* 第2世界 0NE PIECE * 02.ある船乗りの拾い物 |
空から降ってきた子供。 その温もりをおれは知っていた。 これは“彼”か。 “あの青年”とであったのは、たしかおれが十代のとき。 じいさまと言ってうしろをついてきた見知らぬ“おとな”。 お前の方が年上だろうと言えば、彼は哀しげに苦笑を浮かべる。 そうしてある日、彼は消えた。 ああ、あんたは、ようやく“帰ってきた”んだな。 ようやくこの世界にやってきたんだな。 ならあの青年は未来の―― 腕の中の小さな子供。 けれど今度こそ逃すまいと強く抱きしめた。 ::: ある船乗りの視点 ::: 空に違和感を覚えて、“悪魔の実”の能力者による襲撃かと、近づいてくる気配に警告の意味もこめて覇気をぶつけた。 弱い者ならただじゃすまないだろう。 船の仲間達は俺が空を見上げて殺気立っているのに不思議そうな顔をしていたが、能力者かもしれないという考えにすぐ達したらしく、皆がみな、空を警戒しだした。 しかし違和感はすでに消えていたので、気絶でもしたか死んだに違いない。 そう思って来訪者を待っていた所で、ひゅーと落下音と共に二,三歳くらいの小さな子供が降ってきた。 高さも威力もある。 このままでは死んでしまうなと慌てた俺は、落ちてきた子供を受け止めた。 今度は殺意をこめず、覇気で俺と子供の身体を覆った。 瞬間、ぶわりと子供の身体から俺と同じ覇気が溢れ出たかと思いきや、俺たち二人を抱くように温かい何かに包まれるような感覚がし、子供を中心に黒い液体が現れた。 臭いからして墨だ。 それはひどく“なつかしい”かおりだった。 まわりのクルーたちも何かを思い出すように眉をしかめる。 それは警戒ではなく、懐疑。 墨は俺達のそんな感情を感じているのかこちらを襲うことはなく、ふわりふわりと周囲を埋め尽くして行く。 墨の能力者だ。 そんなもの聞いたことはないが、ここはグランドライン。なにがあってもおかしくはない。 悪魔の実では、聞いたことはない。 きいたことはないが・・・ だが俺は、その“念能力”を知っていた。 「・・・“やはり”能力者か」 その子供はまだ息があり、口元が小さく動いたので、耳を近くへ持っていくと、子供はなぜかジンという男の名を呪詛と共に吐いていた。 そして最後に・・・ 『父さん・・・』 俺を父親と間違えているのか、俺の方にすりよってきた。 ぎゅっと服をつかむ手は小さく、オレにもしも子供ができたらこんな感じなのだろうかと・・・。 抱きしめ返していた。 大丈夫だと声をかけてやれば、円を描くようにあふれ出していた墨が消えて、パシャンという音と共に水だけが残った。 ああ、ここへ帰ってきたのか。 おかえり――“”。 -------------------- だれのぬくもり? おとんじゃ、ないよね? だって父さんは・・・・・死んだ。 なのに―― 抱きしめられた。 その温もりはなにより温かかった。 |