【 君は別の世で生きる 】
〜海賊世界〜



04.冥王レイリーと





あのシャボンディ諸島で、海軍とドンパチ派手に戦った億越えルーキーズ。
もちろんその騒動に乗じて、うちの船長はクルーをひきつれいち早く離脱しましたがね。
クルーはすぐにオレが能力つかって、影をつたって全員船の中に回収しましたよ。
ローもクルーも、新しいクルーも無事。
うん。クルーは無事。
だけど、ごめん。

オレの偵察蝶が捕まりました。





side [有得] 夢主1





『ど、どうしよう!?どうしようロー!!あのひとオレの能力離してくれないんだけど!!!え?飼う?飼う気なの!?』

こんな状況は長く生きてますが初めてです。
捕獲された挙句、大事にされてるんですがぁ!!!!!!!
籠。籠で蜜と一緒にとある食堂のカウンターにおかれてるんですが!!!
蜜?蜜を吸わせればいいのだろうか?え?普通の蝶のふりをしても、死なないのですぐばれると思うんですが!

「いいから落ち着けアザナ」
『どうしようロー。相手は冥王レイリーだよ!ふつうじゃないのわかって捕まえてそうじゃん!もしかするとあれがハートの海賊団のってわかってて捕獲されてたら能力解除できないよ!!よけいばれる!!
いやー!!!レイリーの笑顔が向けられてるとか!!爺の笑顔はいらねぇー!』

頭を抱えてうめいてれば、背後からあきれたようなため息と一緒に、身体が地面から浮く。
安心な気配に、そのまま身を任せて、身体をひねってぎゅーっとだきつけば、さらにため息一つとともに頭を撫でられる。


「船長!アザナじいさん!!大変だ!!」
「大変大変!通信が入ったよ!!」

能力で生みだした偵察蝶についてどうしようかと考えていると、ふいにバタバタとあわただしくクルーがかけてきた。
何事かとかと思えば、通信が入ったという。
この世界で連絡方法なんて、海の上なら電伝虫をつかうしかない。
そもそもここは海賊船だ。かけてくる相手などいるはずもないだろうに。
そのことに気づいたローもいぶかし気に眉を寄せる。

「だれからだ?」
「そ、それが・・」

「?」
『?』


「シルバーズ・レイリーからです!」


思わず意識が遠くなるよね。

つまり電伝虫のコードをなにかしらの手法でゲットしての通信ではなく、偵察蝶を通しての連絡ということだ。
あっちの音声と画像を受信する能力しかないので、オレは慌てて紙に蝶を一匹描いて“音声送受信機能”をつけ具現化すると、それをレイリーのもとに送り出す。


《おや、もう一頭・・・ふむ。君のクルーはなかなかに面白い能力を持った者がいるようだな》

籠にはいった蝶にむけて独り言をつぶやいていたレイリーのもとに、しばらくしてもう一頭のオレの蝶の姿が映る。
バーのマスターらしき女性は、蝶に語り掛けてるレイリーを変なものを見る目で見ていた。
それを最後に、捕らわれた方の偵察蝶を消す。
パシャンと水がはじける音がして、籠の中の蝶が消え、透明な水だけが籠の中にのこる。
それと同時に、テーブルに広げられた紙がただの白紙に戻る。
目の前の光景をの音と映像を送るしかできない蝶のかわりに、今度はこちらの音声をとどけることができる蝶が映像を映し始める。
先程とは違う紙に、レイリーの姿が映し出される。

《蝶は能力者ではなく。能力の方だったか》

あ、なに?能力者が蝶に化けていると思ったの?
それはすごいね。

「――冥王ともあろうものがなんのようだ。要件は何だ?」
《いやなぁに、場違いなところにきれいなものがいるので逃がしてやろうとおもっただけ。その声、そういうお前さんは“死の外科医”だな?》
「・・・・・うちの偵察が迷惑をかけたな。逃がしてもらって感謝している」
《なるほどなるほど。はは!これはいい縁だ。――――――さすがはDの一族。彼は運がいい》

オレはあのオークション会場から自力で逃げられたけどね!とは、声を出して言わない。
映像はこちらからしか見えないが、声をもらせば相手に聞こえてしまうから。

ただ、映像のなかのレイリーがひどく懐かしそうにやさしく目を細めたのをみて、“彼”とはだれのことだろうと思ってしまう。
Dという単語に一瞬ローが反応し眉をしかめたが、「おちつけ」とその頭を自分の小さな手でなぜる。

たぶんレイリーは、ローの隠し名を知らない。彼が言うDは別の男を示すのだろう。
彼はきっとレイリーだけがしっている“男”のことを思い出している。そいつの名はゴール・D・ロジャー。
そしてきっと今彼が思い浮かべ、その思い出の男と比べているのは・・・

《“死の外科医”よ。麦わらのルフィをしっているか?》

麦わら帽子をかぶり、名に「D」をもつ男。
モンキー・D・ルフィ。

名を聞いただけで、背筋にゾクリと悪寒が走る。
それを無理やり抑えて、ローをみやる。話を続けろと目で訴えれば、小さくうなずかれ、その鋭い目が紙の上のレイリーをまっすぐ射貫く。

「そいつがどうした?」
《いやぁなに、ちょいと頼まれてほしいだけだ》

そう言って笑うレイリーは、交換条件を言ってきた。

さて、蝶の正体がばれてしまったのでどうしようかと思っていたら、「医者であるならちょうどいい」と、これから起こるだろうことを告げられ、とある場所へ向かってほしいと頼まれる。
これは交換条件だ。
偵察を得意とする姿が見えないクルーがハートの海賊団にいることを口外しないことを条件に、レイリーの願いを叶えてほしいというのだ。
持ち出されたその内容に思わず・・・

『いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!無理無理無理無理!!こわいこわいこわい!!!!!!!!!!』

「うるさい!耳元で叫ぶな!!お前はだまってる約束だろうが!・・・おいベポ!!」
「アイアーイ!まかせてよキャプテン!」

主人公を助けに行けと言われて、目がこぼれ落ちるかと思ったよね。自分が主人公のそばに近づくことを想像して・・・血の気が引いたよ。
思わず叫んだよね。
ただ、ローの膝の上に載った状態だったので、耳をふさいだローに怒られた挙句ベポにつれられ部屋を追い出されてしまいまして。

部屋を出る間際に、楽しそうだなというレイリーの朗らかな笑い声と、ローのため息が聞こえた。



結論から言うと、オレたちはこのあと、海軍本部へ向かうことになり、さらにはレイリーとたまに連絡のやり取りをすることになりました。















――で。起こることといえば。

『いやいやいやいやいや!!むりむりむり!!!!』
「いいかげんにしろ!」

定番のアザナさん上陸拒否とそれに対してツッコミを入れるクルーという現象なわけです。

いや、だって、今回の上陸はやばい。
何がやばいって・・・



この島には、あの“主人公モンキー・D・ルフィ”がいるんだぜ?








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