【短編】 たまには泣いてもいいんだよ? |
-- side オレ -- オレ、うずまきナルト。 しょせん異世界から原作知識を持って、成り代わった、転生者。 そのせいか、オレは“うずまき”の血が濃いので、髪の色が一部赤い。 ぞくにいうメッシュだ。 そしてどんなにチャクラを増やす修行をしても増えないし、いつも実体化した九尾(人形サイズ)を肌身離さず持っている。 オレが四代目火影の子供であることは極秘とされている。 九尾の人柱力であることを知るのは、オレのお産に立ち会った三代目火影の妻と、とりあえげてくれたタジさん。 そして両親と上層部のみ。けっして三忍さえしられていない。 さて、両親健在の、赤メッシュのうずまきナルト忍法帳。 原作とはまったく変わってしまったこの世界で、成り代わったナルトなオレはなにをしているかというと・・・。 「なぁなぁ。ちゃん付けで呼んでもいいってば?」 「いや。 だめよ。呼び捨てじゃないと反応してやらないんだから」 「そ、そんなぁ〜」 原作のNARUTOを読んだときから大好きだった女の子に猛烈アタック中。 「イノちゃ・・・」 「いやったらいや!」 「そんなこといわずにさぁ〜。オレってばけっこういけてね?」 「ぜんぜん!いつまでも子供みたいに人形持ち歩いてるし、髪めだつし。 服も変。それで忍のつもりなの?」 「髪は地毛だってばよ!!これは人形じゃないし。服は両親の趣味で・・・オレに選択権はないんだってばよぉ」 「服も自分の好きにできないなんて気弱な男嫌いよ。 あんたを好きなヒナタの気持ちがよくわからないわ」 「ひ、ヒナタはただの幼馴染みだってばよぉ〜。べつにやましい感情があるわけじゃ・・・」 「あんた、サクラが好きなんでしょう?わたしサスケくんがすきなの」 「・・・でもイノの好きってサクラちゃんのための」 「うっさいわよナルト」 ヒナタと意見が合うのは、お互い気心の知れた幼馴染みだから唯一口が言い合える仲であって、ヒナタがオレに好意を抱いているわけじゃないのに・・・。 ネジは去年一緒のクラスだから知ってるだけし、なにより幼馴染みその2だし、そりゃぁ先輩って呼ばずに呼び捨てにするのも当然じゃないか。 サスケは男だから呼び捨てでOKっで。 でもオレとしては本当のナルトじゃないし、好きな相手だけ「ちゃん」をしているわけじゃないのに。 どうしても成り代わったナルトだから、昔ながらの習慣で、女の子はチャン付けしたいんだよね。 そうじゃなきゃ、対等になった気がしない。 呼び捨てって恥ずかしいんだけど・・・。 だから決して“好きな相手”に「ちゃん」付けしているわけではないので、サクラが好きなんでしょう?と断定するのはおかしいから! たとえ、今、知り合いの女の子でサクラちゃんだけ「ちゃん」付けしていようとも!! もしオレが原作のナルトそのもので、一番好きな特別な子だから「ちゃん」付けするのだとしたら、まちがいなくイノにのみチャン付けしてるから!! 誤解だイノ!! だけどイノちゃ・・・イノはわかってくれない。 しかもオレが、めちゃくちゃアピールしてるのに、オレを一番見てほしいはずの当人だけが理解してくれない。 「おいしいきのこをみつけたんだってばよ!」 「今度、甘栗甘の半額特売日があるんだってばよ。一緒に・・・」 「みてみてイノちゃ・・・イノ!これオレが作ったケーキなんだけど」 「今日サクラちゃんとサスケがね!なぁなぁ、話きいっててばよ!」 っと、いろいろ頻繁に話しかけるのはイノにだけなのに。 なのにイノは、なにを誤解しているのか、オレとヒナタをくっつけようと、オレがデートに誘えばかならずヒナタを誘ったり、都合ができたとか言ってヒナタには詳細を告げずに呼び出したりする。 オレがうきうきしてイノを待っていて、そこにイノちゃんに誘われてきたんだけど・・・と、ヒナタが現れたときのオレの絶望感。 ちなみにこういうことが多々あり、こういう待ち合わせでヒナタがオレをみた瞬間の顔は、幼馴染みにのみみせる嫌そうな苦虫でもかんだかも酔うなきまずそうな顔だ。 「ナルトくん。イノちゃん、また?」 「うん。またやられたよヒナタ。オ、オレ、イノを美味しいケーキ屋に誘ったのに・・・」 「ナルトくんがケーキ屋!?あの甘いもの大嫌いで、生クリームの匂いで吐くようなあのナルトくんが!?」 「うん・・・」 「頑張ったんだね」 「うん・・・。オレ、もうだめ・・・だってばよ」 ヒナタと向かい合った瞬間。オレの目からはホロリと涙が零れ落ちた。 結局、なんだかんだいって仲のいいサスケとサクラに、ケーキ屋の無料券を渡した。 横でヒナタがこまったような笑みを浮かべてオレの背をなで、オレの頭の上では九尾のキューちゃんが腹を抱えて笑い、サスケは嬉しそうにチケットを見つつ「またか」という無言の視線をオレにむけてきた。 サクラちゃんからは「がんばりなさいよ」とありがたいお言葉つきの同情の眼差しをもらった。 なきながら歩いていたら、前方からシカマルが相変わらず面倒くさそうにやってきて、オレの姿を見て顔をひきつらせた。 そんなに絶望感がにじみ出ていたのだろうか・・・。 いや、でていたかもしれない。だってこれで何度目だよって感じだし・・・。 シカマルには通り過ぎ際元気付けるように肩をたたかれた。 シカマルと一緒にいたチョウジからは、限定ポテチを一枚もらった。 みんなの視線がやたら痛い。 「がんばれ」 という、無言の応援が聞こえてくるようだった。 原作読んでたときから好きだったんだけどな〜 実物に会ったらもっと好きになって・・・ オレってそんなに“いけてねー派”かなぁ?(涙) |