01.壊れかけたままでよければ |
前世、犬でした。 そんでもって神様でした。 時期、アマテラスとかすごくない? とはいえ、ヤマタノオロチとたたかったのは父だ。 オレはその父に、よばれているからいっておいでと地上に放り出され、そこから社畜のごとく長い旅をする事なった。 そして旅を終えたことであっけなく死んでしまったから、こうして転生しているわけですが。 なにをしたって・・・長旅に疲れすぎて頭が逝っていた。その状態で笑顔で「おかえり」なんとほざく父に腹が立ち、飛び蹴りをくらわしたんだ。 父親には大打撃を与えることに成功したのだが、疲れすぎていたんだろうな。着地に失敗してしまい・・・そのままあっけなくぽっくりいたっというわけだ。 どこかで懐かしい?ヒゲの誰かの爆笑が聞こえたような気がしたが。 まぁ、いいや。もう疲れた・・・そうおもって、激しい頭の痛みに身を任すように目を閉じたのだ。 ふふ。おもしろい戦歴だよねぇ〜。 ってぇ!!戦ってないよ!? それで向こうの世界の太陽の次代化身はなくなりましたとか、まじわらえない。 おとんよ。オレの分も頑張って世界を照らしてくれ。オレは疲れたんだ。 -- side オレ -- っで。 目が覚めたらまた生まれていて、生まれたら今度は鹿でした。 人間語がしゃべれません。 とはいえ、それは以前の世界でも同じ。 でも人間語わかります。 日々は仲間と一緒に草を食べるのが日課です。 ハイ。オレ、鹿です。 そんでもって名を《ヤックル》といいます。 けっして、某乳酸飲料ヤク○トではありません。 赤っぽい毛並みに、可憐な丸い白色シッポ。ねじられたような大きな角―――鹿です。 そんでもってオレの主は、日本のアイヌ民族のような集落にすむアシタカという、名のとおり足が長く背が高い青年です。 次期里長だとかで、とても落ち着きがあります。 『・・・・・・』 もうおわかりでしょう。 今度は【もののけ姫】の世界ですよ。 いや〜。人間に生まれないのが連続とか、この先の未来が心配になるね。 そういえば、前世も含めると、四足歩行歴はもうどれくらいになるんだろう。 前世の時点で、四本の足になれなくて最初はうまく歩けなかったのがなつかしい。 いまとなってはあれだ。すでに人間語なにそれ?おいしいの?こっちの草のほうがうめーだろ。な、見事な鹿ライフをエンジョイしちゃってるオレです。 残念ながら見事なまでに立派な雄シシですが、実はいまだ前世の能力を若干ひきづっているらしく、“神”と呼ばれるような特別な存在にはオレの身体中をおおう『赤い隈取り』がバッチリ視えるらしい。 今回は犬、もとい狼の体ではなく、鹿だけどな。 前世の能力があるかはわからない。 なにせ今回はシッポがちょこんとした丸いちいさなものなので、前世のようにシッポを筆代わりに『ふでしらべ』とかできないのだ。 そんなわけで、人間には見えないだろうけど『赤い隈取り』があるので、ただの鹿というのには語弊があるかもしれない鹿なオレです。 さてさて。赤シシもとい鹿科な正式名称不明なオレですが、相変わらずこの魂は《セカイ》を取り込んだまま。 ああ、そうそう。《セカイ》というのは、オレが海の広がる世界から連れてきてしまった髭の欲に合う男の魂のことだ。名はロジャー。 死神の世界でようやくロジャーを俺がつれてたあげく、そのまま転生をしていると判明した。 魂だけなので、オレのなかにはいるけど、特に実態できるわけでもないので、他の世界ではたまに声をきくことがあるぐらいだ。といってもそれはオレの妄想でただの幻聴かもしれないが。 『ふふ。あっははは。おかしいの』 どうせ人間には動物の言葉などわかるまい?動物の表情などわかるはずもない。 なんだか突然おかしくなって笑ってみる。 そばの同じアカイ鹿の仲間たちが「こいつこわっ」と一斉に離れていくが、まぁしったこっちゃない。 ああ、能力も役目もなにもない獣生万歳!! もう仕事もしたくない、とんでもない敵と戦うために世界を旅するのも嫌だ! オレはこの世界で脳みそを働かせるのをやめる! なにがおかしいのかわからなくて、それでも笑ってるオレがいます。 どうやらこの魂も相当方ガタがきているようですね。 まぁ《セカイ》さえ壊れず共にあるのなら、人間としての矜持だって捨てて草も食べますよオレ。 抵抗?ないねぇ、そんなもん。 むしろただの獣なので過多な役目を解か押し付けないように! オレはただの獣なので!! アッハハ。ぶっ壊れ気味ですねぇオレ。 ああ、でも―― 『貴方の方が壊れていますねぇ』 いやですね〜。ああ、こわいこわい。 背後からザワザワザワ!!っと虫がはいずるかのような、身の毛のよだつような音をたててやってくる黒い塊。 呪いに負け、自ら怨嗟の化身と成り果てたでっかい猪が来ましたよ〜。 え〜っと、たしかあれも神さんですよね? 前世のオレの仲間ですね。わかり・・・たくもありません! だって、あいつ。ノリ悪い。 マイド〜。オバンデスワ。 って声をかけてみたけど応答なし。 ブギヒー!みたいな猪神さんの悲鳴のような呪詛めいた声だけが返ってきて、こりゃぁやばいぜと、オレも背中にアシタカの兄さんをのせてパッパカパン。 おやおや、女の子が三人目の前にいますよ。 アシタカの兄さん助けてやるべきですよ。 ってぇ!? なぜオレをおいかけてくるんです猪神さんよ!! ひぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! ウサギじゃないけど、脱兎のごとく逃げました。 パカラッパカラッパカラッ。パカラッパッパン。 蹄の音は愉快で楽しいけど、触手のような呪いがすぐ背後まで迫っているので、イヤ〜ンバッカ〜ン!って感じです。 今のオレは人間じゃないですから、武器も使えないし、体術無理ですしね!逃げますよ!! アシタカの兄さん、オレ、こんな感じでちょい狂ってますが、まだ死にたくないです! ご飯は草でいいですし、鹿で我慢するので、ヒーバーすんぜぇ!!っじゃなくて!たすけてくださ〜い!! ヘルップゥ!! って、やっべぇ。ここカタカナ、もとい英語通じねぇわ。 ※元最高神アマテラス(時期)だった夢主は、転生を繰り返していくうちに魂が砕けかけている状態。 ヤマタノオロチとの戦いで摩耗しすぎていたんでしょうね。 あるいは前世で頭を強打した時の名残か。 まぁ、いろいろあったせいで心はすでに壊れていて、魂の消耗も激しくて、本当にいろんな意味でそろそろやばい状態。 狂っている自覚はあるけど、狂ってるからこそ「それがどうした」的なハイテンションな夢主。 |