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有り得ない偶然 Side1
- 名.探.偵コ.ナソ -



00.誰か勘違いをなさっていませんか?



〜Side 1〜



「あなたはここにいなさい」
「あいつどこにいったんだ?」
「誰かいたような気がしたけど、他に一緒にきてたかしら」

ずっと、そばにいたよ。
動くなと言われたから動いていない。
貴方たちが気づかないだけで、言いつけは守った。
けれど、座ったままのオレのことには目もくれず、彼らは帰ってしまった。

貴方たちは“気づかない”んだね。


ああ、残念。
どうやらこの世界は、原作があって、世界による修正力という力が働いているようだ。
忘れらて行くなんて、原作通りにいかなくなる要因であるオレはよほど世界からきらわれているようだ。

家族である人たちが、オレの存在を忘れてしまう。
影が薄いのではなく、原作外の存在だから。だから彼らの視界にはとまりづらいのだろう。
その証拠に、原作のキャラとわかるひとたちにオレは触れることができない。
触れないというよりも、触れると痛いのだ。身体の一部どころか魂そのものが存在がガリガリ削れていくような痛みと、悪寒のような嫌な感じがひどい。
だからあまり家族に触れないように気を付けている。そうしているうちに、家族の中から“オレのなにもかも”が消され始めているようなのだ。

へたをすると、今世の家族はもうオレの名前さえ呼べないのかもしれない。


大丈夫。気にもならないよ。

これはしかたないこと。
誰も悪くないんだ。しいていうならオレの存在が悪い。
だってここは原作のある世界。そしてオレは異邦人。
オレからしたら、これはよくあることだから。
世界に嫌われるというのは、しかたないことだ。


でも、今回は“それ”が発動するのが早すぎる。
オレの存在を“忘れていく”のはよくあること。いままでの世界では、原作が始まってから、“オレから遠い存在”からオレのことをわすれていった。
それがこの世界では、一番身近な存在から消えかけている。
かわりのように原作キャラではないらしいひとたちが、オレを忘れたことはない。

ただ、オレには誰が原作キャラでそうでないのかは判断できない。
触れればわかるけど、痛いのは好きではないから積極的に誰かに触れたいとは思えない。
いちおう、この世界の原作において、自分の兄が主人公だというのは理解している。そしてその原作の主人公が一人っ子であることも。
だから彼により多くかかわるひとを避けていけばオレは生き延びられるのかもしれない。


原作知識がどれくらいあるかって?
えーっと、主人公が将来縮むらしいってことは記憶にある。
「らーん!」「しんいちー!」って叫びあうのをCMでよくみた・・・・ような気がする。
どこの世界でみたことなのかは忘れたけど。
探偵とタイトルにあったから推理物の話のはずなのに、CMではつねに爆発してるか悲恋の学生たちが名前を呼び合ってるシーンばかり。推理のシーンってCMで出たことないよね?
これ、ジャンルなんだろう?といつも不思議に思って、首を傾げたものだ。
内容は覚えてない。恋愛物語系は好きじゃなかったら、CMみてみるきがうせてみなかった。



ところで・・・。
最近とってもご近所さんがやさしいんだけど、なんでかな?
あと、謎の宗教に誘ってくる。

「君、大丈夫かい?つらかったね!こどもにあんなものを飲ますなんて!」
『いえ、特に何もつらいことはないんですけど』
子どもにはブラックコーヒーって体に悪いんだっけ?
うんうん。でも苦いコーヒー好きよ。ブラック派とか。あの家族の味覚だけはすばらしいよね。

「あの家族ひどいわよね!兄の方しかしか、かわいがらないのよ」
『兄はかわいげがありますしね』
表情くるくる変わって面白いよね。そうか、あれが普通の人間の子供か。オレも真似しようかな。

「このまえなんかスーパーに下の子を放置よ!」
『目に、はいらなかったんでしょう。極力存在感を出さないようにしていますし』
修正力で見えてないからしょうがないよなぁ。
むしろ貴方はなぜ存在感を消していたオレに気付いた!?

「双子なのに!兄だけ学校に行かせてるなんて!まさか虐待!?ご飯はちゃんともらえてる?大丈夫?」
『オレは小学校にはいけませんよ?』
双子じゃなくて年子だから、オレまだ幼稚園生だしなぁ。そりゃぁまだ小学校には通えんわ。

「わたしの鑑定眼でみたけど、その子は転生者でもなんでもないわ!つまりわたしたちが来たことによる差異で生まれたのかも!?」
「守らなきゃ!」
「そうよ!わたしたちが神様からもらった力で守ってあげるからね」
「神様からの信託によるとこの子は・・・・・」
『…オレのことは守らなくて結構です』
なんかやばそうな中二病グループに遭遇した。え?これなにかの宗教だといってくれ。それともあほな霊感ものTV撮影中とかオチだと嬉しい。
そしてオレはヒロインではないので巻き込まないでくれ。あと誰か助けてくれ。追記:カンテイガンってなにかな?

「神様って信じるかい?」
「君は転生を信じる?僕らは神様に能力をもらってね!」
「弟君は神様を信じる?僕たちは神様から君を守るように力を与えられてね」
『宗教はお断りです!オレは無神論者なので!』
転生ってことは、運命の女神派ですね。その宗教お断りします。運命の女神な、あいつすっごい嫌いなんだけど。できればあんなやつよりオレ(豊穣の神)を信仰してほしんだけど。



人が思うほど、自分が家族らになにか感じてるわけではない。
ここに原作があるとわかった時点で、本当にオレが嫌われるのは“わかりきっていた”ことだから怖くもないし、なにもつらくはなかったんだ。

むしろ消される前までのんびり生きようと、前世での経験をフルに生かして気配を消して好き勝手に生きていた。
どうやら世界もオレが積極的に関わろうとさえしなければ生きることを許してくれるようだったし。

今までの前世で鍛え上げた気配消しは、年季がはいっているので、原作の邪魔にならないためには有効だと思っていた。
だから身近な人のそばにいるときほど、徹底的に存在感を薄くしていた。
普通の人は気づかない筈だった。
だけど気付かれてるんだよね、ご近所さんに。それが不思議。


思ったんだけど。
なぜかいろんな人がかまってくる。
いいのかなぁ?この世界には原作があるみたいだし、オレは明らかに異邦人なのに・・・。


原作にのっていない余白外で、オレが大人気だけどありなの?
この世界からオレって嫌われてるんじゃなかったの?

あれぇ?








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