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06.お兄さんのトラウマ |
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-- side 夢主1 -- 『・・・・・・は?』 開いた口がふさがりません。 草むらの向こうには、ロケット団のムサシとコジロウ、ニャースに囲まれた、長い金髪が可愛いオレンジのワンピースの女の子がいた。 あれ?おかしいな。 なんか面白そうなことがあるかもっていうオレの期待と、あのロケット団がうまくやるだろうかという、二つの思惑により、サトシのピカチュウの誘導を終えた二匹のピカチュウを連れて、サトシを追いかけてきた。 で、どこにサトシはいるかなぁ〜と思って、うちのハナビとカザハナに、サトシを追跡してもらったんだけど。 サトシだと言われてみた相手は、何度目をこすってもオレンジのワンピースが良く似合う女の子で。 たぶんあのサトシのことだ。 店を出た後も、落ち込んでいたとしても、諦めずあともう一度挑戦でもしに行くに違いないと思ったんだが。 折ってしまった分のフラグの侘びとして、きちんとサトシに話しかけるようロケット団を向かわせたはずだ。 はて? なぜオレは、今、サトシではなく、ちょっと可愛い感じの女の子を覗き見しているのだろうか。 『おい、なんだこれは?ってか、カザハナ、ハナビ。本当にあれはサトシか?』 「チュウ(まちがいないですね)」 「ぴっかぁ(うん)」 えええぇぇぇぇぇぇ〜。 たしか、オレの実家の近所のサァ〜トシくんは、男の子だった気がするのですが。 再度二匹のピカチュウたちに頷かれた瞬間、オレは側にあった“なにか”を力の限りそのオレンジの女の子に向けて投げつけていた。 いや、あのね。べつに可愛かったから捕獲しようとか、そういうんじゃなくて、何か、そう昔の古傷をえぐられるような思い出がよみがえりかけて、嫌で嫌でたまらなかったから投げたんだけどね。 超高速で飛んで行った“なにか”は、みごとにふんわりリボンのついた金髪がまぶしい頭に直撃し、ゴインといい音がなった。 「あだぁっ!」 「「「ジャリボーイぃ!?」」」 「「ちゃっぁ!!!(ぐんじょうさぁーん!!!)」」 『え?グンジョウ?あれ、グンジョウさん入ってたの!?てかモンスターボルなげたのオレ!?』 つい怒りに身を任せて投げたのはモンスターバールだったらしく、しかも“なにか”にはしっかりオレのポケモンが入っていたようだ。 格好に似合わない少女サトシの男らしい悲鳴が聞こえたが、それさえ無視してオレは絶叫を挙げた。 『いやぁぁぁーーー!!!ぐんじょうさーーーん!!!』 慌てて弧を描いて飛んで行ったモンスターボールを追ってかけよるオレは、もう泣きそうだった。 だってあの中のポケモンは、ジョウト地方で拝んで拝んで拝み通して、頭を下げてようやく仲間になってくれた超年季の入ったご老人、いや、老ポケモンなのだから。 外見は若くても御年数十年を生きる我がパティー最強のポケモンヨーギラス【群青(グンジョウ)】さんだ。 頭を押さえてうずくまるサトシには悪いけど、隠れていた茂みから飛び出すと、彼を無視するかたちで、直撃して転がったモンスタボール(まだ小さく圧縮されたまま)を慌てて拾い上げる。 「いってぇ!だれだよ!」 『そ、それどころじゃない!むしろお前こそ誰だよ!』 「、さん?って、ぇ!?み、みられたー!!?」 『嬢ちゃんなんかにようはない! ああ、大変だ!大変だ!! ごめんよ群青さん!ポケモンセンターはどこだぁー!!』 「ピカピ、ピチュ!(主、センターは向こうです!)」 『無事でいろよグンジョウさーん!!』 そのときのオレは、もう目の前の女子だが男だかわからないオレンジの娘っ子など目に入ってなかった。 何を叫び返したかも忘れた。 肩の上の二匹が振り落とされんばかりに、必死にしがみついていたとか。 たとえ目の前に変装前のロケット団がいようと、しゃべるめずらしいニャース(絶対売れば売れる)がいようが、どうでもよかった。 『無事かグンジョウさん!オレが悪かったから見捨てないでくれ!!』 ひきとめようと声をかけてくる三人+一匹には悪いが、さっさとオレは彼らの前をとんずらさせてもらったのだった。 その際、なぜか肩が軽くなって背後から「あるじぃ〜!」なんて男女のみごとなはもり声がオレの耳に響いたが、本当にそれどころじゃなかった。 何度も言うが、このグンジョウさんは、ヨーギラスと可愛い外見をしているが、オレのパーティ史上最高齢の方なのだ。 そんでもって今のパーティにおいて、最も強い方である。 転生して身体レベルが常人より上がっているオレでさえ叶わぬほどに。 バーテン姿のオレがあわてて飛び込むように駆けつけたポケモンセンターで、ジョウイさんにとても驚かれたが、診断の結果怪我も一切なかったと言われ安堵した。 最近のモンスターボールは中への衝撃もないらしく、時代は変わったなと思わずつぶやいてグンジョウさんを受け取った。 とりあえず「騒がしてすみませんでした」とジョーイさんに謝罪して、タイミングもよいので他のポケモンたちもあずかってもらうことにした。 あずけたポケモンがすべてカントーにはいないポケモンたちばかりで驚かれたが、トレーナー登録カードをだして旅をしていたのだと告げたら納得された。 『ん?“カントー以外”…?』 そこでようやく空のモンスターボールが二つあることを指摘され、ポケモンの数が二匹足らないことに気付いたのだった。 『しまった。カザハナとハナビがいない』 あいつら勝手にでてくるからなぁ。 そういえばさっきまでは肩にしがみついていたが。 相手はピカチュウ二匹。 カントーのポケモンだし、たしかあの場にはニャースもいただろう。 あのロケット団二人は、おしゃべりニャースと共にいるから、やたらとひとなつっこく、ポケモンと仲良くなるのも早かったはず。 サトシは自分や人間よりポケモン優先する良い子だから、あの場にオレのピカチュウたちがいようときっと大丈夫だろう。 それにたぶんサトシのピカチュウって、うちで増殖したやつらの一匹なんじゃぁないかなぁって。 ほら、マサラにピカチュウはあんまいないから。 だからカザハナたちと親戚筋の子だろうって、ずっと思ってたんだ。 たぶんすぐに仲良くなるだろう・・・・とは思うんだけどな。やっぱりね。 『自分の手持ちとなったからには心配だっての!』 相棒も手持ちもなしのままだけど、カントーなら問題ないだろう。 こんなバーテンの恰好をしているお兄さんが、トレーナーだと思って、バトルを仕掛けてくる奴はいないだろうと駆け出した。 『あ〜・・・ついでにサトシのバトルでもみてくか。いや、あれは“サトコ”か』 ロケット団のてによるものなか、それともサトシの考えかはともかく、『女装』はもののみごとに、オレの古傷をグリッとえぐったのであった。 ********** それは、むかしむかしのお話です。 当時、オレはまだ11歳でした。 ちょうどトレーナーとしての旅を終えた頃のことです。 事情があり、ちょっとしたストーカーにねらわれていたので、何とかできないかと両親に相談したところ、面白がった二人にとあるものを渡されたのだ。 その赤いものをみたオレはひいたね。 しかしオレ以外に子供のいなかった父母のたっての願いとあれば、いたしかたなく、それを着ることとなったのだ。 短くきっていた赤い髪の上には、腰近くまであるロングのウィッグをかぶせられ、赤をメインとした白いヒラヒラまえかけのついたエプロンドレスを着させられ、髪とウィッグの境目が目立たないように頭にはレースとリボンで飾られたヘッドッドレスなるものをつけられ――あれで二年過ごしました。 地獄でした。 とんでもない地獄でした。 幼馴染には初めの頃会うたびに爆笑され、しまいには慣れてしまったのか、あのかっこうで外にでても気にせず話しかけてくる始末。 「お前もう少し女らしくしろよ。外見と口調が違いすぎて見るに堪えがたい」といわれたときはその瞬間に黄金の左ストレートで、下から奴の顎めがけてアッパーくらわしたけど。 よけやがったし。 『貴様が着ろ!』 「そういうのは似合う奴が斬るものさ」 『にあってたまるかー!!!』 「いやいいや、じゅうぶん似合うよ」 殺気を込めて予備のドレスを無理やり幼馴染に着せようとしたが、たかが二年で奴の方が、背丈も足も手もすべて伸びて体格もよく、外見は年齢よりはるかに男らしくなっていて色々無理だった。 「かわいいから、今度は男のストーカーが増えそうだね」 『死ねやこのイケメンやろう!』 「おいおい。そんなこと言っていいのか?お前、ストーカーに追いかけられてたんだろ?あれってもう終わったの?あ〜。あそこにいる彼女はだれなのかな〜」 『ぐっ』 幼馴染は、女の子の恰好をしている間が、一番口が悪かった気がする。 ついでにそのとき、お友達のポケモンに力を借りて、ロケット団が手ぬるいと思うほどのやりかたで、本気で世界を滅ぼそうかと思った。 っと、それはともかく、それからまもなくオレに妹ができた。 オレの恰好を見た両親が数年ぶりに頑張ったようだ。 結果、女の子。 男の子だったら(生まれた子が)女装の危機できっとやばかったが、念願の女の子。 オレは服をとっと脱ぎ捨てて逃亡したね。 っと、いう昔の話。 メイド服? ゴスロリ? ロリータ? オーバーニー? レース? リボン? ああ、マサラのみんなに写真でとられまくられたりもしたな。 「ふっ」 懐かしい思い出だ。 むしろオレの女装について、何かを言ったやつ全員をリザードンの炎で焼き尽くしてやったさ。 マサラ中が大火事にならなくて、よかったね。 オレの優しさに感謝しやがれ、やろうども。 オレで萌えた奴、全員 滅・び・ろ ☆ 「ん?俺かい? そうだね、俺としては……君にはピンクより、白のストライプのはいった黒のゴシック系ワンピが一番似合うと思うよ」 『貴様が着ろ!!』 「ムリさ。体系がしっかり男だぜ俺(笑)」 |