劇場版 『ミュウツーの逆襲』 |
-- side 夢主1 -- バイトをしながらの流浪の旅の最中。 実はオレのつくる料理に、はまってくれたひとがいて、その人がオーナーになって小さな店をひとつ任されていたりする。 だから旅をたまにやめて、ポケモンでひとっとびして気が向いたときその店を開けている。 オーナーとは以前も会ったことがあるのだが、彼はオレが誰か分かっていないみたいなので、それはそれでいつ気付くだろうとニマニマ見守っていたりする。相棒のピカと賭けをしているけど、さていつ答えは出るのやら。 ちなみに店の場所はオーナーの持つ会社の施設の中。 いうなればオレは、学校とか会社などについている食堂のスタッフといってもいい。 店をひとつ任されているとは言うが、たくさんの小さな店がそこにはいくつも集まっているフードコートのようで、ひとつの店がしばらく空かなくても社員のお腹は満たせるようになっている。 つまりは、オレの店といってもその程度のものだ。 それにオーナーさんの部下はほぼ出張が多い。 仕入れと営業と宣伝と・・・大変だよね大手企業は。 この本部に人間が残るとしたら、オーナーさんや研究班のメンツが少し残ってる程度だろう。 そうそう。 ここはポケモン世界。 だからちゃっかり食堂へのポケモンの持込が許可されている店が多い。 オレの店も同じだ。 っと、いうか、オレしか人間がいないせいで、ポケモンたちにも料理を作ったり運ぶのを手伝ってもらっているのだ。 もちろそんそんなオレがひらく店だから、ポケモン用のフードもある。 実はオレ、人の料理だけでは飽き足らず、っというか料理が好きなことと手持ちのポケモンたちが注文が多かったから、気がつけばポケモンフードやポフィンづくりとか上手くなっていた。 だからお客さんは人間だけにとどまらない。 フード以外にもポケモンが好みそうなものからいろいろそろえているから、海に来るだけの客も結構いる。 なにせポケモン自身がコックを担ってる時もあるので、ポケモンたちのことも考えて作られている物がおおいのだ。 人もポケモンも仲つむまじく食事にやってくる。それがオレの店だ。 どの世界も同じだが、世界ごとに特化し、その世界でしか手に入らないといった食材というのがある。 この世界ではポケモンが主に好むモモンの実とかそういった特別な木の実の類がそうだろう。 トレーナーをやめたあとはコーディネーターのようなまねをしながら世界中の食材をためして回ったこともある。 だからポケモンにもお客様にもうちの気まぐれ店舗は大人気だ・・・と思いたい。 「閑古鳥が鳴いているな」 「…オーナー」 やってきたのはピッシリと高そうなスーツに身を包む妙齢の男。男はこの会社のトップにして、この店のオーナーだ。 彼は楽しそうに適当な椅子に腰をかけるとさっさとメニューから選んで注文をしてくる。 そんなマイペースな男にオレはムッと視線を向ける。 「閑古鳥にしたのはお前じゃん。こういうのやめろよな、なんで九割の人員を出向させるのさ。研究者は研究に没頭してばっかで店に来るどころか食事とってのかさえ怪しい連中ばかり。店をあける意味無いし!ってか人がいないんじゃ店開けるのももったいないっての!!」 「わたしはお前の雇い主のはずだが、お前は相変わらずだな」 「あんたの会社の運営方も相変わらずで」 雇い主だろうが、会ったときからこんな感じなので、いまさら直す必要性を感じない。 オーナーもそれを承諾しているので、オレと彼の間柄はいたって良好だ。 今日のように店を開けたとたん社員をどこかに派遣さえしなければな。 嫌味かと何度か思ったが、実際のところオレのタイミングがいつも悪いだけらしく、ちょうど皆さんがこの建物を出た直後にオレが戻ってきたというからなんとも恥ずかしいものがある。 まぁ、オレの運のなさは前世から変わらないと思うので、今度ラッキーでも捕まえてこようかとさえ思ってしまった。 「ところでオーナー最近、本職に一度復帰したんだって?」 「耳が早いな」 「ちょっとね」 このひと、ここまで馬鹿でかい会社のトップでありながら、本職を厳かにしているらしい。 そもそもこの大手育て屋企業に力入れるのはいいんだけど、しまいにはどっちが本職かわからなくなってきてる。 「仕事しろよオーナー」 「しているぞ。たくさんのポケモンを強く!美しく!育てる!それが我々だ」 「いやいや、それ本業じゃないでしょうに。まったくもう」 ポケモンを育てるのが生きがいってのは分からなくもないんだけどねぇ。 そうやって副業ばかり力を入れていたら、こっちの会社がでかくなったんだと。 笑えねぇよ。 そもそもこのおっさんの本職だって【ポケモンを育てるべき側】【トレーナーの育成】と名誉ある仕事のはずなんだ。 それがいつのまにか遺跡発掘とかいきまくってるし、ときには伝ポケに挑みに行ったり。 オレも遺跡とかそういうの大好きだし、ましてやポケモンとバトルしたり育てるのも悪くないし、作った料理を褒められるのも悪い気はしない。けれどなまじなりにも会社の経営者が趣味に走りすぎて、支離滅裂になってどうするんだとつっこみたい。 「あ、もし本業に完全復帰してさ、こっちの副業赤字になったらオレがこの会社もらっていい?」 「なにをするきだ?」 「なにって、生ぬるい目で友人亡きこの会社の行く末を見つめつつ」 「わたしはまだ死んでないぞ」 「あんたじゃないって。 そんでオレの店のチェーン店作るんだよ。いい具合に支部はあちこちにあるし」 「・・・まぁ、そのときはそのときだ」 「あいよ」 オレはここで雇われて店を開けているけど、彼らに関わる気はないんだ。 ここがアニメの世界と違からとあそういうのは関係なくて、死んだ友人のたのみで、オレはこのオーナーの下にいるだけだから。 オーナーの部下にはならないだろうね。この会社にも手助けさえしないだろう。 ただ、もしものことを考えて、ここの会社の人たちが職を失ったのなら――そのときは力を貸してもいいとは思っている。たとえばオレの料理技術を伝授するとか、店をまかすとか。そのぐらいはいいかなとは思ってるだけで。 そうそう、この年の割には結構はっちゃけちゃってるオーナーの本職の情報ってのは、親友の息子→親友→オレっていう経路と、オレにつきまとうストーカーのふたりから連絡を受けたものだ。 ストーカーっていっても正体はポケモンで、オレのアルバムのすべてに必ず亡霊のごとく写っている。 理由は「自分に近い気配に惚れた」とか、意味不明な理由でなぜかなつかれたのだ。 祓っても追い払っても嗅ぎ付けてついてくる。 例えて言うなら、原作サトシのプリンのごときしつこさだ。 奴からしてみたらオレは、あのストーカーポケモンにとって友達として認定されているらしい。 やっかいな。 オレは無精者だから、自分のポケモン全員に愛情をささげて育てる自信がない。 なのでトレーナーを引退後は、手持ちはできる限り入れ替えるようにして、本当に好きな奴以外は野生に還したり博士にあずけたりしている。 だから「くるな」っていってるのに、毛づくろいはしなくていいからお話をしようと「かまってかまって〜」と四日に一度はやってくるあのストーカーを倒す手段がほしくてたまらないのだが。 むしろ旅の目的を其れに返上してもいいかなと最近は思い始めている。 あのストーキングやろうをたおすための最強のポケモンをゲットしたい。 そんな理由で旅をしているとか伝ポケ追いかけているとか、すっげー恥ずかしくて人に言えない。 伝ポケに会って一言目には「オレをストーカーから守ってくれませんか?」と話を持ちかけるのだ。 これってどこのCMだよってかんじだよな。 言うのを忘れたが、実はオレ、今の人生の前(しょせん前世のことである)は人間でないことが何度か続いたせいか、普通にポケモンの言葉が理解できる。 たぶんあのストーカーポケモンに好かれたのもこれが原因じゃないだろうか。 「っで?なんでおまえがいる?」 オーナーと取り留めのない話をして、休憩とばかりに外にでたとたん―――あのストーカーポケモンがオレの目の前に現れた。 それと同時にオレは人気のない森の中にいた。 テレポートさせられたようだ。 「みゅ!」 いわく、「あの子を助けてあげて」とのこと。 おい、まてこら。オレが助けること前提かよと思わずにはおれない。 こないだなんか、目の前でミュウミュウないている奴の尻尾を思いっきりつかんで、鍋につっこんで、ふたをしてひもで重石をくくりつけておいたというのに。 というか、あれから30分もたってない。 オーナーがみせに来る前に鍋に入れたのに。 どんだけ規格外生物なんだこのストーカー。 「なんどいったらわかるのかな?オレはかかわりたくないの!自由を謳歌してるの! わかるか?お前がオレのつくるポフィン目当てで盗み食いしたあげく、とんでもない戯言を置いてにげようが。オレにはいっさいがっさいポケモン世界のトラブルは関係ないの! よっておまえ、あのままおとしぶたのえじきになってろよ!!なんでここにいるんだよ!」 縄で捕獲して埋めても、重石をつけて海に投げ込んでも。 なぁ〜んてことをしても。 こいつは器用に縄をぬけて、姿を消して逃げるんだけどさ。 こんなこともあろうかと常に常備していたまひの効果を持つポケモンの粉をまき散らし、ピンクが動けなくなった瞬間にキャタピーをボールからとりだし糸を白で拘束させる。 そのあとはいつもと同じ。 「ともしび!超特急ですててこい!」 「ぐぉぉぉぉ!!!」 了解とばかりに口から一度炎の息吹を吐き出したリザードンは、白い繭状態の塊をつかむと、あっというまのスピードでかなたに飛んで行った。 再び鍋に入れて、具材と一緒に煮込まれなかっただけ感謝しろよ。 とりあえずもう奴の気配はないかと目を閉じて確認したが、目を開けた瞬間目の前に淡い桃色が浮かんでいた。 「でたなストーカー」 『みゅぅ〜(ぼくをまってるんだ)』 「や。だから勝手にいけよ」 『ミュ。ミュミュミュ(あのこは仲間を作ろうとしてるんだ)』 「いいことじゃん。ひとりは、さびいしいよな」 『みゅぅ〜!!(ありがとう!てつだってくれるんだね!あの子を助けてアザナ!)』 「は?今の会話でなんでそうなる?」 『みゅみゅ〜ぅ!(あの子は××島のポケモン城にいるよ)』 ミュウはそれだけ言うと嬉しそうに「みゅぅ〜」とひとこえあげると、パッと消えた。 今度こそ本当に気配がなくなったことと、聞き覚えのある名前の島と、爆弾を見事おいていきやがったあいつにオレは思わずじめんの意思を蹴った。 「映画かよ!!」 【ミュツーの逆襲】編がはっじまるよ〜。って、有り得ん!! 仲間ってコピーポケモンのことかよ。 思わずオレにどうしろとというか、サトシがこの世界にいるからあいつらがなんとかするだろうとか投げやりな気分になった。 っていうか、知ってたけどね。 ロケット団のサカキが一瞬だけジムリーダーをやったとかで、シゲルくんがぼろくそにやられたともオーキド博士経由で聞いてる。 そのときサカキはミュウツーをつれてったみたいで、シゲル君がおかしなエスパーポケモンにやられたから何かしらないかってオレは博士に尋問されたぞ。 うちのアホなサトシは、ミュウツーの去ったあとのトキワジムを訪問したみたいだけどね。 オレがトレーナーだったときは、サカキって最強に強かった気がするよ。さすがにロケット団ばかりに心血注いで、あまりにもジムをあけるから。免許はく奪されてジムリーダーはグリーンにかわったんだけどさ。サカキさんまたジムリーダーはじめたらしいね。こりないなぁ。 これからカントーのジムリーダーたちは強くなりそうだ。 あるいはもうジムリーダーの強さのピークはすぎたのかな? オレのときはサトシや初心者がかなう相手じゃなかったんだけどなぁ。 ********** なんだかんだいいつも結局きちゃいました。 だってサトシがまきこまれてるんだよ!? あの子、間違いなく、後先考えず飛び出すでしょ。それはまずい。 一応にしてとりあえず、オレもマサラ出身ということになっているから、ハナちゃんが泣くのはごめんだ。 ハナちゃんの旦那が行方不明になったときも。ハナちゃんのお父さんが行方不明になったって連絡が来た時も。いっつも涙をこらえて、だれもいなくなるとハナちゃんはないてるんだ。 それに輪をかけてサトシはいつも危険に突っ込んでいく。命がいくつあっても足らないだろうと思うほど。 そんなサトシの旅立つ日、ハナちゃん泣いてるのをたまたま家にいたオレはみちゃったんだよね。 「これだから男の子は」て言ってたけど、嬉しそうだけど悲しそうだったよ。 そんなけなげなハナちゃんをみて、サトシの愚行を黙ってられるわけないだろう。 ここはカントーだし、オレ、知り合い多いからあんまり近寄れないんだけどね。リザードンの“トモシビ”にのって、お空の上から一通り、ミュウツーとサトシたちのこと見てました。 「ホウサクさん。あんたが気に入ってる子、無事でよかったね」 涙を流すポケモンたちによる奇跡で生き返ったサトシ。 オレとリザードンの横で、空中停止して、サトシのことをガンミしていたオレのお友達1号ホウオウの“ホウサクさん”が、起き上がったサトシをみて安心したように虹色の翼を広げてどこかへとんでいく。 やだサトシってば愛されてるぅ〜。 ホウサクさんってば、かなり堅物なのに。 なにして好かれたんだあの子。 それにしてもミュウもストーカーをするなら、ホウサクさんをみならってほしい。 ホウサクさんはホウオウだから金ぴかに光っているとういうのに、これまたかなりの頻度でサトシの様子を見に行っているけど、ばれたためしがない。 ミュウほどひつこいストーカーというかんじではないし、むしろ見守られてる感じだよね。 いいなぁ、サトシ。ストーカー交換してくれないかな。 やっぱりあの桃色天然あとで一度しめようか。 「やっぱりね」 そのときオレたちはただの傍観者だった。 アニメの主人公がいるんだから、イレギュラーなオレが手を出すまでもなかったようだ。 ――こんなミュウツーの逆襲。 |