00.さぁ、蛹よ蝶となれ |
もう、すべてに疲れ切っていた。 転生のし過ぎというのもあるだろう。 前の世界でのごたごたが尾を引いているのもあった。 いろんな要因が重なったのもいなめない。 とにかく魂が疲弊しすぎていたのは間違いない。 つかれたなぁ。もう戦うのも考えるのも否定されるのも肯定されるのも面倒くさい。 そう思って眠りについたはずだったが、気づけばまた生まれていて、今度の世界は休養するにはちょうどよかった。 自分から何かをする必要がなく、戦争もはるか遠い国の出来事で。 世界にきらわれて痛みだけが残る消え方をすることもない。 大切なだれかが処刑される現場を見て泣き叫ぶこともない。 神様たちが喧嘩をしているようなこともない。 不思議な力がある人間は一人もいない。 人が氷漬けになったりも指パッチンで焔を出したりも、ゲームの世界に入り込むようなこともない。 不思議な建物にあふれ、不思議な生き物もおらず、かわりに現代地球ならではのビルもふつうにある。 殺人や事件が多すぎることもない。 ここにいるのに、気付いてくれない――なんてこともない。 ここは平穏で、優しい両親がいて、オレはただの力もない学生で。ここでは時が穏やかに流れていった。 まぁ、力はないとはいうけど、実際はあるけど使う意味がないっていうだけかな。 例えば"みえる"ものの違い。 そろそろというか、とうの昔にというべきか。人間をどこかの前世の段階でやめてしまったオレからすると、視界に見えるものがほかの人より少しだけ違う。 オーラと呼べるものが見えるのだ。 これは今までもずっとそうだったけど、最近になってそれは誰もが見えるものではないのだと知った。 さて。この世界では、あくまで不要なその能力を持ったままなオレ。 そんなオレと同じ視界をみれるものはどれだけいるだろう。 人と人との距離感が少し遠く、己以外に手をさしのべるような優しさを置いてきてしまった都会の人々。 仕事だけをして、それで一生が終わってしまうような、平坦な一生。 穏やか過ぎるこの世界のこの国では、きっと身元が保証されていてお金があれば、ゆったりと人生を終えられる。 『そう、おもっていたのだけれどね』 「はじめまして!今日からお世話になる最上キョーコといいます!」 元気で、面白い子がオレの家に下宿してきた。 最初は黒い髪だった気がするけど。 きがついたら綺麗な長い髪をバッサリ切って、色まで染めて、ドピンクのつなぎを着ていた。 オレには人の顔はよく覚えられはしないのだけど、この子は姿が変っても見つけられそうだ。 だって―― 肩からなんか怨念みたいなの出てる(笑) この原石のような子が どこまで高みを目指すのか いまはどん底にいるこの子がどんな翼を手に入れるのか やがて素敵な蝶になるまでのその一生を そばでみてみたい ひとのこを見守るのも悪くないかもしれない。 そう、思えた。 |