【短編】 食を語るなら子を育てろ |
時間軸は原作ハンター試験の二次試験「寿司」より そこから過去の回想へ ---------------------------------------------------------- -- side オレ -- 「すごい!アザナって料理うまいんだね!」 キラキラとにっくきジンの息子が話しかけてきた。 それにチラっと一瞥して、すぐに視線を包丁と魚に戻す。 「はじめからそうというわけではないがな」 そうだ。前世のときだって、料理は得意じゃなかった。 もともと料理はやろうとさえ思えばできないことはなかった。 菓子類は適当にやればできたが、なぜか家庭料理というのは上手くできなかったのだ。 見かけがとにかく悪い。味はまぁ悪くないと思ったが。 第二の問題がオレだ。 前世からのズボラ性分で、食べられるだけましという概念でもって生きていた。つまり、毎日同じ飯だろうと若干苦かろうと気にしなかっかたのだ。 よってオレは一人暮らしをするにあたり、最低限必要な栄養さえとれれば、一人前を作るぐらいなら「適当でいいか」となるか、または作らなくてもいいだろうという結論に到達しとしまっていた。 そのときのオレには、食することで生きていくという必要最低限の条件さえ人間として満たされていなかったといっても過言ではないだろう。 そんな過去をどう乗り越えたかって? いっぺん、子を持つ親になってみろ。 かわいいわが子にひもじい想いなんかさせたくないだろう? それがオレの料理を頑張ろうっていうきっかけだった。 オレの常識を覆したのは、こどもの存在だった。 オレのバカげた価値観がそれにより一変した。 ********** あれは、オレが彫師の師匠の家を追い出されてからのこと。 実はしばらくは、小さな幼いヒソカをつれてあちこち放浪して暮らしていた。 なんか実家に帰ると、ヒソカが原作ヒソカに近づきそうで嫌だったんだ。 だからその日ぐらいの旅をして暮らしていた。 生計は主にオレが道端で念能力を駆使したマジックを披露して稼いだ。 オレの念能力の一つが、影の中にあるものを別の影の中に移すことができたため、 それをうまく利用し、布をかぶせたなから違う大きなものを取り出したり、別の場所に移動させたりと、奇術にうまく取り込んだのだ。 そうして地道に稼いだ。 っが、やはり道端の物乞いのようなことをして毎日必ず食べ物にありつけるわけもなく、たまにひもじい時もあった。 そういうときは、周辺の獣を狩るのだが、冬だとうまくいかないこともある。 あと、この世界だと特殊な地域というのはかなり存在し、このハンター試験の会場のように特殊な場所だと、限定された生き物しかいないときもあるのだ。 おかげで、小さな幼い子が、我慢を覚えてしまった。 あるとき。人を集めることもできず、物を買う金もなくなり、周囲に森もなかった。 ついに食べ物も底をつき、食糧難に遭遇して三日目。 今日も周囲の植物で食べれそうなものをなんとかするしかないだろうとため息をついた。 そんなときのこと。 「大丈夫パパ?」 「あ、ああ。ごめんな今日もお前にご飯食べさせてやれそうもない」 「平気だよ。僕、お腹すいてないから!それにほら!この草食べれそうじゃない?」 そう言って笑顔で何でもない事のように子供が指差すのは目の前で揺れている草。 そこにあるのはたかが草だ。 果実も実もなにもない。 けれどそれだけでも食べれるだけいいとこどもは言う。 こんなおいしくもなんともないもので、はらがみたされるはずもないのに。お腹がすいてないはずなにのに。 こどもはニッコリと笑顔でそう言ったのだ。 子供を自分が育てると決めたのは、オレなのに。 その責任がオレにはあったのに。 だというのに、面倒を見て気を使うべき大人であるオレが、逆にまだ大人の庇護下にいていい小さな子供に逆に気を使わせたのだ。 その瞬間オレは衝撃を受けたね。 食糧らしきものがなくても。 せめてこんなたかが草さえ、きちんとした食べ物になるようにしなくちゃいけないって思ったんだ。 しかもいままでの一人暮らしのオレのおかしな価値観のせいで、料理はあまり料理と呼べるようなものではなかったはず。「くえればいい」なんてもので妥協で作っていたに過ぎない。それこそ最低だ。 ああ、本当になんて最低な大人だろう。 こどもに気遣われてるようじゃ、オレはこの子を育てる資格はないと思ったね。「こどもが生意気なこと言うんじゃない」「大人をもっと頼れ」そう、余裕で言える立派な大人になりたいって思ったし、その台詞を今この場で言えないことがすごく悔しかった。そのとき、泣きたくなったな。もうさ、自分が情けなくてしょうがなかった。 だからそのとき決めた。 もうひもじい思いは絶対させないって。 どんな場所にいっても必ず食料となるものを調理できるよう知識をつけた。 包丁の使い方を学んだ。 自分で食べれるものと食べれないものをわかるようにした。 旅に出かけるときはかならず、調味料となるものをもちあるくことにした。 それが――オレが料理を始めるきっかけ。 美食ハンターを目指した理由。 ********** 「――っとみうわけで。こうして今はきれいに魚をおろせるわけだけど」 ゴンやクラピカ、レオリオが側で興味深げに耳を傾けてくるので、しかたなく話してやっていたわけだが。 慣れた手つきでさばいていていた包丁をおき、チラリと原作組み、およびその周囲を見回す。 ハゲ忍者のせいで、すでに寿司の作り方は全員しってしまっているが、食べ物でさえない。ナマモノを試験管に出すってどういうこと? あまりの惨状にキレた。 「美食ハンターなら、食材をむだにするんじゃねー!!」 勢い余って、美食ハンターだという試験管にむけて、包丁を振りかぶって投げていたが。 っふ。 まぁ、試験管だし余裕でよけれた。――ということにしておこう。 ふっとんだ包丁? うん。メンチの横につきささったけど。 それがどうかした? オレ、悪くないもん。 いまおもいかえしてみると、もしかしてヒソカが奇術師なんてものに走ったのて・・・ あれ? もしかしてオレのせい? ---------------------- 【オマケ】 「こんなもんくえるかー!」 そういって食材を放り投げたメンチのすぐわきを、物凄い勢いで銀色の何かが飛んでいく。 ドスッ!!と物凄い音がしてメンチの足元に包丁がささる。 「美食ハンターなら、食材をむだにするんじゃねー!!」 包丁がとんできたほうへと視線を向ければ、怒りに目を吊り上げた少年がいた。 その突然の行動にも罵声にもそれが発せられる前に、予備動作にさえ気付けた者はいなかった。 周囲があっけにとられていると、少年が前とでてくる。 全員の一歩前に出たのは、目立つ赤毛の少年。 そして―― 「お前は本当の空腹を知らんのか!炉端で一芸を見せて日々かせぐ貧乏人のきもちになってみやがれ!!どんなに人がいてもみせものに金を払う人は少ないこのご時世。 ただ見をされたあげく、稼いだ金では食費も稼げず。養うべき家族に「一日ぐらい食べなくたって平気だよ!」と逆に気遣われてみろ!それがどれだけ心苦しいか!食のありがたみを忘れた奴が、食べ物を語るなこんちくしょうめが!! せめてオレの芸をみたなら、一食分になるぐらいの見物料を払えよぉっ!!」 叫んだ。 「「「(ものすごい私情まじってるぅ!?)」」」」 それの激しく私情が混じった罵声にその場にいた全員の心がその瞬間一致した。 「それと。そこのハゲ!!貴様はそれでしのびか!!忍者なら忍よくそがきが!! あとそこの生魚をピチピチいわしてるアホども!並べ!!そこにならべぇっ!! あ゛あ?てめぇら、なに米を無駄にしてんだよ?料理ができないふざけんなよ。そんないいわけきくかよ!米粒一つ無駄にすんじゃネェよっ!!! いっそテメェら飢え死にして来い! そもそもな。テメェで食えねーようなもんつくっていいきになってんじゃねーよ!!だめだしだされて気落ちする前に、もっと脳みそ使えよバカ! そして魚に謝れ! 活き作りじゃないんだから、食うならせめて殺してからさばくか、焼くか、煮ろよ! お魚さんがかわいそうじゃないか! お前は生きた魚をそのまま食べる趣味でもあるのか?ええ?どうなんだよこの秀才くんよぉ。心臓動いてるさかなをそのままたべんのかよ!!」 ―――その後、試験は空からネテロ会長が降ってくるまで、試験管メンチとブラハも交えた全員が赤毛の少年の前に正座させられ、長々と彼の説教の餌食になっていたとか。 |