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外伝 真実は誰の手に |
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わたしはファブレ家の料理人だ。 職人として、この仕事に誇りを持っている。 私が使える公爵家は難しい立場のお方たちだ。 公爵家に恨みを持つ者は多い。 そのなかには、敵国だけでなく、同じ国の恨みを持つ貴族や民たちからも、少なからず恨みをもらっている。 的であろうとみからであろうと、ファブレという家は、戦争の影響もあって民や敵国からはよく思われることのない立場であるし、国を思うその方針が我儘勝手な貴族たちの目の上のたんこぶだ。 しまいにはとある事件が原因ですっかり教団をも敵に回してしまっている。 私の主たちは、同じ国の中であっても命を狙われる立場にある。 だからこの国の王族たちは、女であれ実戦で使えるような武術をならい、使える素質があれば治癒術を習わされる。 それがこの国の王族というものだと――私やこの屋敷の使用人たちは理解している。 この目で見て、そうなのだとしっている。 そんななかでシュザンヌ様と、ルーク様は身体が弱い。 とくにルーク様は、十歳のころに何かの実験をさせられたらしく、その後遺症で、シュザンヌ様よりも起きている時間が短い。 それだけでなく、あの方だけは幾度となく、直接命を狙われている。 私は料理人であるが、料理を運ぶのは私の仕事ではない。 ルーク様が誘拐され、戻られてからは、体調が優れず食事をあまりなさらなかった。 ようやく食べていただけるようになったとき、今度はルーク様を狙う何者かが食事に毒をいれるという事件が起きた。 そのときはナタリア殿下もいたことから、王族を根絶やしにしようという輩の疑いが持たれた。 もちろん私も疑われた。 それにより、またルーク様が食事をする回数が減った。 そのことを憂いたナタリア様が手料理を持ってくるようになってから、幼馴染効果なのか、日中でもルーク様が起きておられることが多くなった。 そうして元気になったルーク様は、料理に興味を持ってくれ、ご自分でも料理を作るようになった。 そのせいか、最近では毒をもられて寝込むようなことはなくなった。 けれどたまにルーク様付きの毒見役らしい金髪の青年がたおれて運ばれてくることから、私が目を離したすきにまたルーク様を恨む誰かが紛れ込んでいるようで・・・・・・たまらない。 彼が悪いわけではないのに。 side 『夢主1』「――――っというように、あまたの誤解がこの館のあちこちで発生しているようですね」 枕元で言われた言葉に、今にも落ちそうな意識を必死にこらえて、うっすらと目を開ける。 「あなた、あのすさまじい物体を産み出す王女の料理を一度食べましたね」 「粥だと言って口無理やり突っ込まれた紫と緑色をした液体のことなら・・・今でも忘れない」 「ナタリア王女の手作り料理という爆弾を投下されないために自分で料理を行い、たまに運ばれている彼女の料理はすべてガイに食べさせて生き延びてきたと・・・。策士ですねぇ」 料理に関しては前世の記憶に感謝だな。 おかげでナタリア効果で死なずにすんだもの。 それにしてもオレのことよくわかってんじゃないかディストのやつ。 さすがは現主治医。 そもそもナタリアの壊滅的な料理の腕は、館の人間ならみんな知ってると思ったけど、実際は違うというのだろうか。 「この館にあとからきた元六神将のわたし、シンク、アリエッタ以外は、洗脳されているかのように、いたるところであなたに対する勘違いが発生しています。ついでにいうとあなたもいろいろ勘違いしていることがあるようですよ」 なんのことだと、だるすぎて動かない身体に内心舌打ちして、視線だけで問えば、ディストがずれた眼鏡をくいっと手の甲でもちあげ、なにかを考えるように目を細めた。 「根本的に。あなたがおしゃっていたものの根拠はどこからでてきたんですか?」 白衣を羽織ったディストが、診察台もといベッドでぐったりしているオレとカルテを交互に見ながら盛大にため息をついた。 オレは「うー」「うー」うめきながら、だるそうさをこらえて眼を開く。 ディストはなにを言っているんだろう。意味不明だ。 「昼間に起こさないでくれよ。オレ、時間にきっちりなやつだから昼間は起きてるのきついんだよ」 「そんな目覚まし時計のように都合よく朝日を浴びたとたん人は意識を失ったりはしません。 あなたのそれは過度な光アレルギーです。なお、あなたがこないだ倒れてから今日目が覚めるまで四日が過ぎています」 「うそだぁ〜」 「事実です。たぶんいままでもそんな感じだったのではないですか。 庭先などで寝て目が覚めると数日ぐらいたっていたりことは?」 「あー。して、たかも?暦とは無縁な生活をしてたから、いまいち自覚ないけど」 「奥方様や使用人たちの話を伺ったところ、あなた、よく庭先で熱を出してそのまま高熱が続いて、肌は真っ赤にかぶれて数日はざらに寝込むそうですよ。 寝起きがだるかったりはしませんでしたか?いつも長袖の服を渡されていて違和感は?その服は肌の弱いあなたのためにと作られた特別性のようですよ」 聞かされた事実にびっくりだ。 なんだよそれ?まったく知らなかった。 オレはてっきり、夜昼逆転してるせいだとばかり思ってたし、寝すぎで体がだるいものだとばかり。 服とか趣味いいな〜って思ってたら、オレ、かぶれるらしい!? びっくりだ。 「それはただの寝すぎかと思ってた。服のことは・・・オレの趣味をわかってくれてるだけかと」 「はぁー。本人が気付いてないって、どうなんでしょうね。あなたそうとう重病ですよ。血を吐くのもあなたが勝手に思い込んでいる胃潰瘍ではありません。たしかに胃潰瘍の種類によっては血を吐くこともありますが、あなたの場合はまったく別の要因から吐血しています」 「うっそぉ。まじで?」 「まじです。内臓がボロボロです。一部は癒着が起きていますし、いたるところに手術が必要な疾患がうかがえます。半分は先天的なものでしょうが、のこりはいくつもの合併症が起こった末…と考えるのが妥当でしょうね。はっきり言って、あなた、よく今まで生きていられましたね。 あと、脳をゆさぶるようなひどい図頭痛は、ローラレイのせいです。こちらはアッシュ、しつれい、アシュレイ様が、かんぷなきまでに叩きのめしましたので大丈夫でしょう。 あなたが先月ほとんどぶったおれていた間に、大地の降下作業が無事完了いたしました。 その際魔界にてアシュレイ様が、ローラレイとコンタクトに成功し、その後ドカンと一発超振動をおこし、お空に音符帯が一本増えました。 あなたはレプリカです。 巨大な第七音素の変動に、あなた、乖離しかかっていましたよ」 ここしばらくだるかったのはそれか!!! いつにもまして身体の身動きがとらないと思ったら。 っていうか、ローラレイってなんだろう。 頭痛の原拠と言ってたから、うざいものだな。うん。それでいいや。 ところで。オレの病気やらナタリアの料理をひそかに捨てていたことまですっかり解明されているところを見るに、オレが秘密の抜け穴を通って夜の街に繰り出しているのもばれていそうだな。 「それと。このわたしがあなたの主治医になったからには、夜遊びはやめていただきますよ。いいですね!」 「・・・・・・」 ばれてるし。 恐るべし元六神将の情報収集能力。 きっとシンクが頑張っちゃったんだろうなぁ。 ってことは、あの書庫の抜け穴は・・・・ 「書庫には入らないでくださいね」 ばれてるよ。 抜け穴を埋めたではなく、はいるな――ってことは、穴自体は残っているんだろうな。 もしかして別の誰かが今つかってる? 灰「ルークが起きたというのは本当か!?」 夢「あー・・・えっとひさしぶり?」 灰「ローレライがお前が何度乖離しかけたかと騒いで。心配したぞ」 夢「あの、オレのそっくりさん。ディストも言ってたけど、ろーなんとかってなに?」 灰「お前が無事でよかった!」 夢「・・・・・・いや、話きけっての」 ディ「ルーク。これが勘違いっていやつですよ。この屋敷はあなたに対してみんな盲目になるようで。 ちなみにローラレイとは、レプリカたちの親玉みたいなものですよルーク様」 夢「・・・ディストさん。ディスト先生。どうでもいいけど、なんでオレはまだ生きてるんでしょうか?目の前にドッペルゲンガーがいるのに!!これは三日後に死ぬはずだろ普通は!」 灰「なっ!?死ぬなんて言うなルーク!せっかく二人で生きられるのに!!死んではだめだ!」 ディ「うるさいですよアッシュ。いえアシュレイ様。このブラコンが。ルーク様。あなたが鬱になる代わりにわたしが鬱になっても?」 夢「おいてくんじゃねぇよディスト……逝くならオレも」 シ「・・・・・・あんたら。目が死んでるよ」 シ「これでファブレ、大丈夫なの?」 |