ほら、いっぽなんて簡単だろ」
始「言ってくれる」

そへカイが運転した車が、二人の前にとまる。
カイの横にはハルがいる。
それをみてポンとシュンがハジメの肩を軽くたたく。

零「ほら、まずはこのへんから頼ってみろよ」

春「おつかれさま。調子はどうハジメ?」
海「はは。気分は晴れたか王様(笑)」

始「わるくない。二人とも・・・ありがとう」

春海「「どういたしまして」」





その後、はしゃぎすぎたのだろう。シュンとハジメは車内で眠気にあらがえず、うとうとと舟をこいでいた。
そんな二人をミラーごしに確認し、参謀ズは顔を見合せて穏やかに微笑む。

春「二人とも寝ちゃったね」
海「シュンも寝てやがるな。流石に疲れたか」
春「良い方向に進んだみたいだね。アイドルはTVの中の存在。TVならシュンって・・・すごい蛇の道だよね」
海「自分の体質利用してTVあやつるとかすげーとおもう」
春「あとはあれだよね。蛇の道は蛇っていうの、もうひとつ意味があるよね。ほら、幼馴染力というべきなのか」

始「なんだそれは…」

春「あ、起きたの?」
始「起きてたんだ。っで?誰が蛇だって?」
春「え。なんのことかな?」
海「ほほーぅ。ハルのお墨付きとはなー。王様らは蛇かwww」
始「はーもういい。それより、こいつ無茶してテレビあやつったのか」
春「怒らないでね。むしろほめてあげてよ」
海「だな。全部幼馴染み様のためだぜ(TVのっとり練習中にうっかり何度かサダ○出たけど)」

始「おこるわけないだろ。・・・っで?こいつはいつまで寝てる気だ。すごく気持ちよさそうに寝てるし」

Zzzzz(*´〜`*)とスコーと、外見に合わないほどこきみよい寝息をたてハジメの肩を枕にしたまま寮に着くまでの間、シュンが起きることはなかった。



サ○コ?
そんなものどこにも映ってはいないさ。

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【悩める君に愛の手を】
 〜side 春 成り代わり世界〜



始『ごちそうさま』

涙『あ・・・始、またご飯残してる』
隼『うんうん。これはあれだね。我らが黒の王様はなにかお悩みかな?』
恋『きいてください隼さん、春さん!始さんってば、今日の朝ごはんも抜いてました!』
駆『調子悪いのかなぁ?』
陽『悩み?春さん、なにか始さんからきいてないですか?』

字『ん〜・・・それはわからないけど。――ねぇ、部屋を出ていこうとしているそこのひと』

字『はじめー。ねぇ。
は・じ・め・く・ん?』
始『・・・』
字『うん?おかしいなぁ何も聞こえないなぁ?(*´∨`*)』

字『やだなぁ始ってばそんなこどもみたいなまね・・・・・・』



字『聞こえてないフリとかふざけんじゃネェよイイコちゃんが!あ゛?』



始『・・・なんだ春』
字『もうやだなぁ聞こえてるんじゃない。次からはそうやってすぐ返事してね(*´∨`*)ニコ
ところで始くん。そこ、座って。うんそこ。そう、ありがとう。
それでね、話なんだけど。君しってるよね?お米には七人の神様が宿るって。
ねぇ、知ってる?飢えてる時に食べるものもなくて何かを買うお金もなくて、ひもじくてひもじくて、そんなときそこらの雑草を食べる・・・そんな気持ち、ねぇ、始は知ってる?(*´∨`*)』

始『・・・残してすみません、いますぐ食べます。残しません・・・・・・・・・・・・・い、いただきます』

字『ならばよし。ちゃんと食べないともったいないでしょ!
食べた後なら、遊ぼうとはっちゃけようと悩もうとかまわないからね。もう存分に悩んで、好きなだけボケて、バカのように無茶苦茶に仕事しまくろうがかまわないよ。むしろくすぶってるぐらならいっそハーイ!いってこい!って感じかな?』

恋『やったー!始さんがご飯食べてくれた!』
新『わぉ・・・春さんがいつにもまして辛口だ』
陽『っというか「リアルお残しは許しまへんで!?」春さんバージョンとか!なにそれ!めっちゃこえーんだけど』
夜『でもたしかに、ごはんまったく食べないのはよくないよ。たとえ何か悩みがあって喉を通らないのだとしてもだよ』
葵『え?いまの辛口ってレベル?むしろそういう問題?(汗)』
駆『うぅ・・・(涙)花さんモードの春さん相変わらずこわい ウァーン・゚・(ノД`)』

海『それで?始はなにをなやんでるんだ?』
隼『ご飯がのどを通らなくなるほどなんてよっぽど・・・・・・』



隼『おもしろいことなんだね!』



海『しゅーん』
隼『ごめんごめんwww』

涙『始?大丈夫?』


始『俺は以前「やるからには徹底的に最高のものを目指す主義だ」とグラビの面々で宣言したんだ。だから・・・』
字『あ、ちょっと始ストップ。恋と駆。始の話が全部終わる前にこの企画書全員にわたるように配ってね。うん。ありがと。・・・・・・・はい、いいよ始しゃべっても』

始『ごほん。えー、みんなの手元に渡ったと思うが、それが俺達グラビとプロセラの共同イベントの企画書だ。だが面白みがないほど歌うだけしかないんだ。っという、わけで』

始『もっと愉快に!』
隼『もっと壮大に!』


『『面白くさせたい!』』


笑いが足りないんだ!!!っと心の底からの声を拳を振って叫ぶ魔王と王の横で、「食事中にはしたない」と春だけが眉をしかめて、優雅に茶を啜っていた。
どこにどれだけ何が足りない。こうしたら楽しくなるのに!いかにして観客のどぎもを抜けるか!など、ああでもないこうでもないと意見を言い合う二人は相変わらずで。
結局いつも通りの愉快犯たちに笑いがこぼれ、その場の固い雰囲気が一気に明るくなった。
しまいには自分が歌う時にはこうしたいと挙手する者も増え、さくさくと食器を片す春と葵と夜がテーブルを綺麗にかたした後は、いかに舞台を“楽しく”するかという討論会でもえた。

字『これもお客さんへの“愛”だよね』
海『いいのか春。客が笑顔をみせてくれるのはいいが、あいつらのいう笑顔って、間違いなく笑顔の種類が違うだろ。だって客を“笑わせて”どうすんだ?俺達はお笑い芸人じゃないんだぞ』

字『大丈夫だよ。きっとね。あ、それより葵くん、書記よろしくね〜』
葵『はい!!・・・って!?まって!お願い隼さんまって!そこは俺の回じゃないですか!俺のときにそんな、そんなことはやめてぇぇ!!!』
隼『いやぁ〜いいねぇ。あ、恋のときはここでこう演出してさwwww』
始『お、いいな!じゃぁ、このときに巨大なボールでもとばして観客にかえさせるとか』
隼『ハートのカードをふらすとかどうかな?びっくり箱は?』
恋『あああああ!!!!俺の回にどんどんなんかおかしなものが投入されてる!!!』
涙『ぷっ』
郁『涙がふいた!?』

海『なんかカオスだな』
字『ふふ。仲良きことはよきかな〜ってことで』

悩み?なにそれ笑えるの?――な、始と隼。

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