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有り得ない偶然 Side1
- HU NTER× H UNTER -



あなたにこそ奪ってほしいのよ(笑)
※マチと夢主が仲良しで、マチは可愛いもの好きという設定。
※夢主の能力は影の操作。使用条件は、影から生み出した羊のぬいぐるみとふれていること。
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 -- side 夢主1 --





「影を伝って空間を移動する能力。影を操る能力。どれもすばらしいものだ」

「褒めてくれてありがとうクロロ。・・・いや、ほしいのはわかるけど。オレの能力、制約があって」
「なんだ?それほどの能力。そうとうの制約が必要だろうことは承知だ」
「え〜…でもなぁ〜」

ネテロ会長のお使いでハンターとしての仕事をしていたら、たまたま幻影旅団の団長と知り合った。
それがきっかけで、気が付けばよく会話をするようになっていた。まぁ、こわい(笑)
しかも街中の何でもないようなときにもクロロよはよく遭遇するようになって、偶然ってすごいなぁ・・・とか思っていたら、クロロはオレの能力を狙っていて、それで観察するために来ていたらしい。

あらまぁ。オレってば、かの有名な幻影旅団の団長にまで目を付けられるほど意外といい能力を持っていたのね。

暴露後は、念のためにつけ狙われてはいるが、生かされいる。生きることをあきらめてないオレとしては、まだ人生が続いていることに少しだけ嬉しくなって「殺さないでくれてありがとう」と礼を言っておいた。クロロには変な顔をされた。
それからは、面と向かって能力についてクロロがきいてくるようになった。

最近ではクロロの仲間だという子たちも一緒にいることが多く、なんだかどんどんオレは旅団員と仲良くなっていっている。

ほら。それにオレってば精神年齢的には、年長さんだからね。
というか、すでにおじさんだからね。
こんな若い子たちの面倒ぐらい見れるお年頃なのよ。
そうおもいつつ、旅団員だろうとかまわず頭をなでなでして可愛がっておく。実際、みんな年下だ。つまり可愛い。
とくに裁縫が得意なマチという女のことはとても仲良しである。
なお、金髪の少年の頭をなでたが、髪の毛が崩れると、なでなでを嫌がり避けられるようになった。
右の拳に全力をかけるウボーギンとか、ちょんまげの青年は、ぜひ髪の毛の手入れをもう少し念入りにすべきだと思う。

「アザナ。それでお前の能力はいったいどういうものなんだ?」

ぎゅ〜っとオレを人形か何かを抱きしめるようにくっついてくるつりめの女の子の名前はマチ。
その頭をなでながら、念能力【盗賊の極意】である本をひろげてにじり寄って来るクロロ=ルシルフルをどうしてくれようかと考える。

しばし考える。

クロロが欲しがっているオレの能力だが、影を操れるからと、さぞ他人の目にはかっこよく見えることだろう。 だが制約も厳しければ、戦闘向きではあまりないし、用途もあまりない。 そもそもがオレが“にげる”ために編み出したものだから、メインはやはり影を使う移動になってしまう。


オレの能力について説明しよう。
オレの能力は『影』である。
想像力が豊かなものであれば、影を操る=どんな形にもできる。影があれば、好きな形の武器をいくらでも具現化できる。
などと、凄いことを考える人もいるかもしれない。
空間全体を影で支配するとか、影で目隠しをするとか、相手の影に入り込むとか、影から出るとか、影に物を入れておけるとか・・・とかとか、いろいろ想像することだろう。
全然違う。
オレの能力は、影から物を具現化しはするが、操作はできない。
つまり影の操作は、ある条件をクリアしなければ不可能なので、操れる形や個数には限度があるのだ。

オレの能力は影の具現化。そして具現化したものに能力を一つ付与するというものだ。

そもそも一番最初の能力は、可愛いぬいぐるみを具現化するだけだった。
これがこまったことに操作もできないし勝手にしゃべるし勝手に動く。それをどうすることもできなかった。

だが、当初のオレは、逃げて逃げて生き延びることを求めていた。そのためたかが物体を生み出すだけ力では、いざというときに逃げられないとおもったのだ。

そこで「名づけ」と「能力付与」である。名をつけ、こういう能力が使えると指定することで。具現化したものは自我をもつようになり、ある程度の強度持つようになり、存在が固定化したのだ。
これにより名前を付けることで、具現化したものたちは自我と能力が使えるようになったわけである。

なので、クロロが欲しがっている能力である「影と影を行き来できる」というのは、ぶっちゃけオレの力ではなく、オレが「生み出し、名づけをした念獣の力」なのだ。
念獣――念より生まれたもののことである。

そしてオレにはいま、羊のぬいぐるみと鯉と鳥と刀だけが能力だ。
どれも影を固めて具現化した念獣である。

羊のぬいぐるみは、しゃべる。とても口が悪いが、それを抜きにしてもいいレベルの“念”の操作術のプロだ。
鯉は、行ったことのある場所にマーキングすることで、マーキングを頼りに影と影の中を行き来できる能力を持つ。というか、逃げて生き延びるためだけにこいつを優先的に作った。
鳥は、まんま伝書バトかわりで、伝言などを頼むことが可能だ。
刀は、オレにとっての唯一の武器である。当然転生者ゆえのただの憧れより発生した武器であるが、そもそもが影を物質化したものなので、斬れないものがないレベルで物理法則を無視している。おかげで重宝している。

つまるところ、オレの能力を奪ったとしても同じ能力が使えるかは怪しいのである。
操作系能力を持つ羊のぬいぐるみをまず生み出さねばならず、そのあと「イメージ」と「名付け」と「付与」が必要だ。

念獣『夜宴(ヤエン)』。はじめにうみだした黒い羊のぬいぐるみのような生き物であるが、その口は何度も言うがとても悪い。幾度心がえぐられたことか。
だが外見はただの可愛い黒い羊のぬいぐるみだ。

おかしな制約だが、影を操るためにはその『夜宴』の力が必要だったりする。
なにせオレには具現化する力しかないのだ。
つまり操作は別のものが行っている。それが念の操作にたけた『夜宴』だ。

オレの制約は、この口の悪いプリティーシープに触れていなければいけない。
それだけではない。
この自我があるぬいぐるみ、承認欲求が強い。つまり周囲に見せびらかす必要がある。どうするかというと抱っこをするなり、かわいがらねばいけないのだ。すなわち周囲にオレがぬいぐるみを可愛がっているところを見せつけることで、「可愛いぬいぐるみで遊んでいる」と周囲が認識する必要がある。そして『夜宴』がぬいぐるみとしての承認欲求を満たされ満足したところでようやく「変化形の影の操作」能力は発動する。
そうすることで影の操作を実現し、操れるようになるわけである。
ぶっちゃけオレは影から何か心もとない物体を生み出すだけで、それの操作権限があるのは『夜宴』なのだ。
いわばオレは乾電池。『夜宴』はアンテナ兼コントローラー。ラジコン本体は念獣たち。ゆえに『夜宴』がいないとオレの能力は力を発揮しないし、念獣たちも微動だにしないというわけである。



「うーん。ラジコンにはアンテナって重要だよね。シャルナークも言ってたし、それってつまり・・・・」

すなわち、あのイケメンと有名なクロロ・ルシルフルに、常に不釣り合いなぬいぐるみを可愛がらせるひつようがあるわけで。
なにか見てはいけないダメな大人の図式が出来上がるわけで。

やだ、まって。よく考えるんだオレ。 何だその面白いのは。

むしろオレが見たい。
全力で見てみたい。
オレの能力を使うために、ぬいぐるみをよしよししては、ぬいぐるみのご機嫌を取るクロロ・・・みたい。みたすぎる(笑)
でも、みてみたいけど、“そうなる”真実を言ったら奪ってくれなくなりそうだなぁ。
でもみたい。

「奪ってもいいけど、オレの制約はものすご〜く趣味走った制約だけど。たえられる?」
「おれにできないとでも?」
「できないことはないし、オレと同じ能力を生み出せるとは思う。
そう!つまりオレてきにはやってほしい!ぜひ、奪ってほしい!!オレの能力を使っているクロロが見てみたいんだ!」


「あ、わかってないな。ふふふふ。ではヒントだ。みんな勘違いしているが、オレは操作系ではなく実のところ具現化系能力者です!」
「それがどうした」
「つまり実際は空間移動も空を飛ぶことも伝達能力も影への収納能力も操作もオレは持っていない。それでも使えるのは、オレが具現化した念獣があやつっているからだ」
「念獣だと?」

「そう。制約は、“ある念獣をずっとそばに置いておく”…というか、ずっと触れていること」
「ふれて・・・」
「じゃないとオレは念を扱えません」

しかもその念獣のご機嫌を取らないといけないから大変(笑)
念を操るのに必要なエネルギーは、当然念獣ではなくそれを生み出した人間がだしているので、オレは部分相応の能力しか使えないというデメリットもある。
オレのエネルギー量では、四つの能力を補完するのが精いっぱいだし、影を移動できる距離にも限度があるってことだな。

「まぁ、オレは奪われてもいいかなぁ〜って思っている。なぜなら、クロロがオレの制約にとらわれた姿が見たいから」

だんだん。そういう気分になってきましたぁ!

さぁ。奪ってくれ。
“超プリティーな黒い羊さんの人形を抱きしめているクロロ”なんて、なんてたのしみなんだろう。
オレの念のすべてを知っているのは、ネテロ会長とジン、マチだけだ。
パクノダは、オレの思考がはちゃめちゃすぎて頭が壊れると近づいてくれない。むしろ避けられているので、念能力の全貌まではしらないだろう。
だからマチとオレはキラキラとした期待の目でクロロをまっていた。

っが、オレ達の期待を裏切って、クロロが何かを察したように引きつった顔で後退した。

「なんでよぉ団長。なんでアザナの能力奪わないのさ?あたし、みてみたいのに」
「そうそう。せっかくだからオレの能力奪ってじゃんじゃん使うべきだよクロロぉ〜。ほら影の具現化系な操作系能力がほしいんでしょう」

「そ、その顔はなんだ!?」

「なにって」

「「ねぇ〜」」

あのクロロの顔がひきつったのをみて、オレたちは面白いものでも発見したかのように笑みを深めた。
いや、だって、想像したらおかしくて顔がニヤついてしょうがない。

そうして「奪って」「いやだ」という謎の追いかけっこが始まった。
それは仲間たちがクロロを迎えに来るまで続いたとか。さらに続いたとか。










本当にお前の能力は、「何がどうなって」「何が生み出されている」んだ!?
そんな的確にして、明確な誰かの質問に対して。

「オレが自分の能力の詳細を教えるわけないだろ。
知っているかい若造。ときに、世の中には知らなくてもいいこともあるってものさ」

ニヤリって感じで笑ってやった。
よけい奪ってほしい人には逃げられた。
はは。こういうこともあるさ。

まぁ、実際のところ、能力を奪われたらオレは生きてはいけない自信があるから、それはそれだな。



あーゆかいゆかい(笑)
今日もクロロがオレから必死で逃げている。








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