〜 O NE PIECE 夢 〜



01. ある日終わった人生と誕生





<side 夢主>





 学校帰りに、本屋によって毎週月曜日発売の漫画雑誌ジャンプを買った。
どれも楽しみで、家に帰るなり即、一番気になっていた連載ページを確認する。
もちろんあとで最初から最後までちゃんと読むけど、まず一番は気になって仕方ない漫画にいくのが普通だろう。

《ONE PIECE》

今のオレの一押しはこれでしょう。
いやいや、だって今が架橋だよ。
これを最初にみないではいられないよ。


 さぁ、読むぞ。
そう思って指定席である窓際に、だらしなく腰掛けて―――
そこでふと外が騒がしいことに気付いた。
なんだろうと思って視線を雑誌から窓の外へ向けて…

「はぁ!?なんだよあれ!?」

驚いた。
本気で驚いた。
はじめのうち言葉が出なくて呆然と口をあけたまま閉じられなくなったぐらいには!

だって、窓の外にあったのは、銀色に光り輝く球体金属。
通称円盤と呼ばれるものだったわけで。
それがまっすぐこちらへ向かってきて…


一瞬後 ――― オレの視界は白一色に染まった。











 さてさて、どうしたものか。
目の前にはひげ。

そしてオレは――


 目を開けたら小さな赤ん坊になっていた。




「あぶぅ〜(なんだこのヒゲ親父は!!!)」

 自分が赤ん坊であるからには、一番初めに目にするものは自分を見守る母親でないとおかしいだろう。
なのにヒゲヅラ。
しかもなんかみたことがある顔だ。

この顔はどうみても“かの海軍中将”。
オレの大好きなキャラの、そのお祖父様の中将にしかみえない。
でもそれだとおかしい。
“かの海軍中将”は現実でいるはずがないのだから。
なぜならば、あれはジャンプの―――

「あぶぶぅ〜(あのぉ、あなたは)」
「うおぉ!!みたか!こっちをみて笑ったぞ!!」

 ヒゲ親父大誤解。
話が通じません。
ってか、今のは誰に言ってんだ?間違いなくオレじゃないよな。

それよりいい加減スリスリやめれ〜!!

そうツコミたくなったが、目の前のヒゲへ向けた疑問の答えは予想外のところから意外と早く出た。
それに驚いて、やめろと叫ぶタイミングをのがした。

 側でクスリと笑う声がしたのだ。

やわらかい女性の声だ。
この状況からして、もしかすると自分の母となる人物かもしれないと思って視線をめぐらす。
そこでヒゲの後ろにベッドらしきものがあるのに気付いた。
どうやらそこにいるらしいが、ヒゲ親父が邪魔でまったくみえない。
でも間違いなく、もう一人部屋の中に誰かいるようだ。
なら、やることはひとつ。

「あぶぅ〜。きゃ!きゃぁ〜(た、たのむそこのひと!こいつをとめてくれ!!)」

 訴えかけるが、やはり口から出るのは赤ちゃん言葉だけ。
しかも相手からはくすぐったそうに笑っているように見えるらしく、目の前のヒゲヅラはだれ〜んと眉をたらして、鼻の下まで伸ばしている。
奥からは仲良しねと女性の笑い声。

「う〜んやわらかいのう!!」

ガハハと豪快に笑いながら、少し年のいった大男が頬擦りをしてくれる。

ヒィ〜〜〜〜!!!!

ヒゲがジョリジョリと痛かった。
 いい加減にしてほしいけど。だけど体は自由に動かせないし、言葉も赤ちゃん言語しか出ない。
意識はジャンプを読む寸前まで高校2年生な自分のままなのに、自分の体は別物の様に勝手が悪い。

なぜか本当に赤ん坊になってしまったらしいと、今になってやっと実感がわいてくる。


 っと、いうわけで。
もうこの際、赤ん坊になった事はなんとか認めよう。
原因は間違いなくあのUFOだろうことは明白だから。


 それはともかく、

ガープさん。
…痛いんですけど!!


 そう、目の前にいるのは、かなり若いけど、どこからどうみてもあの漫画にでてくる主人公の祖父モンキー・D・ガープそのものだった。
ガープといえば、あれである。

《ONE PIECE》

 つまりここはオレが今まさに読もうとしていたあのONEPIECEの世界ということで。
しかもガープさんの腕に抱かれているという事は、オレは彼の孫か子供にあたる立場にいるに違いない。

ぞくにいう――転生。
あるいは憑依か…。どちらにせよこの状態は勘弁してほしい。
そろそろほっぺが赤くなってるって!ぜったいさ。

 でもなんでONEPIECEなんだろう?
まぁ、他の作品より遥かに嬉しいけど。
もしかしてジャンプを持ってたから?
それじゃぁ、ONEPIECE以外の世界に行く可能性もあったんだろうなぁ。
でも最後の瞬間に強く思っていたことに影響されたんなら、オレがONEPIECEの中にいるのも頷ける。
これで原作の続きがわかるよ。しかもリアルで!……って、ちょっとまて。

それはつまり、オレが主人公?

 だって目の前にはガープ。ガープの中には赤ん坊のオレ。
たしか血の繋がったガープの孫はルフィだけのはず。
ん?それじゃぁ、オレはルフィか?それともエースか?もしかするとドラゴンだったり?
いやいやまて、落ち着け自分。
いくら原作より若いからといってもこの顔はどうみても子供を生むにしては年がいきすぎてる。
それすなわち。

オレ、ルフィ?

 やべぇ、それはやばい。
 オレが介入することで、原作と同じようにはいかず、違う未来を歩み始めるかもしれない。
それじゃぁ、原作の続きを知りたいオレとしてはだめなわけで。
それ以前にあんな死線ばっかりくぐりたくねー!!
 どうしようと思って、とりあえず逃げ出してみようと思ったが、所詮赤ん坊。
首も定まっていないためか、首を傾げようとして逆に体ごとひっくり返りそうになる。

「ぅあ」
 転がったもののうまくガープの腕の中だけすんだが、どうやらその子供らしい態度に彼のハートに火がついたらしい。

「りーぃぃぃすぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「ぶっ!!!」

 ギャァーという悲鳴はつぶれたぶうぶうクッションのような情けない声にしかならず、頬がいままで以上に頬摺りさせられる。
ヒエー!ご勘弁を!!ひりひりする!!


 ………え?

あれ?そういえば今、変な言葉が聞こえた気がしたけど…


「みろリース。じいちゃんじゃぞー!!」
「にゃっ!?(えぇ!?)」


 ……そうして天井に今にも着きそうなほど物凄く高いタカイタカイをさせられている間、オレは恐怖よりも今の発言に呆然としていた。
ありていにいおう。



 "リース"って…



  だ れ ぇ っ!!!








<< Back  TOP  Next >>