有 り 得 な い 偶 然
第1章 H UN TER×H U NTER



01.死×誕生×世界





幾人のものが「死」という現実を目の当たりにしたことがあるだろうか?
それがもし自分の身に降りかかったらと考えてほしい。

自分はその衝撃により、世界に新しく生まれ変わることになった者だ。

では、 ともにいた“友”は、今頃どうしていることだろうか。
今の自分には、彼女がどこかで生きていることだけを願うことしかできない。







::: side 夢主1 :::







 わたしは―― 《 / 》 。

 わたしはきっともうこの世にはいない。
だって、あのときわたしは死んだのだから。



 死んだ――そう理解したのはずいぶん後のことだったけれど、それはきっと間違いがない事実。
 そのときわたしは、親友である 《神崎 / カンザキ》 と大きなデパートにいた。
しかし突然光が目を焼いた。
それとともに激しい痛みと熱さが、一瞬で身体を覆った。
光と音が同時に聞こえた気がしたら、爆発かもしれない。
それでわたしの意識は途切れた。

 暗転。
アンテン
あんてん
あ ん て ん…





 次に意識が戻ったき、わたしの意識は暗闇の中を漂っていた。

 上も下もわからない真っ暗な空間。
体の感覚はあるようでないような感じで、とてもあたたかくて、なにかに包まれているようで、守られているようなそこは居心地がよかった。
意識ははっきりしたものではなく、夢うつつで、常にまどろみの中にあった。

 そこにあったのは、温もりと、音だけ。
聞こえてきたのは声。
それにより、わたしがいまだれかのお腹の中にいて、あの瞬間にやはりわたしは死んでいて、そうして生まれ変わったのを理解した。





 それから赤ん坊として生まれ、しばらくしてからようやく目が見えるようになったとき、そこにいたのは赤い髪に金色の(瞳孔開いた獣っぽい)目の父親と、栗色の髪に若草色の瞳をした母親だった。
二人の間に、わたしは男として生まれていた。

 おなかの中にいたときからなんとなくは想像がついていたけど、生まれた世界は、漫画で有名なHUNTER×HUNTERの世界だった。
だって、やたら「ハンター」って単語が連呼されてるときてる。嫌でもわかるっての。

 漫画の世界に転生。
だからこれはわたしがみている夢なんだろうって。ずっと思っていた。
そんな場所。現実に会ってたまるかよ!くそったれが!というのが本音で。
トリップとか転生とかありきたりなものは、物語として読むぶんには好きだが、自分がそれの主人公だと言われると――いやね、いろいろ面倒くさくて。
 夢であればいいと願ってた。
まぁ、とちゅうでさすがにここは現実なのだと諦めたけどさ。



 新しく生まれた先で、母は念能力者であった。
毛糸にオーラをとおしてあやつる操作系能力者。
さすがは羊とともに暮らしていた遊牧民出身だ。縛り癖のある母の武器は主に、あみぐるみの操作だ。
たまに母手製のセーターを着た父が操られている。

 ここまでくれば、そりゃぁ、ここがHUNTER×HUNTERだといやでも気がつく。
なによりやたらとハンターという単語が跋扈してるしねぇ。
 そんなこんなで結局わたしは、念を覚えるのことになるのだけど…。
そうしてわたしの第二の人生が始まった。

 でも、それなら、わたしと一緒に事故に巻き込まれた友人は、どうなったのだろうか。
無事であればいい。
もしかすると彼女もまたこの世界に生まれているかもしれない。

 ひとつ、この世界に来て自分を改めた。
そしてわたしは自分を「オレ」と呼ぶことにした。
 ふたつ。目的を決めた。
親友だった を探すこと。
 三つ目は、何が何でも生き残ること。
人生はいつ何が起こるかわからないと、身をもって体験したばかりだ。生きたいという欲求は誰よりも強くあった。
人生二度目があろうとやり直しはきかない。だからこそこの二度目の人生をできるだけ楽しみたいと思う。

 とりあえずこのままこの世界で生きるために、オレははじめに《生き残る方法》から学ぶことにした。
 だってあの人外魔境の世界だよ!?
なにもしなかったら死ぬじゃん!
オレ、まだ死にたくないっての!!

ええ、もちろん。がんばりますとも。









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もっともっと生きたいよ
まだ死にたくないんだ
だから原作キャラと会わないで済めばいいと思ってるよ








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